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第1章エリア1 英雄の誕生
第5話初めての冒険
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周りの民衆を押し退けて一人突っ走る。地面は石畳のタイルがズラーと奥まで並んでおり、左右にはこれまた心踊る中世風の、石造建築が建てられている。
目の前に広がるこの光景だけで、僕は今まで感じたことのない高揚感を心の奥底から感じている。
なんだこれ! なんだこのワクワクは! 初めて未開の地に到達した人間は、きっとこんな感情を抱いたんだろうな。何百年も前に全世界を旅した探検家の気持ちに共感すると、右手の人差し指を空中で下にスワイプしてメニュー画面を表示させ、マップを開き、現在地を確認する。
マップを開くと左上には《始まりの街スタート》と記されていた。スタートとは、もしかしてこの街の名前か?
だとしたら、AIは絶望的に名付けのセンスがないな。それとも僕たちに配慮して、ワザとダサくて覚えやすい名前にしてくれたのかな。
そうだとしたら、ものすごく気の使えるAIだなと一人で感心しつつも、マップの中心に向かって人差し指と親指をつまむように動作させ、それを二回繰り返してこの街の全容を確認するようにマップを縮小させる。
街の中心地には大きな円が描かれており、先ほど僕たちが集められた場所に違いない。
その中心から円形に広がるように、この街は創られている。街を囲うような城壁は存在せず、街には魔物が干渉出来ないようにプログラムされてるのかなと推測してみる。
次に、いま目の前に映っているマップは真上から見た平面的なものだが、それを立体的に置き換え、街の細かい部分を確認してみる。
建物は街の中心に近ければ近いほど豪勢な作りになっており、逆に中心から離れた外周部などは、ボロい木造建築が乱雑に並べられていた。
雰囲気もなんだかどんよりしており、ここでは暮らしたくないなと思わずにはいられない……。って、街の作りなんか今はどうでもいいだろ。
僕は立体的に映るマップを閉じると、もう一度メニュー画面を起動させる。
メニュー画面には装備や道具などといった項目の隣に、僕のものと思えるステータスウィンドウが表示されていたのだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Lv 1 戦士 【名前】三木彼方
【HP 】53
【MP】22
【攻撃力】20
【防御力】20
【魔法攻撃力】0
【魔法防御力】14
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
自分のステータスと睨めっこすること1分。自分の情報だけだと、特に得るものが何もない。多分他の人たちとも大差はないと思うけど……。
よくも悪くもLv1って感じのステータスに、少しがっかりする。もしかしたら僕だけ選ばれし勇者で、一人だけ異常にステータスが高いなんて展開を期待したけど、どうもそんな気配はない。
そんな痛々しい中二病的思考を巡らせると、メニュー画面を閉じて、もう一度走り出す。
別にステータスが特別じゃなくたっていいんだ。あの退屈な日々が終わるなら、なんだって……!
街の中心から北側に向かって走ること10分。僕の体は一切の疲労感を感じることなく、走り続けているはずなのに——。
この世界の肉体は、いくら酷使しようと疲れを知ることはない。走ることによって息切れすることもなければ、肉体を痛めつけた代償による筋肉痛なども存在しない。
可能であるならば、無限に疲れることなく走ることだって出来る。無論、そんなことは不可能だが……。
肉体的な疲労はなくとも、精神的な疲労はあるのだ。僕たちの体はデータで構成されている関係上、疲れもしなければ、痛みも感じない。実体のない、虚構のような存在だ。
だから向こうの肉体では不可能とも思えるようなことも、こっちの体では軽々と可能にしてみせる。
だというのに僕の肺は悲鳴をあげ、全身からは偽りの汗が噴き出している。
「はぁ……はぁ……」
胸が苦しい。疲労のなかったこの世界で、僕は疲れている。現実世界での肉体は1ミリも動いていないというのに、おかしな話だ。
でも、これが現実だ。そう、本来なければならない、僕たち生物の正しい姿。疲労感を感じていることにも高揚感を感じつつも、これ以上走ることは困難と判断し、僕は一旦その場で足を止める。
無我夢中で走っていたせいで気がつかなかったが、ここはかなり街の外周部に近い場所のようだ。建物も先ほど石造で出来ていたものとは違い、木造建築の埃臭い建物ばかりが雑に並べられている。
そんな場所で、僕は1つの興味深い施設を発見し足を向かわせる。
こんな場所にある、僕が興味を示した建物。それは祭りにある出店のような形をしており、おそらく道具屋と思われる建物だった。
