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第二の殺人事件
しおりを挟む「アイリスをすぐに呼んで!」
「それが……アイリス様は、居所が不明でして……」
私付きの侍女は、たった一人を残して、誰にも私に近づけなくなった。陛下がブラッドの甘言に唆されたのだろうか。腹立たしい。何もかもが苛ついている。
でも、今はそれどころではない。
「アイリスがいない!?」
「ウィンシュルト公爵様も探しているようで……すぐに帰って来るとは思いますが……」
今いなければどうしようもない。今まで通り、アイリスにクレメンスへの伝言を頼もうとしたが、それができない。クレメンスが、私とのやり取りを陛下やブラッドに話せば、私は終わりだ。アイリスにも、再度口止めをしなければならないのに……。何度も密かな愛人として不義密通していたのだ。こんな状況でそんな話を陛下の耳に入れるのは不味い。
私は、陛下に謹慎を言い渡されている。でも、クレメンスは違う。あの状況でブラッドが連れて行ったのだ。とても謹慎で済ませるわけがない。
クレメンスは、王妃との不義密通で捕らえられたのだ。かなり不味い状況だ。もし、今回のことだけでなく、クレメンスが尋問で、常日頃から逢引きしていたことをバラしたら……。
「王妃様……」
眉間にシワを寄せる私を見て、恐ろしいものでも見る様に怯える侍女。一番気が弱くて尋問されたら、すぐに吐いてしまいそうな侍女だけを残した。私が誰かを動かせば、すぐにわかるようにだ。
この侍女では役に立たない。私の言いなりだったアイリスもいない。
そう思えば、私が密かに行くしかなかった。陛下からの謹慎中を言い渡された私に騎士団が厳重な警備を敷くわけがない。ましてや、他の囚人と同じ騎士団の牢屋にクレメンスが捕えられているわけもない。牢で私との不義密通を離されては困るからだ。
そう思えば、クレメンスが捕えられているのは、ひと気のない牢屋……騎士団の牢屋の一つ、騎士団の塔にいるはず。そうして、騎士団の牢屋の一つである塔にたどり着いた。
賄賂を渡して、密かに牢屋へとたどり着いた。牢屋の見張りは、騎士二人。その二人にお金を握らせて塔の牢屋へと向かった。牢屋は地下にあるために、階段を降りていく。
謹慎が終われば、すぐに牢屋から出して、クレメンスは王都から追い出すしかない。必要なら、そのあと始末すればいいだけ……そう思いながら、クレメンスのいる牢屋を見た。
「クレメンス……ひっ……!!」
返事のないクレメンスに近づけば、牢屋の中で倒れているクレメンスにゾッとした。驚愕して、足が後ろに下がると、ガタンと後ろにあった木の机にぶつかった。
「あ、あ……キャアァァ……!!」
腰が抜けた。牢の中にいるクレメンスは、胸から血を滲ませて物言わぬ死体になっていた。
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