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第1章エリア1 英雄の誕生
第24話発展
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マップを展開しスタートの城門前にワープすると、斧たち一行は休むと言って自分たちが泊まっている宿屋へ帰ってしまった。まあ別にあいつらがいなくても問題ないだろ。
斧と別れた僕たちは、とりあえず近場にあった安い酒場に足を踏み入れ、中にあったテーブルに僕とベリトのパーティーが対面になるよう座った。
「それでベリトさん。この街を発展ってどうやるんですか?」
「とりあえず現状の課題として一番に上がるのが、戦えない人たちをどうやって食わせるかだと思うんだよ。誰しもが僕たちのように勇敢にモンスターと戦えるわけじゃないからね」
早速彼の考えを聞かせてもらおうと本題に映ると、ベリトはメニューウィンドウを開き、黒い種のようなものをオブジェクト化させ僕たちに見せてきた。
「これは?」
見ながら質問すると、ベリトは説明を始めてくれる。
「これはブルドって言う果物の種だよ。近くにあるNPCがいる村で見つけてね、ちょっとくすねたんだよ」
普通に泥棒じゃん。まあNPCだしいいのか? とりあえず話の腰を折るのはやめよう。
「それでね、このブルドって言う果物なんだけど、僕が口にしてみたら普通に美味しくて食べれたんだよ。だからとりあえず戦えない人たちには、畑とかを耕してもらおうと思うんだ」
彼の考える話を聞いてみて、なるほどと思う。確かに戦えない人たちでも、出来ることはたくさんあるな。
「それはいい試みだと思います。他にも襲ってこない動物モンスターを飼育したりするのはどうでしょう? 経験値がほぼ皆無なので僕はあんまり倒してないですけど、倒したら食べられる肉をドロップするので、戦えない人たちでも安全に食料を確保できますし」
「いいね! まあとりあえず目の前の食料問題を解決しないと、たくさんの人が死ぬ。だから職を与えて自足自給の生活が送れるようにしてあげたいんだ」
立派な考えだな。でも、僕は何を協力すれば……。
「あの、それで僕は何をすればいいんですか? 正直経済や田畑の管理なんかの知識は全くないんですけど」
僕にあるのは人よりも恵まれた戦闘技術と、未知を楽しむ好奇心ぐらいだ。とてもこの街を発展させることに貢献できるとは思えない。少し申し訳ない顔を覗かせて俯くが、ベリトは大丈夫と言い話を変えてくる。
「そこらへんは安心して。少し話は変わるけど、僕は食料の自給自足と並行して、あることにも取り組みたいと思ってるんだよ」
あること? それが何なのか目だけで問いかけると、ベリトは窓に映る冒険者ギルドを見ながら。
「新しく、冒険者ギルドを設立しようと考えてるんだ!」
なんて、わけのわからないことを言ってくる。冒険者ギルドの設立って、もうすでにあるじゃないか。何を言ってるんだこの人は。
「もうすでにあるのに、新しく作るんですか? なんのために? てかそもそもギルドって作れるんですか?」
様々な疑問が一度に複数湧いてしまい、それらを全部質問する。一気に問いを投げかけられたベリトは、まあまあと言いながら1つずつ丁寧に説明し始めてくれた。
「彼方くん、ギルドは作れるよ。もちろん僕もまだ作ったことがないから詳しいことは分からないけど、とりあえず作ることは可能だ。そもそもそう言った情報は、もうすでにサイトなんかにまとめられているんだけど、見てないのかい?」
いきなりサイトなんて言われて、疑問符を浮かべる。サイトってなんだ。ウェブサイトのことか? 確かに世界が支配されてからと言うもの、寝ても覚めてもモンスターの狩りを続けてたから、ろくに便利フォン———この世界でインターネットや動画サイトやソーシャルゲームなんかをすることができる、万能な携帯機———を使ってない。
確かメニューウィンドウの道具欄の中にある便利な物の欄にあったっけ。他の様々なものは奪い取ったくせに、これだけは残してくれるなんて魔王は優しいなと思いつつも、便利フォンをオブジェクト化させてみる。
