8 / 36
第一章 フェンリル
氷狼陛下の心の声
しおりを挟む
庭で大きな声で叫んでいたフェリクス様は、人目に付くと言って温室の中へと連れていかれた。
元々ここで今日のお茶をする予定だったから、すでに温かいお茶は準備されている。
でも、いつものように穏やかなお茶の時間は始まらなかった。
温室の中のソファーで隣に座っているフェリクス様は目の前のフェンリル様に殺気立っている。
そして……聞こえる。
(なにをやっているんだ。この狼は! フィリ―ネにフェンを紹介しようとしただけが……なぜこんなことに……!)
「す、すみません……私のせいで……」
私の発言にフェリクス様が肩を揺らすほど驚く。そして、「フィリ―ネはなにも悪くない」と肩を抑えて項垂れる。
どうやら、今日のお茶はこのフェンリル様を紹介するためにこの庭の温室に用意したようだった。もしかしたら、アマンダ様にジルをついてこさせないように伝えていたのかもしれない。
『何度も言っているが、私の声が聞こえるようにしただけだ』
フェンリル様は淡々と話す。でも、フェリクス様が怒っているのはそれではない。多分一番怒っているのは……
「フェンの声だけではないだろう! 俺の心の声まで聞こえているじゃないか!!」
(やっぱり……)
「くっ……フィリ―ネの心の声まで聞こえる……!」
フェンリルと話したいと思ったけど、こんなオプションは願ってなかったはず。
なんというか……いたたまれなくなり、顔を両手で覆い私まで項垂れてしまった。
『知らん』
「知らんではすまされんぞ!」
私とフェリクス様の心の声が聞こえることはフェンリル様にはどうでもいいことのようで、ツンと飽きたようにそっぽを向かれてしまった。『知らん』と淡々としているフェンリル様にフェリクス様は、胸ぐらをつかみそうな勢いで怒る。
『……私にはどうでもいいが、理由など一つだろう』
「なんだ! 言ってみろ!」
(怖い……フェリクス様がずっと怒っている……)
フェリクス様は、腕を組んでソファーに深く腰掛ける。ソファーの振動が彼の怒りに連動しているようで怖くてびくりとした。
「怯えなくてもいい。フィリ―ネに怒っているわけではない。問題はこいつだ」
怖い顔のままだが、私の心の声を聞いて慰めるようにため息を吐きながらも優しく頭を撫でられていた。
『……理由は、私の幻獣士がフェリクスだからだろう。私の庇護下にあるフェリクスが私と心の声が通じているように、フィリ―ネにも心の声が聞こえるようにしたから、フェリクスとも心の声が通じてしまっただけだろう。簡単なことだ』
そうなのかと私が納得すると、フェリクス様はサァーと青ざめる。そして、怒りの形相に変わる。
「今すぐ元に戻せ!」
『フィリ―ネと話ができないではないか。何か都合でも悪いのか?』
「問題だらけだ!」
(心の声が駄々洩れなど、都合が悪いとしか思えん!)
心の声など、だれでも隠したいものだ。フェリクス様のいうことはまっとうだ。
「あの……私は大丈夫です。その……元に戻してください」
(話せるようになったフェンリル様と話せなくなるのは少しだけ寂しいけど……フェリクス様の迷惑にはなりたくない)
フェリクス様に迷惑をかけるわけにはいかない、と思っているのに心の声は全く隠せずに、微妙な表情で見下ろす彼にもフェンリル様にも聞こえてしまう。あぁ……と涙目で顔を隠した。
『泣くな、フィリ―ネ。性格の悪い男ですまん』
フェンリル様がぺろりと私の頬を舐める。
「お前が言うな!」
(くっ……)
拳を握りしめてご乱心を抑えているようなフェリクス様にますます悪い気がしてきた。
2人の会話に入れずに心の中で謝ってしまう。
『……仕方ないな……私はどちらでもいいが、少しだけ抑えてやろう。いいか? フィリ―ネ』
「出来るならさっさとやれ!」
(すみません。フェリクス様……)
「フィリ―ネのせいではない」
(あぁ……また聞こえている)
「くっ……」
私が願ったせいだから仕方ない。申し訳なく思っているとまたフェリクス様の声が聞こえる。
(大体、なぜフィリ―ネを呼び捨てにするんだ! 馴れ馴れしい!)