マップでこの場所を拡大して確認してみると、ほとんどの建築物は何も書かれていないのに対して、この場所には袋のマークが描かれている。
並べられている商品棚にはポーションと思われる小瓶が並べられており、ここが道具屋であると確信させてくれる。
さらには目の前にいる店主の見た目。4頭身……。下手すれば3頭身ほどしかない小さな立端に、不自然なほどにデカイ頭部。
まるで作り物のような口髭を携えていて、頭には朱色のバンダナを巻きつけている。
なんだこの生物は。NPCか? NPCだよな? このデータで構成された肉体は、あっちの、現実世界にある肉体から情報を読み取って再現されている。
遺伝子や細胞など体の隅々まで情報を読み取って、仮想世界で肉体を構成してくれてるのだ。
だから普通に考えて、こんな骨格をした人間はあり得ない。
もちろんこの世界でもお金を払えば整形が出来る。顔にあるパーツの形や位置を変えるだけでなく、骨格や体型に至るまで、なんでも弄り放題だ。
だけど整形というのは普通、自身をより魅力的に映すための手段だ。眉目を整えたり、外見をいじったりするのは、他者からの印象をより良いものにするために行うものだ。
だからこんなゲームのモブみたいなキャラメイクにする人間は、余程酔狂な奴でない限りしないのだ。
つまり目の前にいるこのおじさんは、NPCということで間違い無いだろう。僕がずっと目の前で見つめているのに、顔どころか視線一つ動かさずに虚空を見つめているところを見るに、自分から話しかけないと会話が始まらないようにプログラムされてるに違いない。
僕はゴクリと生唾を飲み込むと、意を決して話しかける。
————————
これ以降ステータス表記は致しません。主人公も他のキャラクターとあまり変わらない強さということを示したかったために書かせていただいたのですが、正直長ったらしいステータスを出されても読まないですし、邪魔なだけなのでこれ以降は細かい数値等を出す予定はないのでご安心ください
目の前に広がるこの光景だけで、僕は今まで感じたことのない高揚感を心の奥底から感じている。
なんだこれ! なんだこのワクワクは! 初めて未開の地に到達した人間は、きっとこんな感情を抱いたんだろうな。何百年も前に全世界を旅した探検家の気持ちに共感すると、右手の人差し指を空中で下にスワイプしてメニュー画面を表示させ、マップを開き、現在地を確認する。
マップを開くと左上には《始まりの街スタート》と記されていた。スタートとは、もしかしてこの街の名前か?
だとしたら、AIは絶望的に名付けのセンスがないな。それとも僕たちに配慮して、ワザとダサくて覚えやすい名前にしてくれたのかな。
そうだとしたら、ものすごく気の使えるAIだなと一人で感心しつつも、マップの中心に向かって人差し指と親指をつまむように動作させ、それを二回繰り返してこの街の全容を確認するようにマップを縮小させる。
街の中心地には大きな円が描かれており、先ほど僕たちが集められた場所に違いない。
その中心から円形に広がるように、この街は創られている。街を囲うような城壁は存在せず、街には魔物が干渉出来ないようにプログラムされてるのかなと推測してみる。
次に、いま目の前に映っているマップは真上から見た平面的なものだが、それを立体的に置き換え、街の細かい部分を確認してみる。
建物は街の中心に近ければ近いほど豪勢な作りになっており、逆に中心から離れた外周部などは、ボロい木造建築が乱雑に並べられていた。
雰囲気もなんだかどんよりしており、ここでは暮らしたくないなと思わずにはいられない……。って、街の作りなんか今はどうでもいいだろ。
僕は立体的に映るマップを閉じると、もう一度メニュー画面を起動させる。
メニュー画面には装備や道具などといった項目の隣に、僕のものと思えるステータスウィンドウが表示されていたのだ。
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Lv 1 戦士 【名前】三木彼方
【HP 】53
【MP】22
【攻撃力】20
【防御力】20
【魔法攻撃力】0
【魔法防御力】14
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自分のステータスと睨めっこすること1分。自分の情報だけだと、特に得るものが何もない。多分他の人たちとも大差はないと思うけど……。
よくも悪くもLv1って感じのステータスに、少しがっかりする。もしかしたら僕だけ選ばれし勇者で、一人だけ異常にステータスが高いなんて展開を期待したけど、どうもそんな気配はない。
そんな痛々しい中二病的思考を巡らせると、メニュー画面を閉じて、もう一度走り出す。
別にステータスが特別じゃなくたっていいんだ。あの退屈な日々が終わるなら、なんだって……!