手のひらサイズの四角い携帯機。現実世界にある携帯と形は酷似している。と言うか、あれを元に作られている。
僕は早速便利フォンを起動させると、インターネットを開きエデンワールドのことについて検索してみる。すると一番上には、この世界の攻略情報なんかが記載されたサイトのリンクが貼ってあった。
「こんなのあったんだ……」
独り言のようにつぶやくと、隣で黙っていた愛花ちゃんが呆れたように口を開く。
「知らなかったの?」
「うん、愛花ちゃんは知ってたの?」
「当たり前。多分この世界で知らないの、彼方ぐらいだよ。そんぐらい有名だし」
まるで知っているのが常識であり、知らない僕が異端であるかのような口ぶり。そ、そうだったのか? 顔をあげ、対面に座っているベリトたちの顔を見てみると、なんだか苦笑いのような笑みを浮かべていた。
みんな知ってたんだ……。もちろん僕だって、そう言ったサイトがあるんじゃないかなーとは思っていた。だけどなんとなくネタバレを食らいたくないと言う気持ちがあって、今までウェブサイトを開くことが出来ずにいた。
でも、普通に考えれば生死が掛かってるこの状況下で、ネタバレを気にしてる人間なんか僕ぐらいか。だいぶ話が逸れてしまい、ベリトは「んん」と軽い咳払いをして話を戻す。
「それでね、どうして冒険者ギルドを作るかって話になるんだけど。彼方くん、君は今の冒険者ギルドに不満はないかい?」
「不満ですか?」
「そう、何かしらあるんじゃないのかい?」
ベリトに言われて、現在NPCが管理している冒険者ギルドの不満について考えてみる。別に報酬面も悪くないし、クエストの難易度も……。
そこでハッと一つ思う。現在ある冒険者ギルドのクエストは、どれもこれもレベルが低い。もっと高難易度のクエストがあってもいい気がする。
「難易度については、思うところがありますね」
僕が不満点を一つ言うと、ベリトはパチンと指を鳴らす。
「そうなんだよ。冒険者ギルドに貼っつけてあるクエストは、どれもこれも難しいものばかりだ。簡単な薬草採取なんかは報奨金が雀の涙程度だし、クエストの報酬と内容が釣り合ってないんだよ」
あれ? 僕の言いたいことと違うんだけど……。まあいっか。適当に流すと、彼の話の続きを聞く。
「他にも、ランクなんかの難易度設定がされてないから、初心者が報奨金目当てで高いクエストを受けて、結果亡くなるってことも頻繁に起こってるんだ。モンスターと戦ってくれる人間は貴重だ。そんな貴重な戦力を無駄に死なせてしまう今の冒険者ギルドのシステムは、欠陥だらけだと僕は思ってる。だから作るんだよ。人間が管理する、人間が生き残るためのシステムを備えた冒険者ギルドを!」
グッとガッツポーズを掲げて宣言するベリト。確かに言われてみれば、僕が昨日受けたサンダーウルフもレベル4だったし、一般人からしてみれば難しいか。ベリトの言い分は一理ある。
「確かに、適切な難易度とは言い難いかもしれないですね」
「だろう! だから定めるんだよ。とりあえずクエストと冒険者にランク付けをしようと思うんだ。競争心も煽れるし、下手に難しいクエストも受けれなくする。そうすれば死亡率はグッと減ると思うんだ。だから君には、冒険者ギルドを設立して、そこのギルド長になってもらいたい!」
パチンと手を叩きお願いされるが、即答することは出来ない。ギルド長って、僕には無理だ。まずめんどくさい。僕は正直他人が死のうがどうなろうが、あんまり興味がない。
生き残るためのシステムやランク付けなんかは素晴らしいと思うけど、別に僕じゃなくちゃいけない理由が見つからない。それにギルド長って、何をすればいいのか分からないし、こう言うのは僕の役目ではない気がする。
そもそも僕がギルド長をやるメリットもないしな。でも即答して彼らの好感度を下げるのはなんとなく嫌だった。ベリトは今後、この世界の中心人物になるような気がするし、そんな人間の好感度をここで下げる理由もない。
とりあえず答えは後回しにして、あとで断ろう。
「すいませんベリトさん。少し考えさせてもらってもいいですか?」
考える気もないのに言うと、ベリトはニッと笑みを浮かべて。
「もちろん。僕もちょっと急かしすぎたね。今後に関わる重要なことだし、じっくりと考えて答えを聞かせてもらいたいよ」
