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プロローグ

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 十月の夕方はどこかそわそわしている。
 おそらく、ハロウィンが近いからだろう。
 日が暮れる少し前の商店街はいつだって賑わっているが、この時期になると人々の「わくわく」とした心が、並んでいる商品やカボチャや魔女で飾られたショーウィンドウから感じられる。味はまったく同じなのに、ジャック・オー・ランタンの形をしたカボチャコロッケはいつもの倍売れていると、揚げ物屋の店主が笑っていた。

「コロッケは売り切れかぁ……」

 月城ヒカルは、目の前で売り切れてしまったコロッケが陳列してあったコーナーを見て苦笑する。店主は申し訳なさそうにヒカルに言った。

「ごめんな、兄ちゃん。この時期はさ、野菜嫌いの子供たちが自分からコロッケを親御さんにおねだりするんだ。おかげで早く売れちまってな」
「あ、いえ……それはいいことですね。コロッケはまた今度にします」

 そう言ってヒカルは「今月のおススメ!」とカラフルな文字で書かれたポスターを指差して微笑む。

「あのおススメの、トンカツ下さい。二枚お願いします」

 少し高くつくが、もうすぐ「記念日」なので奮発しても良いだろう。ヒカルは、一枚五〇〇円のトンカツを二枚受け取ると、ゆるむ頬を俯いて隠しながら目的地へと急いだ。
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