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そして彼は、今までの失敗を学ぶ……
第63話無責任……
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一通り飯を食べ終えた俺たちは、さっそく本題に入ることにする。
「じゃあ遅くなったけど、昨日の続きをしようと思う」
俺は真剣な雰囲気で話をはじめ出すが、橋川はぐでーっと机に伏せていた。
そしてコップの中に入っている氷を取り出して、机でこねくり回した。
何やってんだよコイツ……。
「おい、早く昨日の続きを始めるぞ!」
だが、橋川はよけいだらだらし始めた。
「だあって私らが話し合ったところでもういい意見出ないかんじだしー、もうこれは本人たちが解決するしかないって思うし。それに昨日優太に私の意見反対されすぎてガン萎えだしー」
「いや、だって本当にお前の意見変なのばっかなんだもん……」
それを聞いた橋川は、体を起こすとほっぺを膨らませて怒った表情になる。
「それに俺も前は花が解決するべきだと思ってた……。でもそれじゃ解決できなかった。だから俺たちが協力してやらないとダメなんだよ……。頼む、俺の飯食っただろ」
すると橋川は、怒った表情から焦った表情に変わる。
忙しい奴だな……。
「ええ! 今のご飯って賄賂的な奴だったの!?」
賄賂とは少し違う気がするが……。
別にそんなつもりであげたわけじゃないが、まあ俺にとっては都合のいい勘違いを勝手にしてくれているのでそのままにしよう。
俺は近くの伝票を橋川にちらつかせる。
「あー高かったなー。こんな高いの奢らされたのに、その見返りがなんもないなんて……」
それを聞いた橋川はおろおろし始めた。
「だってさっきくれるって……」
「無料《タダ》なんて一言も言ってないけど?」
なんかヤクザの手法みたいで若干心が痛む。
でもこのまま橋川に手伝ってもらわないと困る。
こんなのでも、いないよりはずっとましだ……。
俺は机に置いてある伝票をトントンと急かすように叩く。
「分かったよ……。なんかやる気ない感じ出して悪かったよ。『協力する』って言った以上最後まで付き合うから」
なんかしょぼくれているが、俺は別に橋川が途中で約束を投げ出す薄情な奴だとは思ってなかった。
さっきの状態の橋川じゃ余計にいい案が出なさそうだと思ったから、少し脅しっぽいことを言っただけだ……。
「じゃあ早速だけど何かいい案はあるか?」
そう聞くが、橋川は何か考えた様子で何も喋らない。
昨日みたいにゴミみたいな案を量産してくれると思ったのだが、今日は違うのか……?
少しして、ようやく橋川は口を開いた。
「あのさー、昨日と今日ずっと考えてたんだけど……」
「なんだよ……?」
「まず大前提としてさ、このままほっといたら矢木澤がいじめられるってちょっと考えすぎじゃない? 少し悪口言われただけでしょ?」
橋川の意見に俺も考えを改める……。
確かに少し考えすぎな気もしなくない……。
別に言い争いをしたのは花じゃないし、別に花と阿澄の仲が悪いわけではない……。
「確かにそうかもしれない……」
「でしょ。だからまだ現状を見守るってことで――」
「でもダメだ」
俺は橋川の言葉を遮るようにして、自分の言葉を喋る。
見守るとか見届けるとかいい感じの言葉で取り繕ってるいるが、要は無干渉なだけだ。
自分で何もせず、いい結果だけを祈るなんてのは都合が良すぎる……。
かつての俺もそうだ……。
自分が動かない理由にあれこれ理由をつけて何もしなかった……。
その結果花を失った……。
そんな方法じゃ何も得ることは出来ないと、俺は誰よりも知っている。
「俺の考えすぎかもしれない……。勝手に花がいじめられるかもしれないと言って、誰も求めてないのに勝手に助けようとする……お節介もいいところだ。でも、何かあってからじゃ遅いんだ……。だから頼む! 俺に協力してくれ……」
俺は太ももに手をついて頭を下げる。
「ちょ、ちょっと、とりあえず頭上げてってば……。なんかごめん……無責任なこと言って」
何故橋川に謝られているのか分からないが、とりあえず作戦会議の続きができそうだ……。