優しく言ってくれたベリトに申し訳ない感情を抱きつつも、その場で解散する形となり、僕と愛花ちゃんは酒場を後にした。
斧と別れた僕たちは、とりあえず近場にあった安い酒場に足を踏み入れ、中にあったテーブルに僕とベリトのパーティーが対面になるよう座った。
「それでベリトさん。この街を発展ってどうやるんですか?」
「とりあえず現状の課題として一番に上がるのが、戦えない人たちをどうやって食わせるかだと思うんだよ。誰しもが僕たちのように勇敢にモンスターと戦えるわけじゃないからね」
早速彼の考えを聞かせてもらおうと本題に映ると、ベリトはメニューウィンドウを開き、黒い種のようなものをオブジェクト化させ僕たちに見せてきた。
「これは?」
見ながら質問すると、ベリトは説明を始めてくれる。
「これはブルドって言う果物の種だよ。近くにあるNPCがいる村で見つけてね、ちょっとくすねたんだよ」
普通に泥棒じゃん。まあNPCだしいいのか? とりあえず話の腰を折るのはやめよう。
「それでね、このブルドって言う果物なんだけど、僕が口にしてみたら普通に美味しくて食べれたんだよ。だからとりあえず戦えない人たちには、畑とかを耕してもらおうと思うんだ」
彼の考える話を聞いてみて、なるほどと思う。確かに戦えない人たちでも、出来ることはたくさんあるな。
「それはいい試みだと思います。他にも襲ってこない動物モンスターを飼育したりするのはどうでしょう? 経験値がほぼ皆無なので僕はあんまり倒してないですけど、倒したら食べられる肉をドロップするので、戦えない人たちでも安全に食料を確保できますし」
「いいね! まあとりあえず目の前の食料問題を解決しないと、たくさんの人が死ぬ。だから職を与えて自足自給の生活が送れるようにしてあげたいんだ」
立派な考えだな。でも、僕は何を協力すれば……。
「あの、それで僕は何をすればいいんですか? 正直経済や田畑の管理なんかの知識は全くないんですけど」
僕にあるのは人よりも恵まれた戦闘技術と、未知を楽しむ好奇心ぐらいだ。とてもこの街を発展させることに貢献できるとは思えない。少し申し訳ない顔を覗かせて俯くが、ベリトは大丈夫と言い話を変えてくる。
「そこらへんは安心して。少し話は変わるけど、僕は食料の自給自足と並行して、あることにも取り組みたいと思ってるんだよ」
あること? それが何なのか目だけで問いかけると、ベリトは窓に映る冒険者ギルドを見ながら。
「新しく、冒険者ギルドを設立しようと考えてるんだ!」
なんて、わけのわからないことを言ってくる。冒険者ギルドの設立って、もうすでにあるじゃないか。何を言ってるんだこの人は。
「もうすでにあるのに、新しく作るんですか? なんのために? てかそもそもギルドって作れるんですか?」
様々な疑問が一度に複数湧いてしまい、それらを全部質問する。一気に問いを投げかけられたベリトは、まあまあと言いながら1つずつ丁寧に説明し始めてくれた。
「彼方くん、ギルドは作れるよ。もちろん僕もまだ作ったことがないから詳しいことは分からないけど、とりあえず作ることは可能だ。そもそもそう言った情報は、もうすでにサイトなんかにまとめられているんだけど、見てないのかい?」
いきなりサイトなんて言われて、疑問符を浮かべる。サイトってなんだ。ウェブサイトのことか? 確かに世界が支配されてからと言うもの、寝ても覚めてもモンスターの狩りを続けてたから、ろくに便利フォン———この世界でインターネットや動画サイトやソーシャルゲームなんかをすることができる、万能な携帯機———を使ってない。
確かメニューウィンドウの道具欄の中にある便利な物の欄にあったっけ。他の様々なものは奪い取ったくせに、これだけは残してくれるなんて魔王は優しいなと思いつつも、便利フォンをオブジェクト化させてみる。
手のひらサイズの四角い携帯機。現実世界にある携帯と形は酷似している。と言うか、あれを元に作られている。
僕は早速便利フォンを起動させると、インターネットを開きエデンワールドのことについて検索してみる。すると一番上には、この世界の攻略情報なんかが記載されたサイトのリンクが貼ってあった。
