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そして彼は、今までの失敗を学ぶ……
第59話不器用な二人……
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そして翌日。
俺は今、教室のドアの前で立ち止まっている。
昨日花にあんなことを言われてしまったので、少々教室に入りずらい……。
それでも今更帰るわけにもいかないので、俺は渋々教室に入った。
教室に入ると、まだ昨日の体育祭の余韻に浸っているのか、クラスメイト達が打ち上げの話などをしている。
俺には特に関係ないので、いつも通り席に座ろうと自分の席まで行く。
俺の隣の席の花は、いつも通り一人で本を読んでいる。
俺が席に就くと、花はちらりとこちらを見た後に、また本に視線を戻す。
正直気まずいのだが、別に喧嘩したわけじゃないし何か話しかけようかと考えたが、昨日『もう二度と関わるな』と言われた次の日に話しかけるのはどうなのかと思う自分がいて、なかなか話しかけられない……。
とくにすることもないので、携帯を取り出して適当にいじってると、いきなり横から誰かに肩を組まれた。
「よお優太! しけた面してんな」
なれなれしく肩を組んできたのは、昨日初めて喋った橋川だった。
てかもう名前呼びって……これが普通なのか?
世の陽キャたちは、出会った次の日にはもう名前で呼び合うのか?
俺が橋川の手をどけて、橋川の方に顔を向ける。
「なんだよ、何か用か?」
「なんだよ、やけに塩対応じゃねえか。今日も放課後教室でいいんだよな?」
「ああ、そうだけど」
「わかったー」
そうしてひらひらと手を振りながら、針谷率いるリア充軍団のところへ帰っていった。
てか塩対応ってなんだよ?
塩みたいな対応ってこと?
意味わからん。
だったらゴマ対応とか、醤油対応とかもあんの?
調味料でどんな対応すんだよ……。
橋川のどうでもいい一言が、とても気になってしまう。
後で調べとくか……。
俺と橋川のやり取りを横目で見ていたであろう花が、俺に聞こえるぐらいの大きさの咳ばらいをする。
「ずいぶんと橋川さんと仲が良くなったのね……」
まさか昨日あんなこと言ってきた花から話しかけてくるとは思わなかったが、これはいい機会なので話すことにする。
「あぁ、別に友達ってわけではないと思うんだけど、ちょっとな……」
「ふーん。まあ向こうは新しいおもちゃとか、ストレス発散機とかぐらいにしか思ってないと思うけど」
そう思ってるのはあなたですよね……。
二言目には皮肉か暴言しか出てこない花だが、そうさせてしまっているのは俺のせいという負い目もあり、前みたいに言い返せない……。
別に前も言い返せてはいなかったけど。
「まあ俺からお願いしてるからな」
「あら、自分からおもちゃやストレス発散機になりに行ってるの? マゾもここまで来ると病気ね……」
憐れんでいるのか、蔑んでいるのか、どちらとも言えない目で見てくる花だが、別に俺は橋川のおもちゃでもストレス発散機でもない。
確かに今の会話でああ言ったら、普通はそう捉えるよな……。
「いやそういうわけじゃなくてだな……」
「じゃあどういうわけ?」
花は持っていた本をぱたんと閉じて、じーとこちらを見てくる。
だがそれは言えない……。
花を助けるために橋川に協力してもらってるなんて、言えないし言いたくない。
俺はごまかすために、話を無理やり変える。
「てか、昨日あんなこと言ってたのに俺と話していいのか?」
言いながら何でこんなこと言ったのか、自分でも分からなかった。
こんなこと言ったら、『そういえばそうね、じゃあ今から二度と話しかけないで』とか言われるだろ……。
俺はせっかく花との仲を直す機会を自分で潰してしまったと後悔していたが、今更もう遅い。
俺は返って来る言葉にびくびくしていたが、花は無言で黙ったままだった。
そしてさっき閉じた本をまた開きなおすと、続きを読み始めた……。
まさかの無視ですか……。
そして呼鈴が鳴って、生徒が席に座り始めたころ、花も本を閉じて鞄にしまった。
そしてちらっと一瞬だけこちらを向いた後に、
「気が変わったのよ……」
っと一言そう言った。
俺は今、教室のドアの前で立ち止まっている。
昨日花にあんなことを言われてしまったので、少々教室に入りずらい……。
それでも今更帰るわけにもいかないので、俺は渋々教室に入った。
教室に入ると、まだ昨日の体育祭の余韻に浸っているのか、クラスメイト達が打ち上げの話などをしている。
俺には特に関係ないので、いつも通り席に座ろうと自分の席まで行く。
俺の隣の席の花は、いつも通り一人で本を読んでいる。
俺が席に就くと、花はちらりとこちらを見た後に、また本に視線を戻す。
正直気まずいのだが、別に喧嘩したわけじゃないし何か話しかけようかと考えたが、昨日『もう二度と関わるな』と言われた次の日に話しかけるのはどうなのかと思う自分がいて、なかなか話しかけられない……。
とくにすることもないので、携帯を取り出して適当にいじってると、いきなり横から誰かに肩を組まれた。
「よお優太! しけた面してんな」
なれなれしく肩を組んできたのは、昨日初めて喋った橋川だった。
てかもう名前呼びって……これが普通なのか?
