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第3章 老害
第56話 ご挨拶
しおりを挟む「うぇっぷ。これだから転移は使いたくないんだよ」
「これが空間酔いか~。なんか新鮮~」
お昼過ぎから始まった祝勝会は、18時頃まで続いた。他の面々は二次会に行くらしいけど、俺と桜はやる事があったので不参加。みんなに残念がられたけど、早めに動かないといけない事だったからね。
そしてわざわざ使いたくもない転移までしてやってきたのは都内某所のビルの屋上。転移は酔うんだよ。こればっかりは慣れない。
で、何故ビルの屋上なのか。これに理由はない。
とりあえずカメラに映らなければ都内のどこでも良かった。
「老害の家は?」
「ここから徒歩で20分ってところかな~」
今から老害をお仕置きしに行く。初めは殺そうと思ったけど、後から考え直しました。
殺すよりも生き恥をかいてもらおうと。
「んじゃ、これ持って」
「透明になれる魔道具だな」
異世界のダンジョンで入手しました。かなりの高難易度ダンジョンの最下層付近で宝箱から良く出た。
「泥棒とかし放題じゃ~ん」
「透明になれるだけで、温度とかそういうのは誤魔化せないぞ? 警備の厳しい所とかは、サーモグラフィーとかあるんじゃないの?」
知らんけど。俺も向こうで使った記憶はない。現代でも特に使わなそう。お風呂を覗くくらいか。
「さっとやってさっと帰るぞ。俺の仕業ってバレないようにしないとな。その為にわざわざ北海道から転移してきたんだ」
俺はまだ北海道に滞在してる事になっている。アリバイは完璧だ! わはははは! 転移を使える事もバラしてないからね! 空間魔法を使う所は見られてるからそこから察する人はいるかもだけど。
「うへぇ。でっかい家」
「お金持ってそうだね~」
透明になりながら歩いて老害の屋敷に到着。
かなりデカい屋敷で、老害がそれなりの力を持ってる事が良く分かるな。
「憑依:慈悲・忍耐」
俺は憑依して空間魔法を行使する。
ちょっと暴れるかもしれないからね。周りからは違和感ないようにしておかないと。
「アナザー・ワールド」
老害の屋敷が一瞬ブレる。
この魔法は名前通り、もう一つの世界を作る魔法。
老害の屋敷だけをこの世界から隔離した。
これで、俺が屋敷内でどれだけ暴れても、外からは分からない。
俺が魔法を解除したらバレるけど。
「まぁ、俺達が居る間だけバレなきゃいいよ。帰る頃には老害は忠順な犬になってるさ」
さーて、老害さんにご挨拶といきますか。
老害の私室の前。中からやかましい叫び声が聞こえるので、居る事は確定。
因みに、私室に来る前に屋敷に居た人間は桜が全員縛って放置している。
なんか荷造りとかしてる人も居たけど。後で、俺が来た記憶だけ消しておかないとな。
いざ、老害に会うとなると気持ちが昂ってくる。まさか、これが恋? そんな事を思いながら、ドアにパンチした。なんか様式美としてしないといけない気がしたんだ。
「な、なんだ!?」
思ったより簡単にドアが吹き飛んでいった。なんだ。見た目だけのハリボテの扉かよ。
「コンコン。ノックノック。失礼しまーす」
「しま~す」
常識として、しっかり入室時にはノックと一声かける。老害みたいに常識がないと思われたら困るからね。ノックで扉が飛んで行ったのは、ハリボテの安物を使っている老害が悪いという事でお願いしますよ。
「おまっ! お、お前はぁー!」
初対面からお前呼ばわり。一体親の教育はどうなってんだ。両親の顔が見てみたいもんだね。
まずは会ったら自己紹介からだろ。
「いやいや初めまして。織田天魔でーす。えーっと、あれ? 名前なんだっけ?」
ロウ・ガイ? なんかそんな感じの名前だったような? ん? 名前聞いた事あったっけ? テレビで見た様な気がしないでもないんだけど。
「松永だよ~」
「そうだそうだ。松永だ。いつも老害呼びだったから忘れてたぜ」
桜さんナイス。危うく俺も常識がない人間になるところだったぜ。
松永。松永ね。もう覚えました。大丈夫です。
「お前だけは!! お前だけはぁ!!」
老害は俺の話なんて聞いてない様子。
俺が登場してからお前しか言ってない。語彙力のなさよ。学もないのか。
常識も学もない。お前は本当にどうしようもない人間だな。
「はわわわわ。こわーい」
今にも血管がブチ切れそうな顔で襲いかかってきた老害。能力も使ってるんだろう。
手が赤く光っている。俺はその手をパシッとはたいた。するとその瞬間、はたいた手が爆発した。
「はわわわわわ。手がー。手がー」
「くたばれ! 死ね! くたばれぇぇ!」
老害の能力は『爆発』。
手で対象に触れると爆発するっていうシンプルな能力だ。
しかも自分には被害なし。かなり有用な能力だと思う。近接を極めれば1級を攻略したっておかしくない。それが3級止まり。日本で初めて3級を攻略したのは凄い事だろう。そのまま慢心せずに訓練をしてればもっと上を目指せたのに。
それがこうなっちゃうんだもんな。それなりに強くなって日本に敵がいなくなり、天狗になっちゃたんだろうな。
「はわわ。はわわ」
「このっ! くそっ! ふざけるな!」
因みに俺はドアを吹き飛ばすまえに忠義に憑依して手を結界魔法で保護してある。
だから殴りかかってくる老害の爆発を手ではたいてもなんのダメージもない。
子供がじゃれてくるのをあやしてる感じだ。
「だんちょ~。もう良いでしょ~」
桜さんはもう飽きた様子。俺はなんか見てて滑稽だからまだ続けても良いんだけど。
「このっ! このっ! このーっ!!」
やっぱダメだ。どうしても無理。こいつの事は大嫌いだ。
強い能力を手にして、慢心して増長して天狗になって。
魔王に負ける前の俺にそっくりだ。
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