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家族の絆とは 6

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「リリアーネ!」

一心にやって来た馬から颯爽と降りて来たのは、ジークヴァルト様だった。

「骸っ、じゃなくて、ジークヴァルト様?」

思わず、骸骨様と言いそうになるのを慌てて言い直した。ジークヴァルト様は、私に駆け寄ってくる。

「どうされたのです?」
「リリアーネが遅いから迎えに来た」
「そうだったのですか……でも、ちょうどよかったです。今夜は、こちらのグラッドストン伯爵様のお邸に宿泊することになりまして……」
「宿泊? 聞いてない」
「先ほど決まりましたので……」
「帰らないのか?」
「今夜は、どうしても宿泊したいのです。弟が心配で……」

ちらりと親たちの集団に視線を移すと、ジークヴァルト様が眉根にシワを寄せた。

「リリアーネちゃん。こちらの方は?」
「お義母様……この方が私と結婚するジークヴァルト・フォルカス公爵様です」
「公爵様?」
「はい」
「初めまして。ジークヴァルト・フォルカスと申します」

にこりとお義母様に挨拶をするジークヴァルト様は紳士的だ。

「まぁ、とっても素敵だわ。可愛いリリアーネちゃんとお似合いよ」
「それは、どうも。で、こちらの集団はなんだ? どれがリリアーネの身内だ?」

絶対に私の身内とは思ってない。そんな表情で、ジークヴァルト様が目を細めて見据えた。

「私の身内ではありません」

すると、親の一人が笑いを零すと、他の親たちも笑い始めた。

「ハハッ……結婚相手まで騙るとは……グラッドストン伯爵。これは犯罪ですぞ」
「何がだ」
「教会をクビになった聖女だけではなく、公爵を騙る男まで現れたのですぞ!」
「それがどうした。私には、関係のない話だ」
「貴族として、由々しき事態ですぞ。伯爵のあなたならおわかりでしょう! アルディノウス王国にフォルカスという公爵家は存在してません!」

確かに、アルディノウス王国には、フォルカスという公爵家は無い。だって、ジークヴァルト様はフェアフィクス王国の公爵家なのだから。

ジークヴァルト様が彼らを冷たく睨むと、親たちの笑いが少しずつ止まった。

「この無礼な者たちは誰だ? まだ、借金取りがいたのか? そんなはずはなかったが……」
「借金取りではありません。弟の敵です。すぐに追い払いますので、ジークヴァルト様は少しお待ちください」
「我らを借金取りと間違うとはっ……」
「リリアーネは可愛いからな。借金を嵩にかけて、すぐに手に入れようとする輩がいて困っている。お前たちもそうなのか? そうなら、容赦はしない」

グラッドストン伯爵様も怖い顔で迫力があるけど、ジークヴァルト様の雰囲気はもっと恐ろしいものだ。彼の目線一つで、ノキアの同級生たちや親たちは竦んでしまった。

「ジークヴァルト様は、少しだけ下がっていてください」
「ハッキリ言って、邪魔なのだが……リリアーネをすぐに城に連れて帰りたくて、迎えに来たのに……」

ブツブツと呟きながら、私を背後から抱き着いてくるジークヴァルト様は、とりあえず置いておくしかない。

「とにかく、あなたたちが謝罪をしない限り、ノキアには謝罪をさせません。あなた方が私の聖女の力を必要とするなら、まずはノキアに謝罪をしてください」
「リリアーネちゃんにもですわ。私の子供たちを侮辱するような方々とは、交流を深められませんもの」

キリッと顔を引き締めたお義母様と、ハッキリとそう告げた。

「……っグラッドストン伯爵様。謝罪は、あなた様の顔を立てて少し考えさせてもらいます」
「好きにしろ。私はどちらでもかまわん。貴殿たちは、そのまま私の運営している病院へ行け。治療費もいらん」
「わかりました……今回は、それで下がりましょう」

そう言うと、グラッドストン伯爵様は、吹かしていたパイプを消した。
「さぁ、行くぞ」と言って、乗ってきた馬車に、それぞれの子供たちを連れて乗り込もうとする親たち。子供たちは、納得がいかないようで、「もっと、やってよ」と訴えながら乗せられている。親たちを連れてくれば、ノキアをぎゃふんと言わせられたとでも思っていたのだろう。

「それと、そこの男は貴族院へと報告させてもらう。みだりに公爵を騙るなど言語道断だ」
「かまわん。どうせ、アルディノウス王国でフォルカスという公爵家は確認できんと思うが? 探すなら、フェアフィクス王国での貴族で探せ」
「フェアフィクス王国……だと?」
「俺はフェアフィクス王国のフォルカス公爵家の当主だ。王位継承権者で探してもすぐに見つかる。わかれば、すぐに去れ。リリアーネとの時間を邪魔されたくない」

信じてない彼らは、フンッとふんぞり返って馬車に乗り、順番に馬車が走り出した。お義母様は、いつの間にか私たちの後ろに立っていた執事の持っている塩の入った壺に手を突っ込んで塩を盛大に巻き始めた。

「えいっ! リリアーネちゃんも撒くのよ」
「は、はい!」

厄除けになるかなぁと思いながら、背後から私に張り付いているジークヴァルト様を背負ったままで、お義母様と一緒に塩を撒いた。





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