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冷たい旦那様が離してくれない 5
しおりを挟むこの人は、一体いつ本邸に帰るんだろうか……結婚の話をした時は、一緒に住むことだと言っていたけど、一緒に洗濯をするなど一言も言ってない。
それなのに、いったいなぜウォルト様が、私が洗ったシーツを広げて干しているんだろうか?
助かるのですよ? 私は背が低いし、ウォルト様は高身長だ。シーツを干すのも軽々としているのです。
これも夫婦の共同作業ですか?
そんなことを言ったら、また睨まれそうだ。
自分でも、バカなことを思い浮かべるなぁと、ちょっと思ってしまう。
「ティアナ。本邸には、今夜から移ろうと思う。荷物は……明日にでも運ばせるか? 確認が必要ないなら、今日にでもメイドたちに運ばせるが……」
「今夜から? 私も!?」
「一緒に住むことを結婚の決まりごとにしたはずだが?」
そう決めたのは覚えている。でも、一緒に住む理由がないのです。
それに本邸には、アリス様がいる。
「……ティアナ」
「はい」
誰かにウォルト様を引き取ってもらいたいと腕を組んで考えていると、ウォルト様が腰をかがめて話しかけてきた。
「……もしかして、本邸に行きたくないのか?」
本邸で、ウォールヘイト伯爵家の私が歓迎されるとは思えない。ウォルト様もわかっているはずなのに……ウォールヘイト伯爵家とセルシスフィート伯爵家は犬猿の仲だと。
「別邸も気に入っているんです……せっかく準備してくださってますし……」
「そうなのか……」
不意に口に手を当てて横を向いてしまったウォルト様の意味がわからなくて、首を傾げてしまう。
「あの……ウォルト様。私はここで過ごしますので、どうぞおかまいなく、ウォルト様は本邸でアリス様とお過ごしください」
「……一人の方が、都合がいいのか?」
「そ、そうですね」
だから、睨まないで欲しい。今、何か不味いことでも言いましたかね。
「本邸には、一緒に住んでもらう。そう決めたはずだ」
「どうしてもですか?」
「どうしてもだ」
絶対に引いてくれない雰囲気を醸し出されている。怖いのですよ。
外見はお義父様似なのに、性格はロザムンド様に似ている気がする。何かわからない威圧感がそっくりだ。しかも、ウォルト様の方が迫力があって怖い。
「では、行くぞ。そろそろ昼食も準備されているはずだ」
「はい……」
そう言って、ウォルト様が手を差し出してきて、その手を取り立ち上がった。
「あの、ウォルト様」
「なんだ?」
「シーツを干してくださってありがとうございます……」
「次からは、メイドにさせろ。ティアナがすることではない」
「はい」
でも、今日だけは何としても自分でしたかった。あの情交の後がはっきりと表れていたのだ。
ウォルト様を見上げると、本邸へと向かって歩いている。そのあとに続いて歩いていた。
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