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次の縁談はありますよ

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朝には自分の屋敷に送っていただき、ほっと一息ついていた。

そして、今朝届いた書簡に目を通す。
婚約破棄の書面にサインをしなければならないのだ。
慰謝料のことなんかは私が話し合うよりも、アレックスにお願いした方がいいだろうと、来てもらっていた。

「夜会で婚約破棄されたんだ。これからどうするのだ?    次の縁談は難しいだろう?     あまり気は進まないだろうが俺と結婚でもするか?」

アレックスがお父様の爵位を受け継いだから、アレックスと結婚するということは普通にあることだ。
娘しかいない貴族では、生活水準を落としたくない方々はどこにでもいる。
そんな方々は、爵位を継ぐ者と結婚することが多いのだ。

でも、次の縁談はあるのよね。
一夜を共にしたら、結婚が吹いてわいたとどう言おうかしらね。

「実はね……結婚はあるのよ」
「夜会で婚約破棄を叫ばれたと……」
「そのあとに求婚されたのよね」
「良かったじゃないか。どんな方だ?」

どんな方かしらね。
見た目は紳士だったけど……。

この2日のことを思いだすと、ただの絶倫疑惑がある。

「ご、ご立派な方よ」
「それなら、一度食事でもお誘いしようか」
「そうね。今度招待するわ」

次の縁談があるとわかったからか、アレックスは安心したようで、帰り支度を始めた。
婚約破棄の慰謝料のこともアレックスがしてくれるし、フレッド様とはこれで綺麗さっぱりお別れだ。

和やかな気持ちでアレックスを見送るために玄関に向かっていると、デイジーが「お嬢様ーー!」と走ってくる。

「デイジー、アレックスはあなたの邸の主人よ。主人の前では走ってはダメじゃない」
「すみませんー!    でも、イケメンが来たんです!」
「!?」

まさか、リュード様!?
まだ夕食には早い!

「新しい婚約者か?」
「だ、大丈夫よ!    変な方じゃないから!」
「そんなことは聞いてないが……」

しかし、来たのはセイルだった。

「……セイルでしたか。何か?」
「すみません。リュード様をお待ちでしたか」
「そ、そういうわけでは……」

焦り、視線を落とすと、またセイルは贈り物を持っている。
まさか……と思うと、差し出された。

「アシュリー様にお届け物です。リュード様からです」
「何故!?」
「今夜のドレスです」

微妙に会話が噛み合ってない!
食事の度にドレスを贈ってくる気じゃないでしょうね!
なんだか重い!

「アシュリー、良かったじゃないか!    良い人みたいだな!」
「えぇ、良い人でしょうね」

やけくそ交じりで返事をすると、セイルは「どちら様でしょうか?」とアレックスに聞いた。
主人の妻となる人が男といるのが良くないと思うのか、鋭くアレックスを見る。

「これは失礼。アシュリーの父上のあとを継いだアレックス・ノルティス伯爵です」
「セイル、アレックスは私の後見人みたいな感じなのよ」
「そうでしたか。失礼いたしました。私は、リュード・エインズワース様の執事のセイルです」
「エインズワース?    公爵家の?」
「はい。嫡男ではありませんが、リュード様は第4騎士団に所属しておりまして、立派な方です」

アレックスは、嫡男ではないけど、立派に騎士をしているリュード様に好感を持ったようで、再度、「良かったな!」と喜ぶ。

「アシュリー、折角だ。受け取りなさい」

年上らしくアレックスは贈り物に目をやり、そう言った。

「では、ありがたく……」
「確かにお渡ししました。今夜もリュード様がお迎えにあがりますので」
「そうですか」

セイルは、また礼儀正しく帰る。
アレックスも、慰謝料は任せろ、とご機嫌で帰って行った。

残された私と、デイジーは部屋で贈り物を開けてみた。
デイジーは、素敵な執事さん!   と頬を染めている。
贈り物はやっぱりドレスだった。

「デイジー……帰る前にドレスの支度を手伝ってね」
「勿論です!」

そして、今夜もリュード様は迎えに来ていた。





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