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聖女と死神伯爵 4
しおりを挟む扉に寄り添ってそう言った。名残惜しくても、この扉は開けられない。
ゆっくりと頭を振り向くと、呪いの黒いモヤが漂っている。でも、この部屋だけ異様な雰囲気を感じた。まるで、時が止まっているような、幻の中を漂っている感覚だった。その中で、封魔石に近付いた。
「お師匠様……? そこにいますか?」
『……やっと相まみれたな』
封魔石に話しかけると、薄くて淡い光の中からお師匠様が姿を現した。身体が透けて見えるお師匠様は、間違いなく死んでいる。
「ずっとこの中に?」
『封魔石に力の一部を移しただけだ。私は高名な魔女。だから、力と共に人格も形成されたのだ』
「すごいです……お師匠様」
確かにどんな薬も作るし、私の呪いもお師匠様の薬が抑えてくれていた。
さすがお師匠様だと感心する。その透けた身体を求めるように封魔石に抱き着いた。子供の時にお師匠様に抱き着いていたように……。
「お師匠様……カイゼル様を助けて……」
『よう頑張ったな……だが、私が助けるのはクローディアだけ。カイゼルを救うのはクローディアだけよ』
「私……?」
涙をこぼしながらお師匠様を見上げれば、彼女がにこりと頷いた。
「……意地悪そうな顔をしてますよ?」
『美人だと言いなさい』
そう言うお師匠様の額には青筋が立った。
『さぁ、クローディアの聖女の力であの呪いをこの封魔石に収めなさい』
「どうやって……」
『カイゼルにしたように……。クローディア、時間はない……私も最後の魔法を使おう』
「はい……」
そうして封魔石に、カイゼル様にしたように浄化の術を発動させた。淡く白い光が、私の身体中からあふれ出した。それが、お師匠様の造った封魔石に水が流れ込むように吸い込まれていっている。
聖女は教えられなくても浄化の術が備わり使える。実際に私はカイゼル様に使ったのだ。そして、聖女の力が戻った私にまた浄化の術が使えている。
浄化の術を使うと黒く淀んだこの部屋が、お師匠様の作った封魔石のおかげか、ゆっくりと発光する。発光するいくつもの小さな光は優しくて、溶けていきそうになる。そして、カイゼル様を想いながら意識が途絶えた。
『必ず救ってみせるわ……クローディア。カイゼル』
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