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犬猿の仲の政略結婚 4
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あれから、1年以上経った。
私は、結婚をしていたために変わらずにセルシスフィート伯爵邸におり、庭にある別邸で一人暮らしを堪能中だった。
ウォルト様は隣国から、いまだに帰られない。腕が良くて、未だに隣国の魔物討伐の任についているらしい。
それくらい、このルギウィス国の竜騎士団は有名なのだ。他国から要請があれば、竜騎士団は派遣されて、多額の報奨を得ている。そのおかげか、ルギウィス国は平和だった。
そして、三年を待たずにセルシスフィート伯爵様が他界した。
幾度となく行く愛人との旅行中に馬車の事故に合い、二人は仲良く他界してしまったのだ。
残されたセルシスフィート伯爵夫人は、二人の葬儀をあげて、私も微弱ながらも手伝った。
会場では愛人の娘であるアリス様が「お父様、お母様」と泣きわめいており、それをセルシスフィート伯爵夫人が冷ややかな視線で見ていたことが印象的だった。
葬儀は忙しいとは言っても愛人との事故のため、醜聞を避けるために、ひっそりとした式だった。しかも、突然の事故だったためにウォルト様は間に合わなかった。
この国にいるのではないから、仕方ない。
帰ってこないウォルト様よりも、私には涙一つ流さなかったセルシスフィート伯爵夫人の方が心配で、お菓子を持って様子を伺いにいくと、彼女は庭を散策中だった。
そして、案の定不機嫌な様子だった。
「ご機嫌はいかがですか? セルシスフィート伯爵夫人」
「ティアナ……私は元気ですよ」
そう言って、セルシスフィート伯爵夫人は、ちらりと本邸を見上げた。
「あの……少しですが、お菓子を焼いてきました。いただきませんか?」
「……パイ生地で焼いたクッキーかしら?」
「はい。以前セルシスフィート伯爵夫人が、良かったと言ってくださったパイ生地で作ったクッキーです」
そう言って、籠で持って来たパイ生地のクッキーを出すと、彼女が一つ食べてくれた。
セルシスフィート伯爵邸に来てから、何度かお茶の時間に差し入れだと言ってお菓子を持って行ったことがある。それを夫人が好んで食べてくれていたと思う。自信がないのは、この威圧感のある表情で、感情を表に出さないセルシスフィート伯爵夫人のせいだ。
「……セルシスフィート伯爵夫人。もしお疲れなら、少しお休みなさっては……」
「その間に、セルシスフィート伯爵家の実権でも握るおつもりかしら?」
「そんなことはしません」
人の作ったクッキーの二枚目を取りながら、恐ろしいことを言わないで欲しい。
私にセルシスフィート伯爵家を治めさせるつもりなどないくせに。
「でも、休暇は必要です」
「私の身内は、すでにすべて他界しているから、頼る身内はないのですよ」
「私と一緒ですね。でしたら、ウォールヘイト伯爵邸に行きますか? 今は、誰もいないですし、ゆっくりと休めますよ。少し古いですけど……時々掃除に帰っていますから、いつでも使えます。もちろん使用人もご一緒にどうぞ」
「ティアナ……そろそろ、私のことをセルシスフィート伯爵夫人ではなく、ロザムンドと呼びなさい」
「ロザムンド様ですか? でも、私は……」
「今は義理とはいえ、親子でしょう?」
「そうですね……では、ロザムンド様とお呼びします」
「そうしなさい」
そう言って、クッキーの二枚目を食べ終えたロザムンド様が、「では、失礼」といって去っていった。
私は、結婚をしていたために変わらずにセルシスフィート伯爵邸におり、庭にある別邸で一人暮らしを堪能中だった。
ウォルト様は隣国から、いまだに帰られない。腕が良くて、未だに隣国の魔物討伐の任についているらしい。
それくらい、このルギウィス国の竜騎士団は有名なのだ。他国から要請があれば、竜騎士団は派遣されて、多額の報奨を得ている。そのおかげか、ルギウィス国は平和だった。
そして、三年を待たずにセルシスフィート伯爵様が他界した。
幾度となく行く愛人との旅行中に馬車の事故に合い、二人は仲良く他界してしまったのだ。
残されたセルシスフィート伯爵夫人は、二人の葬儀をあげて、私も微弱ながらも手伝った。
会場では愛人の娘であるアリス様が「お父様、お母様」と泣きわめいており、それをセルシスフィート伯爵夫人が冷ややかな視線で見ていたことが印象的だった。
葬儀は忙しいとは言っても愛人との事故のため、醜聞を避けるために、ひっそりとした式だった。しかも、突然の事故だったためにウォルト様は間に合わなかった。
この国にいるのではないから、仕方ない。
帰ってこないウォルト様よりも、私には涙一つ流さなかったセルシスフィート伯爵夫人の方が心配で、お菓子を持って様子を伺いにいくと、彼女は庭を散策中だった。
そして、案の定不機嫌な様子だった。
「ご機嫌はいかがですか? セルシスフィート伯爵夫人」
「ティアナ……私は元気ですよ」
そう言って、セルシスフィート伯爵夫人は、ちらりと本邸を見上げた。
「あの……少しですが、お菓子を焼いてきました。いただきませんか?」
「……パイ生地で焼いたクッキーかしら?」
「はい。以前セルシスフィート伯爵夫人が、良かったと言ってくださったパイ生地で作ったクッキーです」
そう言って、籠で持って来たパイ生地のクッキーを出すと、彼女が一つ食べてくれた。
セルシスフィート伯爵邸に来てから、何度かお茶の時間に差し入れだと言ってお菓子を持って行ったことがある。それを夫人が好んで食べてくれていたと思う。自信がないのは、この威圧感のある表情で、感情を表に出さないセルシスフィート伯爵夫人のせいだ。
「……セルシスフィート伯爵夫人。もしお疲れなら、少しお休みなさっては……」
「その間に、セルシスフィート伯爵家の実権でも握るおつもりかしら?」
「そんなことはしません」
人の作ったクッキーの二枚目を取りながら、恐ろしいことを言わないで欲しい。
私にセルシスフィート伯爵家を治めさせるつもりなどないくせに。
「でも、休暇は必要です」
「私の身内は、すでにすべて他界しているから、頼る身内はないのですよ」
「私と一緒ですね。でしたら、ウォールヘイト伯爵邸に行きますか? 今は、誰もいないですし、ゆっくりと休めますよ。少し古いですけど……時々掃除に帰っていますから、いつでも使えます。もちろん使用人もご一緒にどうぞ」
「ティアナ……そろそろ、私のことをセルシスフィート伯爵夫人ではなく、ロザムンドと呼びなさい」
「ロザムンド様ですか? でも、私は……」
「今は義理とはいえ、親子でしょう?」
「そうですね……では、ロザムンド様とお呼びします」
「そうしなさい」
そう言って、クッキーの二枚目を食べ終えたロザムンド様が、「では、失礼」といって去っていった。
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