街の中心から北側に向かって走ること10分。僕の体は一切の疲労感を感じることなく、走り続けているはずなのに——。
この世界の肉体は、いくら酷使しようと疲れを知ることはない。走ることによって息切れすることもなければ、肉体を痛めつけた代償による筋肉痛なども存在しない。
可能であるならば、無限に疲れることなく走ることだって出来る。無論、そんなことは不可能だが……。
肉体的な疲労はなくとも、精神的な疲労はあるのだ。僕たちの体はデータで構成されている関係上、疲れもしなければ、痛みも感じない。実体のない、虚構のような存在だ。
だから向こうの肉体では不可能とも思えるようなことも、こっちの体では軽々と可能にしてみせる。
だというのに僕の肺は悲鳴をあげ、全身からは偽りの汗が噴き出している。
「はぁ……はぁ……」
胸が苦しい。疲労のなかったこの世界で、僕は疲れている。現実世界での肉体は1ミリも動いていないというのに、おかしな話だ。
でも、これが現実だ。そう、本来なければならない、僕たち生物の正しい姿。疲労感を感じていることにも高揚感を感じつつも、これ以上走ることは困難と判断し、僕は一旦その場で足を止める。
無我夢中で走っていたせいで気がつかなかったが、ここはかなり街の外周部に近い場所のようだ。建物も先ほど石造で出来ていたものとは違い、木造建築の埃臭い建物ばかりが雑に並べられている。
そんな場所で、僕は1つの興味深い施設を発見し足を向かわせる。
こんな場所にある、僕が興味を示した建物。それは祭りにある出店のような形をしており、おそらく道具屋と思われる建物だった。
マップでこの場所を拡大して確認してみると、ほとんどの建築物は何も書かれていないのに対して、この場所には袋のマークが描かれている。
並べられている商品棚にはポーションと思われる小瓶が並べられており、ここが道具屋であると確信させてくれる。
さらには目の前にいる店主の見た目。4頭身……。下手すれば3頭身ほどしかない小さな立端に、不自然なほどにデカイ頭部。
まるで作り物のような口髭を携えていて、頭には朱色のバンダナを巻きつけている。
なんだこの生物は。NPCか? NPCだよな? このデータで構成された肉体は、あっちの、現実世界にある肉体から情報を読み取って再現されている。
遺伝子や細胞など体の隅々まで情報を読み取って、仮想世界で肉体を構成してくれてるのだ。
だから普通に考えて、こんな骨格をした人間はあり得ない。
もちろんこの世界でもお金を払えば整形が出来る。顔にあるパーツの形や位置を変えるだけでなく、骨格や体型に至るまで、なんでも弄り放題だ。
だけど整形というのは普通、自身をより魅力的に映すための手段だ。眉目を整えたり、外見をいじったりするのは、他者からの印象をより良いものにするために行うものだ。
だからこんなゲームのモブみたいなキャラメイクにする人間は、余程酔狂な奴でない限りしないのだ。
つまり目の前にいるこのおじさんは、NPCということで間違い無いだろう。僕がずっと目の前で見つめているのに、顔どころか視線一つ動かさずに虚空を見つめているところを見るに、自分から話しかけないと会話が始まらないようにプログラムされてるに違いない。
僕はゴクリと生唾を飲み込むと、意を決して話しかける。
————————
これ以降ステータス表記は致しません。主人公も他のキャラクターとあまり変わらない強さということを示したかったために書かせていただいたのですが、正直長ったらしいステータスを出されても読まないですし、邪魔なだけなのでこれ以降は細かい数値等を出す予定はないのでご安心ください
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