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第1章 異世界帰りの男

第2話 現在の地球

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 「元はといえば、お姉様に私の世界が滅茶苦茶になったので、どうしようかと相談したのがきっかけなのよ」

 ふむふむ?
 話を聞いてまとめるとこんな感じだ。

 俺がこの性悪女神の世界に来る前の事。
 ちょっと目を離した隙に、世界が魔物だらけになっており、魔王なんてのも誕生していて、人類が大ピンチ。

 困ったからお姉ちゃんに相談すると、地球では物語として異世界転移して勇者に世界を救ってもらうのが流行ってると。

 で、丁度良く親も居ない、友達も数える程しかいない。
 それでいて、なにやら毎日腕に魔法陣を書いたりと馬鹿な事をしてる人間がいる。
 ちょっとこいつでその異世界転移とやらを試してみようかと思ったのが始まりらしい。

 「え? そんな軽いノリで俺は拉致されちゃったの?」

 「そうよ。ちゃんと説明して、嫌ならその場での記憶を消して元の世界に戻ってもらう予定だったんだけど…。あなたはまともに話を聞かず、早く異世界に降ろしてくれと言い寄ってきたから。こちらとしても都合が良かったし、そのまま世界に降り立ってもらった訳なの」

 ほへー。そうだったんだ。
 まぁ、話を聞いても危険度なんて理解せずOKしただろうが。
 あの時の俺は若かったんや。

 「それからの事なんだけど--」

 んで、無事俺が頑張ったお陰で、性悪女神の世界は救われた。
 女神としても、万が一同じ様な事になった時の為に俺を世界に飼い殺しにしようとしてた訳だが。

 「そんな理由で放置されてたとは…」

 「ごめんなさいね。説明すれば良かったかしら?」

 「いや、説明されてもどうせこの世界に残る決断をしてただろうさ。スマホとかないから不便っちゃ不便だけど、好き放題出来てたしな」

 でも、魔王討伐したご褒美がないのは頂けない。
 これはしっかりと精算させてもらうからな?

 「そんな時にお姉様から連絡があったの。あなたの現状はどうなってるのかと」

 世界はなんとかなったと連絡したが、それきりで地球とはそんなにまめに連絡は取り合ってなかったから急に連絡が来てびっくりしたらしい。

 で、どうやら俺を地球からこっちの世界に送り込む時に次元に穴が空いたらしい。
 所詮、人間一人の穴だし、地球の女神も気付いていなかった。

 そして、その穴は時間が経つ毎に大きくなり、こっちの世界と部分的に繋がってしまったらしい。
 そして、地球には次元の狭間と呼ばれてるらしいが、そこから魔物が発生した。

 「えぇ…。ポンコツじゃん」

 「失礼ね」

 だって、ちょっと目を離した隙に世界が終わりそうになってたり、気付かない内に穴を広げられてたりと。
 管理が杜撰すぎませんかね。
 ポンコツ姉妹って奴ですか。

 「穴閉じればいいじゃん。まさかお決まりの無理とかそういうパターン?」

 「いえ、閉じようと思えば普通に閉じれるわよ」

 え? 解決じゃん。
 俺を返せとかそんな話にならなくない?

 「お姉様はこれを機に、資源不足を解消しようとしたらしいの。魔法科学を発展させると意気込んでたわよ」

 あー、なるほどなぁ。
 魔物素材は魔石やらなんやらと資源になるからね。
 俺が居た頃の地球も資源不足がうんちゃらとニュースでやってたし、丁度良いと思ったんだろう。

 そこから、地球人にランダムで能力を使えるようにして、対抗させようとしたらしいが、これが中々上手くいかなかったと。

 「どうやら、思った以上に人間が弱かったらしいの」

 そりゃそうよ。
 いきなり、どこからともなく怪物が出て来て、能力の使い方もままならないのに、現代人が戦えるかっての。
 俺だって最初は逃げ回ったんだ。

 「魔物が強くなると、銃なども効かなくなってきたらしいわ。いえ、正確には割に合わなくなってきたが正解なんでしょうけど」

 能力を使えば倒せる敵に、高い金払ってる銃じゃあ、そうなるに決まってる。
 なんて言うか、地球の女神さんも認識が甘いよね。
 
 「それから時間が経って、人間社会も次元の狭間がある生活になんとか適応してきたけど、ギリギリの状態は変わらず。それでいて、魔法科学の方は微妙に発展してるらしく、今やっぱり辞めたと次元の狭間を閉じるとそれはそれで、また混乱になるだろうと辞められないみたいなの」

 もう対応がズタズタじゃんか。
 本当に神なのかと疑いたくなっちゃうよね。
 まぁ、どの神話を見ても神は結構馬鹿みたいな話が多いけどさ。

 「それで俺が向こうに行けと? 正直、めんどくさすぎてやりたくないんだけど」

 「いえ、あなたが全てを解決してしまうと、結局人類は成長しないわ。あくまでも保険として来て欲しいらしいみたいなの。勿論、あなたが自発的に攻略してくれても良いけど、しないでしょ?」

 しませんねぇ。
 それはもうこっちの世界でやって、嫌と言うほど面倒くささを味わったので。

 「うえー。めんどくさいなぁ。こっちの世界でダラダラと過ごしてたいんだけど。なんか、俺が魔王倒してからやたらと平和だし」

 「平和なのは向こうに魔物が流れてるからよ。それと平和って言ってるけど、あなたが今いる魔の森はとても危険な所よ?そこの魔物と比べると地球の魔物なんて可愛いものだわ」

 俺からしたら大体は美味しいお肉と変わらん。
 あー、でも、地球に行っても生活はそんなに変わる事もないか?
 偶に次元の狭間に行って、お金稼いでダラダラとする。
 それに向かうの方が文明は発展してるだろうから、娯楽には困らんだろうし。
 こっちは未だに本を読むぐらいしかないんだよね。

 「向こうに行っても俺の能力はそのまま?」

 「勿論よ。両方使えるわ。更に、向こうに戻るともう一つ付与されるわね。世界を渡ると勝手にそうなるみたいなのよ」

 憑依とあれも使える訳か。
 更にもう一つ貰えると。

 「その能力は?」

 「分からないわ。ランダムだもの」

 「ふーん。まぁ、俺の憑依とかもランダムだったみたいだし、仕方ないか」

 仕方ない。
 ダラダラ生活をもっと続けたかったけど、向こうでもそれは出来るしな。
 地球に戻りますか。
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