上 下
24 / 152
第1章 異世界帰りの男

第22話 最後の1級へ

しおりを挟む

 
 「んあ~、ねむい」

 「あたしも~」

 ホテルのチェックアウトの時間ギリギリまで寝ていた。別に延長しても良いし、今日中に狭間を攻略しなくてもいいからダラダラするのもありなんだけどな。

 それを続けるとダメ人間になりそうだから。
 俺は一旦引きこもると長い人間なんだよ。
 異世界で実証済みであります。

 欠伸混じりに、博多の街を歩きながら狭間へと向かう。
 夜のプロレスでハッスルし過ぎたせいもあるんだけど、協会が編集した動画が良過ぎてついつい見返したりしてたら寝るのが遅くなってしまった。

 「大村さん引っこ抜けないかなぁ。あんな動画作ってくれるなら毎回同行してもらいたい」

 「撮影の能力持ちを探すのもありだけど~スカウトする方が手っ取り早いよね~」

 なんか映画を見てる感じだった。
 それを1週間ぐらいで編集した大村さんはきっと凄腕なんだろう。
 テレビ局で酷使されたのも頷ける。
 こんな画が撮れる人間は使わざるを得ないだろう。

 有能だからこそ、厚遇して酷使するべきじゃなかったと思うんだが。
 テレビ局は魔境って言うからねぇ。
 視聴率の為には仕方なかったのかも?
 結局耐え切れず辞められてるから、失敗だったとは思うが。結果論ですな。

 大村さん引っこ抜いたりしたら協会との関係が悪くなるかもなぁ。
 偶に貸してもらう感じの方がいいのかな。
 あんな動画作れるって事は有能なんだろうし。
 でもうちのギルドの広報に是非欲しい。

 因みに、能力はその人固有の物ではなく、結構被りもある。
 魔法とか、剣術とかね。
 それでも毎年見た事ないような能力が出てきたりするんだから面白いよね。
 桜の万能糸も異世界では見た事ないしさ。
 俺が魔王討伐してからは引きこもってたから、もしかしたら居たのかもだけど。

 だから、そのうち憑依の能力者とかも出てくるんじゃないかなぁと思ってます。
 使いこなせるかはさておき。結構癖がある方々ですからね。まず、憑依対象が天使かどうかも分からんけど。

 神とかに憑依出来る人間が出てきたりするんじゃなかろうか。
 そんな奴が出てきたら、多分俺はイチコロでやられるだろう。まず天使達が使い物にならんと思う。
 あいつら、神ってだけで盲目的に崇拝するからな。まぁ、そのお陰で腹黒女神と対等に話せる俺に簡単に憑依してくれるからありがたいんだけど。

 ホテルから出ると、既に出待ちしてたように野次馬がいて、俺達が歩いてる後ろからゾロゾロとついてくる。

 これ、他の通行してる皆さんの邪魔になったりしてませんかね?
 次からどこどこに向かう時は告知しない方がいいかも? いや、告知して交通規制やらしてもらった方がいいのかな?
 そういう事に警察さんを使うのはよろしくないんだろうか。
 

 「ふあぁ。だめだ。やっぱり眠い」

 「やる気無さそうだね~」

 ある訳がない。気分はもう既に夕食のモツに向かっている。
 予約も既にしてるし、今から想像するだけで涎が出てきそうになるね。

 「キリッとした顔しとかないと~。さっきから結構写真撮られてるよ~」

 「分かってないな。偶にこういう抜けた感じを出してるのが良いんじゃないか。ギャップ萌えってやつだよ」

 しらんけど。きっとそうだと思う。
 完璧超人より、親しみのある感じの方が良いと思うんだよ。
 少なくとも俺はそう感じる。

 前世は芸能人とかプロスポーツ選手がチヤホヤされたりして羨ましいなぁって思ってたけど、有名人になると本当にプライベートってなくなるんだな。
 俺はそういうのを苦にしないから大丈夫だけど、神経質の人とかはさぞかし苦労しただろう。

 そうこうしてる内に、狭間に到着。
 なんかテレビ局の人とかも来てて、実況したりしてるけど、俺を無断で映すのはありなの?
 お金出ますか、それ? 訴えたりしたら勝てるだろ。

 「やっぱりこの狭間なんか変だなぁ。違和感があるんだよ。偽装してる感じがする」

 改めて狭間の前にやってきたけど、やっぱりおかしい。なんだろな、これ。
 いっぱい狭間見てきた訳じゃないから、断定は出来ないんだけど、ムズムズするというか。
 嫌な予感はひしひしとするね。

 「偽装ってどういうこと~?」

 「1級じゃないかもって事」

 「う~ん? 私には普通に見えるけどな~」

 「まっ、入ってみたら分かるだろ」

 気にする事はあるまい。
 だって俺は世界救った事があるんだもの。
 流石にそれよりハードな事はないだろうよ。
 これが終わったら、当分攻略はしないだろうから多少疲れてもいいしさ。
 あれ? ちょっとフラグっぽい?