「こんなのあったんだ……」
独り言のようにつぶやくと、隣で黙っていた愛花ちゃんが呆れたように口を開く。
「知らなかったの?」
「うん、愛花ちゃんは知ってたの?」
「当たり前。多分この世界で知らないの、彼方ぐらいだよ。そんぐらい有名だし」
まるで知っているのが常識であり、知らない僕が異端であるかのような口ぶり。そ、そうだったのか? 顔をあげ、対面に座っているベリトたちの顔を見てみると、なんだか苦笑いのような笑みを浮かべていた。
みんな知ってたんだ……。もちろん僕だって、そう言ったサイトがあるんじゃないかなーとは思っていた。だけどなんとなくネタバレを食らいたくないと言う気持ちがあって、今までウェブサイトを開くことが出来ずにいた。
でも、普通に考えれば生死が掛かってるこの状況下で、ネタバレを気にしてる人間なんか僕ぐらいか。だいぶ話が逸れてしまい、ベリトは「んん」と軽い咳払いをして話を戻す。
「それでね、どうして冒険者ギルドを作るかって話になるんだけど。彼方くん、君は今の冒険者ギルドに不満はないかい?」
「不満ですか?」
「そう、何かしらあるんじゃないのかい?」
ベリトに言われて、現在NPCが管理している冒険者ギルドの不満について考えてみる。別に報酬面も悪くないし、クエストの難易度も……。
そこでハッと一つ思う。現在ある冒険者ギルドのクエストは、どれもこれもレベルが低い。もっと高難易度のクエストがあってもいい気がする。
「難易度については、思うところがありますね」
僕が不満点を一つ言うと、ベリトはパチンと指を鳴らす。
「そうなんだよ。冒険者ギルドに貼っつけてあるクエストは、どれもこれも難しいものばかりだ。簡単な薬草採取なんかは報奨金が雀の涙程度だし、クエストの報酬と内容が釣り合ってないんだよ」
あれ? 僕の言いたいことと違うんだけど……。まあいっか。適当に流すと、彼の話の続きを聞く。
「他にも、ランクなんかの難易度設定がされてないから、初心者が報奨金目当てで高いクエストを受けて、結果亡くなるってことも頻繁に起こってるんだ。モンスターと戦ってくれる人間は貴重だ。そんな貴重な戦力を無駄に死なせてしまう今の冒険者ギルドのシステムは、欠陥だらけだと僕は思ってる。だから作るんだよ。人間が管理する、人間が生き残るためのシステムを備えた冒険者ギルドを!」
グッとガッツポーズを掲げて宣言するベリト。確かに言われてみれば、僕が昨日受けたサンダーウルフもレベル4だったし、一般人からしてみれば難しいか。ベリトの言い分は一理ある。
「確かに、適切な難易度とは言い難いかもしれないですね」
「だろう! だから定めるんだよ。とりあえずクエストと冒険者にランク付けをしようと思うんだ。競争心も煽れるし、下手に難しいクエストも受けれなくする。そうすれば死亡率はグッと減ると思うんだ。だから君には、冒険者ギルドを設立して、そこのギルド長になってもらいたい!」
パチンと手を叩きお願いされるが、即答することは出来ない。ギルド長って、僕には無理だ。まずめんどくさい。僕は正直他人が死のうがどうなろうが、あんまり興味がない。
生き残るためのシステムやランク付けなんかは素晴らしいと思うけど、別に僕じゃなくちゃいけない理由が見つからない。それにギルド長って、何をすればいいのか分からないし、こう言うのは僕の役目ではない気がする。
そもそも僕がギルド長をやるメリットもないしな。でも即答して彼らの好感度を下げるのはなんとなく嫌だった。ベリトは今後、この世界の中心人物になるような気がするし、そんな人間の好感度をここで下げる理由もない。
とりあえず答えは後回しにして、あとで断ろう。
「すいませんベリトさん。少し考えさせてもらってもいいですか?」
考える気もないのに言うと、ベリトはニッと笑みを浮かべて。
「もちろん。僕もちょっと急かしすぎたね。今後に関わる重要なことだし、じっくりと考えて答えを聞かせてもらいたいよ」
優しく言ってくれたベリトに申し訳ない感情を抱きつつも、その場で解散する形となり、僕と愛花ちゃんは酒場を後にした。
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