先生、わがまま聞いて

香桐れん

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<六> 甘い夜

16 名前を呼んで ※

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     16 名前を呼んで ※
 
 
 
 
 高校に入って間もない頃、三年生の先輩と初めての体験をした。ベッドに横たわりながら「カラダには相性があるんだよ」とうっとり呟く相手の顔を、その後誰かと寝るたびに思い出した。
 思い出すたびになんとも言えない複雑な気持ちに陥っていたのは、その言葉を実感できずにいたからだということを、瑛斗は今になってやっと理解した。
 これまでに経験してきたものとは比べものにもならないほど、瑛斗は腕の中の人に没頭した。
 それは相手が大人の女の人だからというわけではないと思う。
 どこで覚えたのか尋ねたくなるようなことをしてくる女の子だって今までにいた。
 だが、そんな体験など一瞬で忘れ去ってしまうほどの快楽と至福と征服感が、先生との時間の中には存在していた。
 何より、先生はたまらないほど可愛かった。
 柔らかくて豊かな胸も、すべすべと滑らかな肌の感触も、体中からほんのりと匂い立つ魅惑的な香りも、子猫のような儚い声も、必死ですがり、絡みつく白い手脚も、何もかもが瑛斗の脳髄をつぶさに刺激しては、正常な思考を奪っていった。
 体を繋げた瞬間は、天にも昇る心地だった。
 一生離れたくない、ずっと収まっていたい心境と、もっと高みを目指したい欲求とがない交ぜになっていた。
 瑛斗は経験のない感情に半ば混乱しながら、組み敷いた体を何度も突き上げては、動きを止めて腕の中の感触を味わった。
 先生は驚くほど素直な反応を見せた。
 瑛斗のあらゆる動きを余すことなく感じ取っては全身を震わせ、幾度も小さな悲鳴を上げた。
 どうしてこんなに感じやすいの?
 今日がそういう・・・・日だから?
 いつも――誰が相手の時でもこんな風に声を上げるの?
 思い出したくない男の顔が何度も脳裏に浮かんでは、そのたびにそんな思考を打ち消すために先生の体をひどく求めた。
「しゅーちゃん」
 先生が瞼を閉じるたびに、名前を呼んだ。
「しゅーちゃん、好き」
 目を開けて、顔を見て、「えいと」と呼んでくれるたびに、瑛斗はえも言われぬ喜びに包まれた。
「……しゅうこ」
 耳元でそう呼ぶと、体が硬直するのがわかった。瑛斗を包み込む部分がきゅっと収縮し、締めつけた。
 あいつがそう呼ぶのだな。確信するなり瑛斗はもっと乱暴な気持ちになった。
 瑛斗の名前を叫び続け、瑛斗に夢中でしがみつくまで、何度も何度もこちらを向かせ、涙を浮かべて声を上げる愛しい人の体を骨が軋むほどに強く揺さぶった。
 
 
 
 
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