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白いゼラニウム
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__数日後の夜。
「リラ。入ってもいいだろうか?」
「ジェイド様?」
王都の騎士団に行っていたジェイド様が帰宅すれば、真っ直ぐに私の元へと来た。
「お帰りになったんですね。言って下さればお迎えいたしましたのに……」
部屋でリーガの持って来ていた花をそっと籠の中へとしまった。そして、ジェイド様を迎え入れた。
「すぐにリラに会いたくて、急いで帰って来た」
「そうだったんですか……でも、ここにいますから心配しなくても大丈夫ですよ?」
「嬉しいよ。邸に帰るのが、本当に楽しみなんだ」
嬉しそうに近づいてくるジェイド様。
「やっぱり、お迎えすればよかったですね。今度は前もって言ってください」
「リラのお迎えには、憧れるものはあるな」
まるで愛の告白をされている気分になる。どう返事をしていいのか悩む。ジッとジェイド様を見上げれば、目尻を細めて私を愛おしそうに見るジェイド様と目が合う。
「あの……おかえりなさいませ。ジェイド様」
「ただいま。リラ」
嬉しそうにジェイド様が近づいてくると、彼が机の上にある花に眼をやった。
「ポプリ?」
「はい。毎日籠一つですが、リーガが持って来てくれるんです」
「ああ、あの子か……花が好きなら、明日は庭園を一緒に歩かないか? そこでお茶をしよう」
「はい。そうですわ、ジェイド様の分もできたんです。まだ、下手くそですが、どうぞ。安眠出来る香りをつけてみました」
「俺に?」
「はい。ジェイド様はお忙しいようですから……これで、ゆっくり眠れると良いです」
ジェイド様に、ガラスの瓶に白いゼラニウムの花びらのポプリを渡すと、満足気に受け取ってくれる。
「嬉しいな。リラから、手作りを貰えるなんて……」
「そんな……何もできずにすみません」
「気にしないで欲しい。リラはいてくれるだけでいいんだ。君は、みんなが憧れた女性だから、俺は鼻が高い……みんなにうらやましがられているよ」
「そんなことないですよ。きっと、フィラン殿下の婚約者だったから、珍しがられただけです。殿下と婚約破棄をする令嬢なんていませんから……」
「そんなことはない。俺は幸運だ。君と結婚できるのだからね」
私との結婚を夢見てるジェイド様に少しだけ微笑んだ。
「他にも、何か欲しい香りがあれば言ってください」
「こちらのは、どうするのだ?」
「すべてリーガに渡します。リーガが売ってくれるので……」
毎日リーガが花を籠いっぱいに持って来てくれて、前日に受け取り空っぽになった籠と交換する。そして、花をドライフラワーにして、やっとポプリの第一弾が出来た。
明日から、街で花と一緒にポプリもリーガが売ってくれる。その売り上げで、リーガの花を買い、私がポプリを作る。そうやって、私とリーガはお金を作るのだ。
おかげで、邸にいても私は仕事ができる。
「自分で仕事を得るのは凄いな」
「今はこれしかできませんから……私は、外にも出られませんし……」
「そうだが……無理して仕事をする必要はないのではないか? お金なら、いくらでも使っていいし……花が欲しければ、すべて俺が買おう。フェアラート公爵邸には、庭園もあるし」
「でも、仕事が楽しいんです。リーガも、仕事が増えて喜んでいますし……」
「そうか……でも、明日は一緒に過ごしてくれるか? 我が家の自慢の庭園をぜひ見せたい」
「はい。もちろんです」
植物は好きだ。だから、ポプリを作るのも意外と楽しいのだろう。ジェイド様は、私を愛おしそうに見つめている。緊張する。思わず、我慢できずに顔を逸らしてしまった。
「リラ?」
「すみません。緊張して……」
私の仕草にどきりとしたのか、ジェイド様が上ずった声音を一瞬出した。
「そ、そうか……では、俺はそろそろ下ろう。明日が楽しみだ」
こくんと頷いた。
「リラ。ポプリをありがとう。今夜はいい夢が見られそうだ」