俺は頭を上げて、コップに入ったコーラを飲みながらさっきの話の続きを始める。
「じゃあ遅くなったけど、昨日の続きをしようと思う」
俺は真剣な雰囲気で話をはじめ出すが、橋川はぐでーっと机に伏せていた。
そしてコップの中に入っている氷を取り出して、机でこねくり回した。
何やってんだよコイツ……。
「おい、早く昨日の続きを始めるぞ!」
だが、橋川はよけいだらだらし始めた。
「だあって私らが話し合ったところでもういい意見出ないかんじだしー、もうこれは本人たちが解決するしかないって思うし。それに昨日優太に私の意見反対されすぎてガン萎えだしー」
「いや、だって本当にお前の意見変なのばっかなんだもん……」
それを聞いた橋川は、体を起こすとほっぺを膨らませて怒った表情になる。
「それに俺も前は花が解決するべきだと思ってた……。でもそれじゃ解決できなかった。だから俺たちが協力してやらないとダメなんだよ……。頼む、俺の飯食っただろ」
すると橋川は、怒った表情から焦った表情に変わる。
忙しい奴だな……。
「ええ! 今のご飯って賄賂的な奴だったの!?」
賄賂とは少し違う気がするが……。
別にそんなつもりであげたわけじゃないが、まあ俺にとっては都合のいい勘違いを勝手にしてくれているのでそのままにしよう。
俺は近くの伝票を橋川にちらつかせる。
「あー高かったなー。こんな高いの奢らされたのに、その見返りがなんもないなんて……」
それを聞いた橋川はおろおろし始めた。
「だってさっきくれるって……」
「無料《タダ》なんて一言も言ってないけど?」
なんかヤクザの手法みたいで若干心が痛む。
でもこのまま橋川に手伝ってもらわないと困る。
こんなのでも、いないよりはずっとましだ……。
俺は机に置いてある伝票をトントンと急かすように叩く。
「分かったよ……。なんかやる気ない感じ出して悪かったよ。『協力する』って言った以上最後まで付き合うから」
なんかしょぼくれているが、俺は別に橋川が途中で約束を投げ出す薄情な奴だとは思ってなかった。
さっきの状態の橋川じゃ余計にいい案が出なさそうだと思ったから、少し脅しっぽいことを言っただけだ……。
「じゃあ早速だけど何かいい案はあるか?」
そう聞くが、橋川は何か考えた様子で何も喋らない。
昨日みたいにゴミみたいな案を量産してくれると思ったのだが、今日は違うのか……?
少しして、ようやく橋川は口を開いた。
「あのさー、昨日と今日ずっと考えてたんだけど……」
「なんだよ……?」
「まず大前提としてさ、このままほっといたら矢木澤がいじめられるってちょっと考えすぎじゃない? 少し悪口言われただけでしょ?」
橋川の意見に俺も考えを改める……。
確かに少し考えすぎな気もしなくない……。
別に言い争いをしたのは花じゃないし、別に花と阿澄の仲が悪いわけではない……。
「確かにそうかもしれない……」
「でしょ。だからまだ現状を見守るってことで――」
「でもダメだ」
俺は橋川の言葉を遮るようにして、自分の言葉を喋る。
見守るとか見届けるとかいい感じの言葉で取り繕ってるいるが、要は無干渉なだけだ。
自分で何もせず、いい結果だけを祈るなんてのは都合が良すぎる……。
かつての俺もそうだ……。
自分が動かない理由にあれこれ理由をつけて何もしなかった……。
その結果花を失った……。
そんな方法じゃ何も得ることは出来ないと、俺は誰よりも知っている。
「俺の考えすぎかもしれない……。勝手に花がいじめられるかもしれないと言って、誰も求めてないのに勝手に助けようとする……お節介もいいところだ。でも、何かあってからじゃ遅いんだ……。だから頼む! 俺に協力してくれ……」
俺は太ももに手をついて頭を下げる。
「ちょ、ちょっと、とりあえず頭上げてってば……。なんかごめん……無責任なこと言って」
何故橋川に謝られているのか分からないが、とりあえず作戦会議の続きができそうだ……。
俺は頭を上げて、コップに入ったコーラを飲みながらさっきの話の続きを始める。
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