『狭量な男だな。こんなことで取り乱すようでは先が思いやられるな』
「うるさい!」
フェンリル様は、ため息を吐き顔を上げるとまた光る。眩しくて両手で顔を覆うとフェリクス様が私を庇うようにしていた。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……」
『目がくらんだだけだぞ』
「だ ま れ!」
フェリクス様がフゥーと一息付く。フェンリル様は、私の隣に来て『フィリ―ネ。どうだ?』と聞いてくる。
「聞こえます……」
『フェリクスのはどうだ?』
彼をじっと見ると、複雑そうな顔をしている。
「何か言ってますか? 今は聞こえません……」
フェリクス様は、その言葉にホッと胸を撫でおろした。
「これでもう聞こえないんだな?」
『全く……というわけではないぞ。不意に聞こえることもある。聞かれたくないなら気を付けろ。私の力は強いんだ』
「なら、もっとうまくやれ!」
怒ったままのフェリクス様。フェンリル様は私の側で喉を鳴らしている。その喉を撫でるとさらにゴロゴロとすり寄ってきた。
(可愛い……)
「でも、フェンリル様とお話ができるなんて素敵ですね」
『フェンだ。名前で呼びなさい。フィリ―ネ』
「はい。フェン様」
抱き寄せるとモフモフが心地よくてさらにギュッと抱きしめた。
「フェン。馴れ馴れしいぞ」
『私をフィリ―ネに紹介すると言ったのはお前だ』
「くっ……なら、俺は今日からリーネと呼ぶ」
「リーネ……?」
「フィリ―ネだから、リーネでいいだろう」
一体なんの対抗意識なのだろうか。わからない。わからないけど……
「フェリクス様だけの特別ですね」
「そうだな」
足を組みツンとソファーの肘掛けに肘をつくフェリクス様にほんの少しだけ笑みが零れた。
元々ここで今日のお茶をする予定だったから、すでに温かいお茶は準備されている。
でも、いつものように穏やかなお茶の時間は始まらなかった。
温室の中のソファーで隣に座っているフェリクス様は目の前のフェンリル様に殺気立っている。
そして……聞こえる。
(なにをやっているんだ。この狼は! フィリ―ネにフェンを紹介しようとしただけが……なぜこんなことに……!)
「す、すみません……私のせいで……」
私の発言にフェリクス様が肩を揺らすほど驚く。そして、「フィリ―ネはなにも悪くない」と肩を抑えて項垂れる。
どうやら、今日のお茶はこのフェンリル様を紹介するためにこの庭の温室に用意したようだった。もしかしたら、アマンダ様にジルをついてこさせないように伝えていたのかもしれない。
『何度も言っているが、私の声が聞こえるようにしただけだ』
フェンリル様は淡々と話す。でも、フェリクス様が怒っているのはそれではない。多分一番怒っているのは……
「フェンの声だけではないだろう! 俺の心の声まで聞こえているじゃないか!!」
(やっぱり……)
「くっ……フィリ―ネの心の声まで聞こえる……!」
フェンリルと話したいと思ったけど、こんなオプションは願ってなかったはず。
なんというか……いたたまれなくなり、顔を両手で覆い私まで項垂れてしまった。
『知らん』
「知らんではすまされんぞ!」
私とフェリクス様の心の声が聞こえることはフェンリル様にはどうでもいいことのようで、ツンと飽きたようにそっぽを向かれてしまった。『知らん』と淡々としているフェンリル様にフェリクス様は、胸ぐらをつかみそうな勢いで怒る。
『……私にはどうでもいいが、理由など一つだろう』
「なんだ! 言ってみろ!」
(怖い……フェリクス様がずっと怒っている……)
フェリクス様は、腕を組んでソファーに深く腰掛ける。ソファーの振動が彼の怒りに連動しているようで怖くてびくりとした。
「怯えなくてもいい。フィリ―ネに怒っているわけではない。問題はこいつだ」
怖い顔のままだが、私の心の声を聞いて慰めるようにため息を吐きながらも優しく頭を撫でられていた。
『……理由は、私の幻獣士がフェリクスだからだろう。私の庇護下にあるフェリクスが私と心の声が通じているように、フィリ―ネにも心の声が聞こえるようにしたから、フェリクスとも心の声が通じてしまっただけだろう。簡単なことだ』
そうなのかと私が納得すると、フェリクス様はサァーと青ざめる。そして、怒りの形相に変わる。
「今すぐ元に戻せ!」
『フィリ―ネと話ができないではないか。何か都合でも悪いのか?』
「問題だらけだ!」
(心の声が駄々洩れなど、都合が悪いとしか思えん!)
