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第1章 異世界帰りの男

第20話 観光

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 「大阪、遊ぶ所が多すぎる」

 「そうだよね~。東京も多いけど~大阪も負けてないよね~」

 大体行きたい所を決めて、ぶらぶらしながら適当に寄り道しようっていうアバウトな感じで始まった大阪観光なんだけど、寄り道しまくってその日に目的地に到着しない事が多々あった。

 「協会から動画を公開されるのを発表したのが大きかったよね~。道行く人から群がられちゃって思い通り進めない時もあったし~」

 「それな。写真とかは勝手に撮っていいから、接触してくるのは勘弁してほしい」

 観光途中で協会から、動画を出すと発表されて、ただでさえ有名だったのが、更に有名になった。
 それは良いんだ。チヤホヤされるのは嬉しい。
 写真も悪用しないなら好きにしてもいい。
 でも、プライベートで観光してる時に接触してサインはちょっとだるい。
 一回引き受けるとキリがなくなるんだよね。

 「なんだかんだ引き受けるのがだんちょ~だよね~。SNSでお願いしたら多少マシになったけど~」

 「だってお前、小さい子供に目をキラキラさせながらサインお願いします、なんて言われたら断れないだろ。喜んでくれてたし」

 ああいうのは親が止めてくれないと。
 あんな目を向けられて断れる人間いるのかね。

 「ここが大阪ってのもあるよね~。みんなフレンドリーすぎるんだよ~」

 「やたらサービスしてくれるしな。ここに住んでも良いくらいだ。いや、やっぱりなし」

 偶に来るから良いんだろうな。
 ずっとこんな感じは疲れそう。

 「そういえば、あれちゃんと送ってくれた?」

 「んふふ~。もちろんだよ~」

 件の大御所(笑)さんは協会から、動画が公開されると発表すると、それまで賑やかだったSNSが急に静かになった。
 正直、もうイライラを通り越して面白くなってきたので、煽る意味も込めて『元気ないな? 大丈夫か、老害』って送ってやった。

 大人気ないと思うなかれ。
 こいつはしきりに俺の事を批判して、何故か一定数の信者を獲得してるからな。
 もう俺の玩具になってもらう事は確定なんだ。
 これぐらいで根を上げないでほしい。

 「まあ、あの老害の事は今はいいや。せっかく楽しい気分で遊べてるんだし。テーマパークも行ったし、他に行きたい所はあるか?」

 あのテーマパークは凄かった。魔法科学の最先端って謳い文句に偽り無し。
 思わず2日続けて行っちゃったもんね。
 待ち時間に並ぶのも、ファン的な人と交流してたら一瞬だったし。
 あれなら千葉の方のテーマパークにも期待出来ますなぁ。落ち着いたら行ってみたいもんだ。

 「道頓堀で食い倒れした~い」

 「俺も行きたいんだけどなぁ」

 あそこ、絶対人が多いだろ。
 囲まれると思うんだよなぁ。
 大阪の人達のバイタリティはここ数日で嫌というほど学んだからさ。

 「変装でもする~?」

 「うーん、それでもいいけど。チヤホヤされるのも悪くないんだよな」

 「わがまま~」

 まっ、いっか。一応SNSでお願いして、後はその場で対応しよう。
 ファンが増えてくれるのは良い事だし。
 限度ってのがあるけどさ。


 「たこ焼き屋さんだけで何店舗あるんだよ。しっかり味も違うし。すげぇな」

 「粉物は最高だよ~」

 道頓堀に着いてから、適当に歩くだけでたこ焼き屋さんがすぐに見つかる。
 お好み焼き屋さんも結構あるし、粉物店舗の激戦区だな。

 「あー美味い。カニの足を食べ歩き出来るって凄いよな。北海道とか海鮮が有名な所でも出来るのかもだけどさ」

 「焼きガニも美味しいね~」

 桜さんは終始幸せそうだ。ここ最近ずっと食べてばっかりだもんね。
 合間に牛丼屋に寄るのも忘れてないし。
 これだけ食べてもNo.1は牛丼らしい。

 「お酒も飲みたくなるなぁ。コンビニでビールでも買うか」

 そう思ったら、普通に出店でビールを売ってるんだよな。
 すかさず購入して、次はどこに行こうかと見回す。野次馬だらけだね、うん。迷惑にならないのかな? 俺のせいじゃないよね?

 SNSのお陰か道頓堀民の民度が高いのか、接触は避けてくれてる模様。
 どうしてもここの人達の民度が高そうには見えないんだけどな。偏見で申し訳ないんだけどさ。

 写真はパシャパシャと撮られまくってるし、偶にカメラ目線で笑ってれば満足してくれる。
 イケメンに感謝です。

 「ビール飲んだら串揚げが食べたくなってきたな」

 「あたし知ってるよ~! 二度漬け禁止なんでしょ~?」

 「そうそう。まぁ当たり前の事なんだけどな」

 一度口を付けたんだからそりゃそうよ、おーんって感じ。
 適当に見かけた串揚げ屋さんに入り、おすすめで出してもらう。

 「あ、俺このカキフライも追加で」

 牡蠣なんて向こうで食べてなかったからな。
 久々に食べたい。

 「えらい男前と別嬪さんやなぁ。ん? 兄ちゃん達どっかで見たな…。おお! テレビで見たわ! 有名人さんなんやなぁ!」

 大阪の人達は一度喋り出したら止まらない。
 適当に相槌打ってるだけで満足なのか、ひたすら喋り続けている。

 「んふふ~。なんやの~言うて~」

 桜さんが楽しそうだから良いか。
 適当な関西弁が妙にムラっとくるな。
 変な性癖に目覚めてしまったやもしれん。

 そこそこ長居して、最後の締めに向かう。
 ここは行きたかったんだよね。
 肉吸いって言うんだけど。
 肉うどんのうどん抜きという意味のわからないやつなんだけど調べてて美味しそうだったんだ。

 「これさ~牛丼にしたら絶対美味しいよね~」

 早速お店に入って肉吸いを注文して、出てきた料理を見た桜さんの一言。
 あなたはなんでも牛丼に持って行こうとしますね。確かに美味しいだろうけどさ。

 「あ~うまっ。青ネギが良いアクセントになってるな。シャキシャキしててたまらん」

 「すみません~! ご飯くださ~い」

 結局牛丼にする模様。好きにしたまえよ。
 俺はこれをもう一回おかわりするからさ。

 そんなこんなしながら、約1週間。俺達の大阪観光は終わった。
 東京帰るのも面倒だし、このまま博多に向かうか。モツ鍋が俺を待っている。
 
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