「はい。ゆっくりと休んでください」
そう言って、ジェイド様が部屋を出ていった。
「リラ。入ってもいいだろうか?」
「ジェイド様?」
王都の騎士団に行っていたジェイド様が帰宅すれば、真っ直ぐに私の元へと来た。
「お帰りになったんですね。言って下さればお迎えいたしましたのに……」
部屋でリーガの持って来ていた花をそっと籠の中へとしまった。そして、ジェイド様を迎え入れた。
「すぐにリラに会いたくて、急いで帰って来た」
「そうだったんですか……でも、ここにいますから心配しなくても大丈夫ですよ?」
「嬉しいよ。邸に帰るのが、本当に楽しみなんだ」
嬉しそうに近づいてくるジェイド様。
「やっぱり、お迎えすればよかったですね。今度は前もって言ってください」
「リラのお迎えには、憧れるものはあるな」
まるで愛の告白をされている気分になる。どう返事をしていいのか悩む。ジッとジェイド様を見上げれば、目尻を細めて私を愛おしそうに見るジェイド様と目が合う。
「あの……おかえりなさいませ。ジェイド様」
「ただいま。リラ」
嬉しそうにジェイド様が近づいてくると、彼が机の上にある花に眼をやった。
「ポプリ?」
「はい。毎日籠一つですが、リーガが持って来てくれるんです」
「ああ、あの子か……花が好きなら、明日は庭園を一緒に歩かないか? そこでお茶をしよう」
「はい。そうですわ、ジェイド様の分もできたんです。まだ、下手くそですが、どうぞ。安眠出来る香りをつけてみました」
「俺に?」
「はい。ジェイド様はお忙しいようですから……これで、ゆっくり眠れると良いです」
ジェイド様に、ガラスの瓶に白いゼラニウムの花びらのポプリを渡すと、満足気に受け取ってくれる。
「嬉しいな。リラから、手作りを貰えるなんて……」
「そんな……何もできずにすみません」
「気にしないで欲しい。リラはいてくれるだけでいいんだ。君は、みんなが憧れた女性だから、俺は鼻が高い……みんなにうらやましがられているよ」
「そんなことないですよ。きっと、フィラン殿下の婚約者だったから、珍しがられただけです。殿下と婚約破棄をする令嬢なんていませんから……」
「そんなことはない。俺は幸運だ。君と結婚できるのだからね」
私との結婚を夢見てるジェイド様に少しだけ微笑んだ。
「他にも、何か欲しい香りがあれば言ってください」
「こちらのは、どうするのだ?」
「すべてリーガに渡します。リーガが売ってくれるので……」
毎日リーガが花を籠いっぱいに持って来てくれて、前日に受け取り空っぽになった籠と交換する。そして、花をドライフラワーにして、やっとポプリの第一弾が出来た。
明日から、街で花と一緒にポプリもリーガが売ってくれる。その売り上げで、リーガの花を買い、私がポプリを作る。そうやって、私とリーガはお金を作るのだ。
おかげで、邸にいても私は仕事ができる。
「自分で仕事を得るのは凄いな」
「今はこれしかできませんから……私は、外にも出られませんし……」
「そうだが……無理して仕事をする必要はないのではないか? お金なら、いくらでも使っていいし……花が欲しければ、すべて俺が買おう。フェアラート公爵邸には、庭園もあるし」
「でも、仕事が楽しいんです。リーガも、仕事が増えて喜んでいますし……」
「そうか……でも、明日は一緒に過ごしてくれるか? 我が家の自慢の庭園をぜひ見せたい」
「はい。もちろんです」
植物は好きだ。だから、ポプリを作るのも意外と楽しいのだろう。ジェイド様は、私を愛おしそうに見つめている。緊張する。思わず、我慢できずに顔を逸らしてしまった。
「リラ?」
「すみません。緊張して……」
私の仕草にどきりとしたのか、ジェイド様が上ずった声音を一瞬出した。
「そ、そうか……では、俺はそろそろ下ろう。明日が楽しみだ」
こくんと頷いた。
「リラ。ポプリをありがとう。今夜はいい夢が見られそうだ」
「はい。ゆっくりと休んでください」
そう言って、ジェイド様が部屋を出ていった。
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