上 下
27 / 70
彼女の心境……

第26話言い表せない感情……

しおりを挟む
「続いて、一学年女子の全員リレーです。選手の方は自分の位置についてください」

 さっきの男子と同じように、女子も並び始める。
 女子が並び終えたのを見計らい、合図を出す先生が前に出てくる。

「それでは位置について……よーい……」

(ドン!)

 銃声と同時に、一走目の女子が走りだして行く……。
 女子の走りを見ていて思うのが、男子より迫力に欠けるということだ……。
 やはり男子と比べてしまうと、女子の走りは遅く感じてしまう……。
 そんな中、矢木澤の出番が回ってこようとしていた。
 昨日は男子にも引けを取らない走りを見せた矢木澤に、クラスメイトの期待の眼差《まなざ》しが向けられていた。
 矢木澤がバトンを貰った時の順位は一位だったので、もっと二位との距離を開けるのかと思ったが……。
 
「おぉっと、赤組対青組、どちらもいい勝負をして互いに一歩もゆずらない!」

 解説役の生徒が、矢木澤と青組の女子の対決を解説する……。
 俺は矢木澤の走りを見て、昨日と様子が違うと感じた……。
 昨日の矢木澤の走りを見る限り、こんな接戦せっせんになんてならないはずだっと思った……。
 結果的に赤組は、男女両方とも一位という結果に終わった……。

「矢木澤さん、手を抜いてても早いね!」

「さすがだね」

 クラスメイト達は、矢木澤の走りをみて、『手を抜いている』といっていたが、本当にそうだろうか……?
 あいつが勝負ごとに手を抜くような奴じゃないので、俺は疑問に思った……。 
 クラスメイトに囲まれている矢木澤は、険しい表情をしていた……。
 やはり何かあるのだろうか……。
 でも俺が矢木澤に何かしてやれるわけでもないので、何もしないでいようと思ったが……。
 何か嫌な感覚におそわれた……。
 言葉に言い表せないが、”もやもや”とした感覚が俺を襲う……。
 そして、その”もやもや”は、どこか悲しい気持ちになる……。
 何故こんな感覚になるのか、皆目かいもく見当もつかない……。
 俺が矢木澤にできることは何もないので、何もしないでほっておく……。
 この選択に何か間違いがあるのだろうか……。
 多分こんな感覚に襲われるということは、この選択は間違いなんだろう……。
 でも……、それでも俺にできることは何もないし、思いつかないので、この嫌な感覚がなくなるまで日陰で休むことにした……。

「次のプログラムは、学年別選抜リレーです。選手の方は、速やかに移動してください」

 結局午後になってしまった……。
 あの後、綱引きに出て、昼飯を食べたが、一向いっこうにこの感覚が消えることはなかった……。
 このもやもやして悲しい感情を、俺はどうすれば取り払えるのかずっと考えていたが、いまだに答えは見つからずにいた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました

宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。 ーーそれではお幸せに。 以前書いていたお話です。 投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと… 十話完結で既に書き終えてます。

亡くなった王太子妃

沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。 侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。 王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。 なぜなら彼女は死んでしまったのだから。

(完結)親友の未亡人がそれほど大事ですか?

青空一夏
恋愛
「お願いだよ。リーズ。わたしはあなただけを愛すると誓う。これほど君を愛しているのはわたしだけだ」  婚約者がいる私に何度も言い寄ってきたジャンはルース伯爵家の4男だ。 私には家族ぐるみでお付き合いしている婚約者エルガー・バロワ様がいる。彼はバロワ侯爵家の三男だ。私の両親はエルガー様をとても気に入っていた。優秀で冷静沈着、理想的なお婿さんになってくれるはずだった。  けれどエルガー様が女性と抱き合っているところを目撃して以来、私はジャンと仲良くなっていき婚約解消を両親にお願いしたのだった。その後、ジャンと結婚したが彼は・・・・・・ ※この世界では女性は爵位が継げない。跡継ぎ娘と結婚しても婿となっただけでは当主にはなれない。婿養子になって始めて当主の立場と爵位継承権や財産相続権が与えられる。西洋の史実には全く基づいておりません。独自の異世界のお話しです。 ※現代的言葉遣いあり。現代的機器や商品など出てくる可能性あり。

完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。

音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。 だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。 そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。 そこには匿われていた美少年が棲んでいて……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

処理中です...