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第二章 高校受験
第20話 三者面談
しおりを挟む10月も中盤。
秋華賞があった日にしっかり1000万ほど稼ぎ、残金がまた1000万を超えてホクホクである。
そして今日は三者面談。
進路の事について話し合う大事なイベントだ。
「あ、いたいた」
スリッパを履いてパタパタとこっちにやって来た母さん。この日のためにわざわざ有給を取ってくれたらしい。感謝感謝です。
この時代の会社って有給取るのも一苦労だからな。この辺のシステムは日本は終わってると思います。
「お義母様。お久しぶりです」
「あら、梓ちゃん。また一段と綺麗になったわね?」
一緒にいた梓が母さんに挨拶する。
同じ日に三者面談って事で、この後は一緒に晩御飯を食べに行く予定だ。
俺もさっき梓の母に挨拶しておいた。
「中村さんもいらっしゃるのかしら?」
「はい。今はお手洗いに行ってます」
その後、梓の母もやってきて四人で喋っていると俺の番になって担任に呼び出された。
「圭太君は千葉高校への進学を希望されてますが、ご存知でしたか?」
「はい。三年生になってから最初の中間テストを見せて貰った時に聞きました」
最初の適当な挨拶もそこそこに早速本題へ。
進路の事について話す。
「圭太君のこの成績なら問題ないでしょう。自分で受験対策もしているみたいですし、正直あまり心配する事はありませんね。ただし一点だけ。どうやら滑り止めの私立受験をしないと言ってるんですが…。万が一という事がありますので、学校側からすると受けて欲しいのが本音なんです。その辺の話し合いなどは?」
「あら…。それは聞いてませんでした。圭太、そうなの?」
「どうせ行かないんだから受験料の無駄かなって」
受かる自信があっての事だけどさ。
私立って受験料も高いんだよ? どうせ行かないんだから受けるだけ無駄じゃん。
無駄金で家計を圧迫するのは避けたいところだよね。
「圭太君の三年からの成績を見ると千葉高校でも受かるとは思います。しかし、体調不良等で受験が出来ない可能性もあるので…」
「そうですね。一度家に帰ってから良く話し合ってみます」
「はい。お願い致します」
体調不良! その事は盲点だった。
ステータスボードでなんとかならないか?
運動能力とか上げたら防げるんだろうか。
これは梓と話し合わないと。
進路の話が終わると授業態度や普段の学校生活についての話になるけど、これについては問題ない。
偶に寝てるだけだし。
「ふぃー。終わった終わった」
「あんた、私立受けないつもりだったの? 死んじゃうとかは冗談よ? もし私立に入学する事になっても大丈夫なんだから」
「えぇー。お金勿体ないよ」
「受けるだけ受けときなさい。何があるか分からないんだから」
「へーい」
仕方あるまい。
お金が少し勿体ないが、拒みすぎると母さんに変に気を使わせてしまうかもしれない。
意地でも私立には行かないが。下手したら母さんの死期が早まってしまうぞ。
「お待たせー」
その後梓家族の面談も終わり、そのままご飯へ。
少し時間は早いけど問題あるまい。
ご飯の席で梓と隣同士で座り、先程担任の先生に言われた事を話し合う。
母さん達は既に婦女トークに夢中だ。
因みに今いるのは回転寿司屋さんである。
俺はビントロに甘だれをかけて食べる変わった味覚をしている。美味しいんだけどね。中々賛同を得られない。
「体調不良ね。確かに忘れてたわ」
「で、さっきステータスボードを見てたらこんなスキルがあってさ」
ゲームみたいに病気耐性とかあるのかなと思ってたけど、流石にそこまでご都合主義じゃなかった。
でも代わりに見つけたのは健康体ってスキル。
「あら、良いじゃない。これ、取っておきましょう」
「スキル一覧をちゃんと見てるつもりでも見落としはあるもんだな」
って事で、早速健康体を取得してレベル3まで上げておく。残金が0になった。ぴえん。
「配信者は体が資本だからな。これも無駄にならないだろ」
「そうね。早めに気付けて良かったわ」
ビントロうまー。
はまちにも甘だれちょろり。
「圭太のその味覚だけは理解出来ないわ。他はまともなのに寿司だけはおかしくなるわよね」
いや、醤油でも美味しいよ?
でも、俺は甘だれをかけた方が美味しく感じるだけで。
イカとかタコとか後は貝類は醤油だし。
脂がある系は甘だれをかけた方が美味しいと思います。
結局母さん達の婦女トークが止まらず、回転寿司屋さんに三時間も滞在してしまった。
店員さん達ごめんなさいね。この人達喋り出すと止まらないのよ。
まだ喋りたそうにしてたけどね。無理矢理切り上げてもらいました。
「はぁー。久しぶりに山本さんと会ったけど、やっぱり楽しいわー」
「さいですか」
顔が艶々してらっしゃる。
婦女トークで英気を養ったんだろうか。
あんなの体力が減っていく一方だと思うんだけど。珍しくお酒も飲んでたし。仕事ばっかりでストレス発散になったのなら良いけどさ。
俺はため息を吐きながら、換気扇の下でタバコを吸う。さっさと風呂に放り込まないと、母さんは寝てしまいそうだ。
「風呂はもう沸いてるから。さっさと入っちゃってよ」
「圭太ー。歌を歌いなさーい。あんたが歌上手い事知ってるんだからねー」
「近所迷惑」
だめだこりゃ。こんなボロアパートで歌ったら迷惑になるに決まってるじゃん。
完璧に酔っ払ってらっしゃる。
母さんってお酒弱かったんだな。知りませんでした。今度から飲ませないようにしよう。
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