心の声など、だれでも隠したいものだ。フェリクス様のいうことはまっとうだ。
「あの……私は大丈夫です。その……元に戻してください」
(話せるようになったフェンリル様と話せなくなるのは少しだけ寂しいけど……フェリクス様の迷惑にはなりたくない)
フェリクス様に迷惑をかけるわけにはいかない、と思っているのに心の声は全く隠せずに、微妙な表情で見下ろす彼にもフェンリル様にも聞こえてしまう。あぁ……と涙目で顔を隠した。
『泣くな、フィリ―ネ。性格の悪い男ですまん』
フェンリル様がぺろりと私の頬を舐める。
「お前が言うな!」
(くっ……)
拳を握りしめてご乱心を抑えているようなフェリクス様にますます悪い気がしてきた。
2人の会話に入れずに心の中で謝ってしまう。
『……仕方ないな……私はどちらでもいいが、少しだけ抑えてやろう。いいか? フィリ―ネ』
「出来るならさっさとやれ!」
(すみません。フェリクス様……)
「フィリ―ネのせいではない」
(あぁ……また聞こえている)
「くっ……」
私が願ったせいだから仕方ない。申し訳なく思っているとまたフェリクス様の声が聞こえる。
(大体、なぜフィリ―ネを呼び捨てにするんだ! 馴れ馴れしい!)
『狭量な男だな。こんなことで取り乱すようでは先が思いやられるな』
「うるさい!」
フェンリル様は、ため息を吐き顔を上げるとまた光る。眩しくて両手で顔を覆うとフェリクス様が私を庇うようにしていた。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫です……」
『目がくらんだだけだぞ』
「だ ま れ!」
フェリクス様がフゥーと一息付く。フェンリル様は、私の隣に来て『フィリ―ネ。どうだ?』と聞いてくる。
「聞こえます……」
『フェリクスのはどうだ?』
彼をじっと見ると、複雑そうな顔をしている。
「何か言ってますか? 今は聞こえません……」
フェリクス様は、その言葉にホッと胸を撫でおろした。
「これでもう聞こえないんだな?」
『全く……というわけではないぞ。不意に聞こえることもある。聞かれたくないなら気を付けろ。私の力は強いんだ』
「なら、もっとうまくやれ!」
怒ったままのフェリクス様。フェンリル様は私の側で喉を鳴らしている。その喉を撫でるとさらにゴロゴロとすり寄ってきた。
(可愛い……)
「でも、フェンリル様とお話ができるなんて素敵ですね」
『フェンだ。名前で呼びなさい。フィリ―ネ』
「はい。フェン様」
抱き寄せるとモフモフが心地よくてさらにギュッと抱きしめた。
「フェン。馴れ馴れしいぞ」
『私をフィリ―ネに紹介すると言ったのはお前だ』
「くっ……なら、俺は今日からリーネと呼ぶ」
「リーネ……?」
「フィリ―ネだから、リーネでいいだろう」
一体なんの対抗意識なのだろうか。わからない。わからないけど……
「フェリクス様だけの特別ですね」
「そうだな」
足を組みツンとソファーの肘掛けに肘をつくフェリクス様にほんの少しだけ笑みが零れた。
18
お気に入りに追加
857
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたい公爵令息は、子供のふりをしているけれど心の声はとても優しい人でした
三月叶姫
恋愛
北の辺境伯の娘、レイナは婚約者であるヴィンセント公爵令息と、王宮で開かれる建国記念パーティーへ出席することになっている。
その為に王都までやってきたレイナの前で、ヴィンセントはさっそく派手に転げてみせた。その姿はよく転ぶ幼い子供そのもので。
彼は二年前、不慮の事故により子供返りしてしまったのだ――というのは本人の自作自演。
なぜかヴィンセントの心の声が聞こえるレイナは、彼が子供を演じている事を知ってしまう。
そして彼が重度の女嫌いで、レイナの方から婚約破棄させようと目論んでいる事も。
必死に情けない姿を見せつけてくる彼の心の声は意外と優しく、そんな彼にレイナは少しずつ惹かれていった。
だが、王宮のパーティーは案の定、予想外の展開の連続で……?
※設定緩めです
※他投稿サイトにも掲載しております
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
果たされなかった約束
家紋武範
恋愛
子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。
しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。
このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。
怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。
※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】公子が好きなのは王子ですよね? 私は女ですよ?
ユユ
恋愛
公爵令息と親友の王子様の秘密の恋…
“貴公子の秘め事”という小説の世界に
生まれた私はモブのはずだった。
なのに何故…
赤ちゃんのときに小説の令息とは違う令息と
婚約した。
それが“貴公子の秘め事”の主人公だった。
転生はしたものの、小説の中だと気付いたのも遅かった?
とにかく秘密はバラしません!
好きになったりしません!私は石コロです!
お願いです 私を解放してください!
* 作り話です
* 短いです
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
会うたびに、貴方が嫌いになる
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。
アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる