上 下
48 / 70
彼と彼女の過去……

第47話視線……

しおりを挟む
 翌日……。
 あれから徹夜して無理やり宿題を終わらせた。
 おかげさまで寝不足になっている。
 こんなことならもっと早くから宿題をやっておけばよかったと思うが、まあもう終わったことなのでどうでもいい。
 俺は机の上に出しっぱなしにしてあるプリントをかばんに入れて、学校へ行く支度をする。
 いつも通りの時間に花がインターホンを鳴らして家へ来た。

「それじゃ言ってくる」

「行ってらっしゃーい!」

 妹に見送られて家を出る。
 そして玄関先に立っている花とあいさつを交わして登校した。
 学校へ着き、俺たち二年生の教室へ行くための階段を上り、廊下を歩いていると……。

「ねぇ……あれって……」

「でも……」

「そんな人には見えないけど……」

 小さいひそひそ声がそこかしこから聞こえてくる。
 そしてそれは俺たちに向けられているものだと思われる……。
 その証拠に、ちろちろと一瞬だけこっちを見ては目を逸らされている。
 いったい何なんだ……。
 まあ十中八九コイツ関係だと思うけど……。
 隣を歩く花はまるで気にしていないようで、平然と教室へ入っていく。
 俺たちが教室へ入ると、より周囲の視線が強くなった。
 それでも動じていない様子の花に、何があったのかを聞くことにする。

「おい、お前夏休みの間に何かあったのか?」

 そう聞くと花は、

「別に、些細なことよ……」

 そういうと花は、頬杖ほおづえをついて明後日の方向を見ていた。
 何があったんだ……。
 夏休みの間に一体何があったのか気になるが、隣の花は何も話してくれそうにないし、かといって他に聞くような友達もいない……。
 俺も向けられる視線が少し痛いので、右腕をまくらにして寝たふりをする態勢に入る。
 俺が寝ようと右腕に頭を乗せようとしたとき、肩をちょんちょんとつつかれた。
 誰だと思い振り向くと、女子生徒が不安な顔つきで立っていた……。
 え? 何急に……。
 てか誰だっけこの人。
 見たことあるけど忘れたわ……。
 眼鏡をかけた髪型はお下げで、見た目は地味目なその女子生徒は、廊下の方へ歩くとそこから俺を手招きした。
 俺も女子生徒の後を追うように廊下へ出た。
 廊下を出て左に曲がってすぐのところで、その女子生徒は待っていた。

「あの……」

 声をかけてきた女子生徒だが、花と家族以外と話すのは久しぶりなので思うように言葉が出てこない……。

「えっと……。なに、かな?」

「あ、いやそのなんていうか……」

 全く会話が進まない……。
 コミュ障同士の会話ってこんなに酷かったっけ?
 その女子生徒も緊張しているらしく、すぅと深い深呼吸をした後、真っすぐな瞳でこちらを見てくる。

「あの、矢木澤さんのことなんですけど……」

 やっぱりその話か……。
 
「花がどうかしたのか?」

 俺は女子生徒に続けるように促す。

「えーと、矢木澤さんが夏休み中に何があったのか知ってますか?」

 花とは夏休み中に一回もあっていないので、何をしていたか全く知らん……。

「いや、特に知っていることは何もないけど……」

「そうなんですか……。今教室とかの雰囲気おかしいじゃないですか?」

「まあ確かに。それで、その理由を知ってるのか?」

「私も詳しくは知らないんですけど、何でも平野さんが関わっているとか……」

 誰?
 知らない女子生徒に知らない奴の名前を言われても困る……。
 まず俺は目の前のこの女子すら知らないのに、平野なんて奴を知っているはずがない……。
 何、この人の友達?
 俺は困った表情をすると、何かを察した女子生徒が補足する。

「あ、平野さんって人はあそこに座ってる生徒のことで……」

 目の前の女子生徒が指さす方へ目を向けると……。

「あいつ!?」

 思わず声が出た。
 その女子生徒が指さした生徒は、合唱コンで花とめ、花の悪口を言っていた女子生徒だったのだ。
 あいつ平野っていうのか……。
 俺は目の前の女子生徒の方へ向きなおして、本題に入るように言う。

「それで? あの平野ってやつが何か関係してて、俺にどうして欲しいんだ?」

 結局この人は何で俺を呼び出したんだ?
 俺に何をしてもらいたいんだ……。
 
「いや、それは……」

 そういった女子生徒は、言いずらそうして口ごもる……。
 何なのこの人? 
 俺のこと好きなの?
 そんなありえないことを思いつつも、目の前の女子のハッキリしない態度に少しイラついていた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【完】愛していますよ。だから幸せになってくださいね!

さこの
恋愛
「僕の事愛してる?」 「はい、愛しています」 「ごめん。僕は……婚約が決まりそうなんだ、何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」 「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」 「え……?」 「さようなら、どうかお元気で」  愛しているから身を引きます。 *全22話【執筆済み】です( .ˬ.)" ホットランキング入りありがとうございます 2021/09/12 ※頂いた感想欄にはネタバレが含まれていますので、ご覧の際にはお気をつけください! 2021/09/20  

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

婚約をなかったことにしてみたら…

宵闇 月
恋愛
忘れ物を取りに音楽室に行くと婚約者とその義妹が睦み合ってました。 この婚約をなかったことにしてみましょう。 ※ 更新はかなりゆっくりです。

処理中です...