上 下
62 / 148
第一章 ブラッドフォード編

弾けとんだ宝石(アリシア)

しおりを挟む
私は恥をかかされた。
気のあるふりをして、私に恥をかかしたのだ。
一緒にいた、あの顔の見えなかった女が婚約者か!
あいつがいるせいで!

イライラは募り、黒い感情に追い討ちをかけるように、後日、お父様は破産した。

フォーレ伯爵のワイナリーが閉鎖したのだ。
投資の分も少ししか戻らず、手元に来る前にブラッドフォード公爵が回収していた。
そして、私達の屋敷もブラッドフォード公爵のものになる。

税金も払えなくなり、お父様は爵位も返上するはめになる。
お父様は騙された!と机をバンバンと叩きつけ、怒りに満ちている。

このまま泣き寝入りなんて嫌だ!
貴族じゃ無くなるなんて嫌だ!
せめて、仕返しぐらいはしないと気がすまない!

かといって、ブラッドフォード公爵に会うのは怖い!

そして考えた。
…確か、ブラッドフォード公爵の婚約者はアニスの友人だった。
私はアニスに会い、ブラッドフォード公爵の婚約者のことを聞いた。
そして、何も知らないアニスはあっさり教えてくれた。
私が何をしようとしているかアニスは知りもしない。
私はアニスの弱みも握っているから、お金も都合してもらった。

アニスの弱みは、平民である庭師と恋仲だということ。
以前、私はアニスの邸に遊びに来た時に偶然見かけたのだ。
庭師とこっそり抱き合っているところを。

そのままアニスからお金を受け取るが、イライラしていたせいか、アニスの父親にサクッとアニスと庭師が付き合っていると教えて上げた。

しかし、少しでも、スカッとするかと思ったが全く変わらない。
だから、そのまま街外れの魔法使いの所にいき、呪いの仕方を教えてもらった。
勿論、お金はアニスから受け取ったお金だ。
そして、一番安い魔水晶のついている杖を買った。

私は、ブラッドフォード公爵の婚約者がいなくなればブラッドフォード公爵にダメージも与えられると思った。

それに、ブラッドフォード公爵のあの闇が怖くて直接本人には何もしたくない。
だから、あのブラッドフォード公爵にただ守られている婚約者に呪いをかける。

そう決意し、実行すると信じられないことが起こった。

呪いをかけると、急にあのネックレスが弾けとんだのだ。
そして、目の前にはうっすら小さい黒っぽいモヤが出現した。
そして、その頼りない黒っぽいモヤが私を目掛けて飛び込むように私を襲った。

「キャアアッ!?」

私は、座っていた椅子から転げ落ちるように椅子から倒れた。
私の悲鳴とガタタッ!!という大きな音でお父様が部屋に飛び込んで来た。

「アリシア!?どうしたんだ!?ッ!!アリシア!?」

椅子から倒れ、床に両膝をついている私は、顔の違和感を片手で抑えお父様を見上げた。

「お、お父様…っ、私っ…」
「アリシア!?その顔はなんだ!?…っこの有り様はっ!?」

お父様は私の顔を見て恐怖した顔で後退りした。

私の顔はあの黒っぽいモヤが張り付いたように痣ができ醜くなったのだ。
しかも、体が重くてだるい。

何が起きたのかわからない。
私はブラッドフォード公爵の婚約者リディア・ウォードという女に呪いをかけようとしただけ。
それが何故こんなことに。
弾け飛び、床に散らばったあのネックレスの宝石が目の前にあり、まさかこのネックレスが呪いの魔道具か!と脳裏をかすった。

「お父様!急にあのネックレスが弾け飛んで、顔がこんなことに…!」

あの安い魔水晶のついている杖も、すでに魔水晶が割れている。
あの杖を見てお父様は怪訝な顔をしている。
私が呪いを使ったことに気づいたのだろうか。
でも、今は私の顔の方が大事でしょ!

「お父様!私!ブラッドフォード公爵に騙されたのよ!あのネックレスに呪いがかかっていたんだわ!」
「すぐに訴えてやる!呪いのネックレスを集めておけ!ブラッドフォードの所に行くぞ!」

すぐに、呪いのネックレスの宝石を集め、その隙に私が呪いに使った杖は本棚の後ろに隠した。

私は、マントを目深く被り顔が人に見えないようにして、息巻くお父様と城の魔法騎士団に訴えに行った。


しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ
恋愛
セレンは15歳の時に16歳のスティーブ・ロセスと結婚した。いわゆる政略的な結婚で、幼馴染でいつも喧嘩ばかりの二人は歩み寄りもなく一年で離縁した。 その一年間をなかったものにするため、お互い全く別のところへ移り住んだ。 スティーブはアルク国に留学してしまった。 セレンは国の文官の試験を受けて働くことになった。配属は何故か騎士団の事務員。 本人は全く気がついていないが騎士団員の間では 『可愛い子兎』と呼ばれ、何かと理由をつけては事務室にみんな足を運ぶこととなる。 そんな騎士団に入隊してきたのが、スティーブ。 お互い結婚していたことはなかったことにしようと、話すこともなく目も合わせないで過ごした。 本当はお互い好き合っているのに素直になれない二人。 そして、少しずつお互いの誤解が解けてもう一度…… 始めの数話は幼い頃の出会い。 そして結婚1年間の話。 再会と続きます。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

侯爵様に婚約破棄されたのですが、どうやら私と王太子が幼馴染だったことは知らなかったようですね?

ルイス
恋愛
オルカスト王国の伯爵令嬢であるレオーネは、侯爵閣下であるビクティムに婚約破棄を言い渡された。 信頼していたビクティムに裏切られたレオーネは悲しみに暮れる……。 しかも、破棄理由が他国の王女との婚約だから猶更だ。 だが、ビクティムは知らなかった……レオーネは自国の第一王子殿下と幼馴染の関係にあることを。 レオーネの幼馴染であるフューリ王太子殿下は、彼女の婚約破棄を知り怒りに打ち震えた。 「さて……レオーネを悲しませた罪、どのように償ってもらおうか」 ビクティム侯爵閣下はとてつもない虎の尾を踏んでしまっていたのだった……。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

処理中です...