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第1章 異世界帰りの男

第25話 キメラ

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 「これで最後っと!」

 狂った様に襲いかかってきたモブ魔族の顔に右ストレートを叩き込む。
 グシャっと音が鳴り、塵になって消えた。

 「とりあえずのモブウェーブは終了って感じだな」

 「うわ~。だんちょ~が軽く怪我してるよ~。異世界には絶対行きたくな~い」

 ちょっとした切り傷だろうが。
 憤怒サタンは身体強化だけど、身体を活性化させてるみたいなもんだからな。
 少ししたら治るだろうよ。

 これも真剣に避けながらやろうと思えば出来た。でも、それは流石に疲れるし、多少被弾しても攻撃した方が効率が良いんだよな。

 「反転か~。面白い能力だよね~」

 「面白いのは否定しない」

 でも、この能力単品だったら俺は多分、魔王を倒せていない。
 倒せたとしても、かなり時間が掛かってただろう。正直今でもちゃんと使えてるか怪しいし。
 もっと練習しようと思ってた時もあったんだけどな。魔王を倒してモチベーションが無くなっちゃったんだよね。

 「なんか組み合わせあり気な能力だよね~。能力は一つしか持てないのに~」

 「いや、多分これ賢い奴が使ったらめちゃくちゃ強いぞ。俺が馬鹿だっただけで」

 向こうに行った時は中学生。
 そして、滅亡寸前の世界で勉強なんて出来る訳もなく。

 「せっかく現代に戻ってきたし、勉強しようかな。あらゆる事象を理解して反転させれるようになったら、俺無敵になるぞ」

 「既に地球じゃ敵なしだと思うけどね~」

 強くなる分には良いだろう。
 もしかしたら地球に魔王以上の存在が出てくるかもしれないじゃん。
 そんなにやる気は無いけど、どうせ暇なんだし。
 一から色々な事を学ぶのは悪い事じゃない。

 「さて、大分時間が掛かったけど、先に進もう。ゴールの目安もついてるしな」

 ここの事は良く分かってる。
 何回も足を運んだしな。

 「あはは~。あたし~結局1級で戦わなかったな~。試したいことが結構あったのに~」

 「1級じゃなくても、手頃な狭間を落札して攻略するか。お金があるに越した事はないし」

 そういえば、日本しか確認してなかったけど、他国に1級はあるのかな?
 崩壊間近とかなら、遠征した方がいいのかも。
 全部俺が攻略するのは良くないけど、流石に今すぐ人類を成長させるのは無理だし。

 どこかの無人島で俺が学校でも開いてやろうか。
 本当にやる気がある奴だけを集めて、集中的に指導する。
 能力にもよるが、素人からでも5年あれば1級攻略は間違いなく出来るだろう。
 所詮向こうではB級クラス。
 冒険者として1人前になったぐらいなんだから。
 あ、でも禁忌に当たったらやばいだろうな。
 俺の結界のせいで、1級として来やがるみたいだし。



 その後も、目的地を目指しながら歩いていく。
 途中モブ魔族ウェーブもあったが、容赦無く叩きのめしていく。

 「そういえば、上位種に会わないな。誰がこいつらを生み出してんだ?」

 ここまで、モブばっかりで上位種の魔族に出会わない。これだけの数がいるなら、何体か居ると思ってたんだけど。

 「目的地に着いちゃったよ」

 「廃城~? 魔王城ってやつ~?」

 「まぁ、そうだな」

 少し小さい、ボロボロの城。
 かつては魔王が根城にしていた場所だ。
 俺と何度か戦闘した際で、すっかり廃れてしまっている。
 あいつ、補修するでもなく場所を移動しやがったからな。もう一度探すのに苦労した。

 「う~ん。とてつもない魔力。ボスはここだろうな」

 「そういえば~最初はボス部屋があったのに~キラービーの時も今回もないね~?」

 場所的な問題じゃない?
 森とかこんな大雪原に急にボス部屋とか出されてもなんか違うし。
 まっ、狭間研究は偉い人に任せるよ。
 こっちで攻略した狭間が向こうの世界ではどうなるのか気になるけど。

 「それより、この魔力だよ。四天王とまではいかないけど、そこらの上位魔族よりよっぽど強そうな感じだぞ」

 「あたしは逃げる準備しておくね~」

 「そうしといてくれ。負ける事は無いと思うけど、守りながら戦えるかどうかはわからん」

 さーて、何が出てくるのやら。
 上位魔族は普通に悪魔っぽい見た目の奴もいるけど、クトゥルフに出てきそうなSAN値が削れるような奴もいるからな。



 「んん? なんだこいつ?」

 城に入ってすぐの大広間。
 そこで待ち受けていたのは、何体もの悪魔を継ぎ接ぎにして、それを巨大化させた感じの見た目の化け物だった。

 「魔族のキメラってか? 誰がこんな事したんだ? 禁忌領域は結界で入れない筈だし」

 まさしくキメラ。多分かなりの数のモブと上位種をごちゃ混ぜにしてるんだろう。
 こいつ一体で、あれだけのモブを量産出来たのも納得だ。
 問題はなんでこんなのが居るのかって事なんだけど。

 「まぁ、いいや。もし向こうの世界で異変が起きてたら性悪女神から何かアクションがあるだろう」

 チラッと桜を見てみると、いつもは能天気なくせに顔色が悪い。
 キメラの見た目のせいなのか、魔力にあてられてしまったのか。

 「可愛い可愛い桜ちゃんの為にも、頑張って早めに倒しますかね」

 俺も長い時間、悪魔の憑依をし続けてるから、精神的に疲労している。
 久々だからかなぁ。魔王とは三日三晩戦ったんだけど。
 やっぱり長年引きこもってたブランクがあるね。
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