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第3章 ダンジョン脱出から約二週間、早朝に誘拐されました‼
第十六話 その運び方やめてください‼切実に‼
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早朝のため、まだ通りに出歩いている人は誰もいなかった。パン屋さんが開店すると同時にふわふわパンを入手するため、早くクランを出てきたのだから無理もない。
結菜は石畳の上を軽い足取りで歩いていた。石畳の道に結菜の足音だけが響く。
っとその時、突然結菜の視界がぐるんと一回転した。結菜は一瞬の出来事にぽかんとする。
「はぇ?」
何が起こったのかわからず、自分の一つ括りにされた髪がゆらゆら揺れるのを、結菜は呆然としながら眺めた。
逆さまになった視界の端にロンが慌てたように鳴いているのを見て、結菜は自分の身に起こったことをようやく理解し始めた。
(こっ、これってもしかして、いやもしかしなくても誘拐、なんじゃ……)
助けを求めようと辺りを見回したが、当然のことながら通りには誰もいない。そうだよね、うん、そうだと思った‼結菜はもう嫌だと心の中で嘆いた。
そもそもパン屋さんの開店は普通の人が起きていないくらい早いのだ。結菜はその開店時刻ピッタリにパン屋さんに着くようにクランを出てきたのだから、誰も歩いていないのも当然のことなのである。そのことに、はたと結菜は気づいた。
(っていうか、誰も歩いていなかったじゃん‼なんで私は今、誰かさんに担がれてるの⁉)
頭の中が真っ白になっていくのを感じながら、結菜はその場のノリでツッコミを入れる。今日も結菜のツッコミEXは絶好調の働きを見せていた。
《鑑定。常人では認識できないほど気配を消していた模様。訓練を重ねることで習得可能な技術です。》
(はい、ありがとうございます。鑑定ご苦労様です。……でも今はこの状況を打破する方法を教えてほしいな‼)
結菜のスキル《鑑定+》が、必死にツッコミながらした結菜の心の問いに答えたようだ。
結菜は鑑定のスキルが自分にあったことを思い出し、鑑定さんにお願いしてみる。今更である。今更ではあるのだが………。まぁ、そこは気にしたらいけない。
《……………………………………。》
黙るんかい‼いやいや黙らないで何か言ってよ、と思う結菜。しかし鑑定さんの反応は皆無であった。ドンマイである……。
鑑定さんが答えてくれないので、結菜は誰かが気づいてくれることを願いとりあえず思いっきり叫ぼうとした。
「ぐぉぇ‼」
…………はい、無理でした。結菜は乙女にあるまじき声が出たことに恥ずかしさで身悶えた。まるでガマガエルが潰れた時のような声であった。……まぁ実際に聞いたことはないけどね‼
お腹が誘拐犯の肩に食い込んで圧迫されまくっている。胃の付近がぐっと抑えられているため、何度試してみてもガマカエルが潰れたような声しか出てこない。グギュ、グエッ、グォェ、の連発である。
せめて痛くないように担いでほしくて、結菜は手足をじたばたさせた。だがしかし、さらに胃が圧迫されてよけいに痛くなっただけだった。何も食べてないのに何かが出そうになる。このままだと、誘拐犯の背中に画像規制がかけられうるものがかかることになりそうである。
ある意味自分の身の危険を感じた結菜はぐったりと大人しくなったのであった。
結菜は石畳の上を軽い足取りで歩いていた。石畳の道に結菜の足音だけが響く。
っとその時、突然結菜の視界がぐるんと一回転した。結菜は一瞬の出来事にぽかんとする。
「はぇ?」
何が起こったのかわからず、自分の一つ括りにされた髪がゆらゆら揺れるのを、結菜は呆然としながら眺めた。
逆さまになった視界の端にロンが慌てたように鳴いているのを見て、結菜は自分の身に起こったことをようやく理解し始めた。
(こっ、これってもしかして、いやもしかしなくても誘拐、なんじゃ……)
助けを求めようと辺りを見回したが、当然のことながら通りには誰もいない。そうだよね、うん、そうだと思った‼結菜はもう嫌だと心の中で嘆いた。
そもそもパン屋さんの開店は普通の人が起きていないくらい早いのだ。結菜はその開店時刻ピッタリにパン屋さんに着くようにクランを出てきたのだから、誰も歩いていないのも当然のことなのである。そのことに、はたと結菜は気づいた。
(っていうか、誰も歩いていなかったじゃん‼なんで私は今、誰かさんに担がれてるの⁉)
頭の中が真っ白になっていくのを感じながら、結菜はその場のノリでツッコミを入れる。今日も結菜のツッコミEXは絶好調の働きを見せていた。
《鑑定。常人では認識できないほど気配を消していた模様。訓練を重ねることで習得可能な技術です。》
(はい、ありがとうございます。鑑定ご苦労様です。……でも今はこの状況を打破する方法を教えてほしいな‼)
結菜のスキル《鑑定+》が、必死にツッコミながらした結菜の心の問いに答えたようだ。
結菜は鑑定のスキルが自分にあったことを思い出し、鑑定さんにお願いしてみる。今更である。今更ではあるのだが………。まぁ、そこは気にしたらいけない。
《……………………………………。》
黙るんかい‼いやいや黙らないで何か言ってよ、と思う結菜。しかし鑑定さんの反応は皆無であった。ドンマイである……。
鑑定さんが答えてくれないので、結菜は誰かが気づいてくれることを願いとりあえず思いっきり叫ぼうとした。
「ぐぉぇ‼」
…………はい、無理でした。結菜は乙女にあるまじき声が出たことに恥ずかしさで身悶えた。まるでガマガエルが潰れた時のような声であった。……まぁ実際に聞いたことはないけどね‼
お腹が誘拐犯の肩に食い込んで圧迫されまくっている。胃の付近がぐっと抑えられているため、何度試してみてもガマカエルが潰れたような声しか出てこない。グギュ、グエッ、グォェ、の連発である。
せめて痛くないように担いでほしくて、結菜は手足をじたばたさせた。だがしかし、さらに胃が圧迫されてよけいに痛くなっただけだった。何も食べてないのに何かが出そうになる。このままだと、誘拐犯の背中に画像規制がかけられうるものがかかることになりそうである。
ある意味自分の身の危険を感じた結菜はぐったりと大人しくなったのであった。
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