世の陽キャたちは、出会った次の日にはもう名前で呼び合うのか?
俺が橋川の手をどけて、橋川の方に顔を向ける。
「なんだよ、何か用か?」
「なんだよ、やけに塩対応じゃねえか。今日も放課後教室でいいんだよな?」
「ああ、そうだけど」
「わかったー」
そうしてひらひらと手を振りながら、針谷率いるリア充軍団のところへ帰っていった。
てか塩対応ってなんだよ?
塩みたいな対応ってこと?
意味わからん。
だったらゴマ対応とか、醤油対応とかもあんの?
調味料でどんな対応すんだよ……。
橋川のどうでもいい一言が、とても気になってしまう。
後で調べとくか……。
俺と橋川のやり取りを横目で見ていたであろう花が、俺に聞こえるぐらいの大きさの咳ばらいをする。
「ずいぶんと橋川さんと仲が良くなったのね……」
まさか昨日あんなこと言ってきた花から話しかけてくるとは思わなかったが、これはいい機会なので話すことにする。
「あぁ、別に友達ってわけではないと思うんだけど、ちょっとな……」
「ふーん。まあ向こうは新しいおもちゃとか、ストレス発散機とかぐらいにしか思ってないと思うけど」
そう思ってるのはあなたですよね……。
二言目には皮肉か暴言しか出てこない花だが、そうさせてしまっているのは俺のせいという負い目もあり、前みたいに言い返せない……。
別に前も言い返せてはいなかったけど。
「まあ俺からお願いしてるからな」
「あら、自分からおもちゃやストレス発散機になりに行ってるの? マゾもここまで来ると病気ね……」
憐れんでいるのか、蔑んでいるのか、どちらとも言えない目で見てくる花だが、別に俺は橋川のおもちゃでもストレス発散機でもない。
確かに今の会話でああ言ったら、普通はそう捉えるよな……。
「いやそういうわけじゃなくてだな……」
「じゃあどういうわけ?」
花は持っていた本をぱたんと閉じて、じーとこちらを見てくる。
だがそれは言えない……。
花を助けるために橋川に協力してもらってるなんて、言えないし言いたくない。
俺はごまかすために、話を無理やり変える。
「てか、昨日あんなこと言ってたのに俺と話していいのか?」
言いながら何でこんなこと言ったのか、自分でも分からなかった。
こんなこと言ったら、『そういえばそうね、じゃあ今から二度と話しかけないで』とか言われるだろ……。
俺はせっかく花との仲を直す機会を自分で潰してしまったと後悔していたが、今更もう遅い。
俺は返って来る言葉にびくびくしていたが、花は無言で黙ったままだった。
そしてさっき閉じた本をまた開きなおすと、続きを読み始めた……。
まさかの無視ですか……。
そして呼鈴が鳴って、生徒が席に座り始めたころ、花も本を閉じて鞄にしまった。
そしてちらっと一瞬だけこちらを向いた後に、
「気が変わったのよ……」
っと一言そう言った。
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