 「ん? んんん? いやいや。えー」

 「凄いね~」

 狭間に入って初めに目に入ったのは、見渡す限り、銀世界の大雪原だった。しかもこれは見覚えがある。
 フラグか。フラグを立ててしまったのがいけなかったのか。
 どの旗がいけなかったんだ? 次回からの参考にするから教えてほしい。

 「禁忌領域じゃん。マジ? 面倒だなぁ」

 「さっむ~い!」

 桜はかなり薄着だからなぁ。吹雪いてるし、そりゃ寒いだろうよ。
 桜は体中から糸を出して丸くなる。
 君はそれで戦えるのかい? また俺が一人で戦う事になるじゃんか。
 ここの魔物に桜が勝てるかは微妙だけど、やる気は見せてほしいもんです。
 さっきまでやる気なかった俺が言う事じゃないけどさ。

 「だんちょ~の知ってるとこ~?」

 「知ってるなぁ。流石にここは忘れない」

 だって初めて魔王と戦った場所だもの。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

2度追放された転生元貴族 〜スキル《大喰らい》で美少女たちと幸せなスローライフを目指します〜

フユリカス
ファンタジー
「お前を追放する――」  貴族に転生したアルゼ・グラントは、実家のグラント家からも冒険者パーティーからも追放されてしまった。  それはアルゼの持つ《特殊スキル:大喰らい》というスキルが発動せず、無能という烙印を押されてしまったからだった。  しかし、実は《大喰らい》には『食べた魔物のスキルと経験値を獲得できる』という、とんでもない力を秘めていたのだった。  《大喰らい》からは《派生スキル:追い剥ぎ》も生まれ、スキルを奪う対象は魔物だけでなく人にまで広がり、アルゼは圧倒的な力をつけていく。  アルゼは奴隷商で出会った『メル』という少女と、スキルを駆使しながら最強へと成り上がっていくのだった。  スローライフという夢を目指して――。

どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら

風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」 伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。 幼い頃から家族に忌み嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。 それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。 何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。 そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。 学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに! これで死なずにすむのでは!? ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ―― あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

紫南
ファンタジー
魔法が衰退し、魔導具の補助なしに扱うことが出来なくなった世界。 公爵家の第二子として生まれたフィルズは、幼い頃から断片的に前世の記憶を夢で見ていた。 そのため、精神的にも早熟で、正妻とフィルズの母である第二夫人との折り合いの悪さに辟易する毎日。 ストレス解消のため、趣味だったパズル、プラモなどなど、細かい工作がしたいと、密かな不満が募っていく。 そこで、変身セットで身分を隠して活動開始。 自立心が高く、早々に冒険者の身分を手に入れ、コソコソと独自の魔導具を開発して、日々の暮らしに便利さを追加していく。 そんな中、この世界の神々から使命を与えられてーーー? 口は悪いが、見た目は母親似の美少女!? ハイスペックな少年が世界を変えていく! 異世界改革ファンタジー! 息抜きに始めた作品です。 みなさんも息抜きにどうぞ◎ 肩肘張らずに気楽に楽しんでほしい作品です!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️
恋愛
 リベリアはお飾り王太子妃だ。  夫には学生時代から恋人がいた。それでも王家には私の実家の力が必要だったのだ。それなのに…。リベリアと婚姻を結ぶと直ぐ、般例を破ってまで彼女を側妃として迎え入れた。余程彼女を愛しているらしい。結婚前は2人を別れさせると約束した陛下は、私が嫁ぐとあっさりそれを認めた。親バカにも程がある。これではまるで詐欺だ。 そして、その彼が愛する側妃、ルルナレッタは伯爵令嬢。側妃どころか正妃にさえ立てる立場の彼女は今、夫の子を宿している。だから私は王宮の中では、愛する2人を引き裂いた邪魔者扱いだ。  ね? 絵に描いた様なお飾り王太子妃でしょう?   今のところは…だけどね。  結構テンプレ、設定ゆるゆるです。ん?と思う所は大きな心で受け止めて頂けると嬉しいです。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

最凶の悪役令嬢になりますわ 〜処刑される未来を回避するために、敵国に逃げました〜

鬱沢色素
恋愛
伯爵家の令嬢であるエルナは、第一王子のレナルドの婚約者だ。 しかしレナルドはエルナを軽んじ、平民のアイリスと仲睦まじくしていた。 さらにあらぬ疑いをかけられ、エルナは『悪役令嬢』として処刑されてしまう。 だが、エルナが目を覚ますと、レナルドに婚約の一時停止を告げられた翌日に死に戻っていた。 破滅は一年後。 いずれ滅ぶ祖国を見捨て、エルナは敵国の王子殿下の元へ向かうが──

処理中です...