3 / 73
1日目-1
しおりを挟む眩い光が当たりを包み込み、美女もとい女神に別世界へと送られた。
ワクワクする高揚感に耐えて閉じた目を開けた。
そしてトンネルを抜けた先は雪国でした―……。
「寒っ」
見渡す限りの銀世界。
一歩足を踏み出せば膝上まで雪で埋もれた。
空を見あげれば重なり合う木の枝の奥にどんよりとした曇り空が見えた。
周りを見れば人よりも太い木々が数え切れずあり、
極めつけはハラハラと降り続ける雪、白い息。
「難易度高過ぎだろぉおおおおおおお」
外見と一緒に替えられた服装。
秋や春といった少し肌寒い時に着るような生地の薄い長袖のジャージ、
既に雪が入り込んだ運動靴と言った装いで生き残れるような場所ではなかった。
絶叫しても悲しいかな返答してくれる人もなし、
パニックに陥ったら駄目だと理解し、
現状を打開できるものはないかと手持ちの持ち物を確認する
現在の持ち物―――――――
・謎の袋
・食料(おにぎり9個)
・水入り皮袋
・塩
・ナイフ
・マジックバック(中)
―――――――――――――――――――――――――――――
ステータス
Lv1
HP 100/100 MP 100/100
火属性Lv1/水属性Lv1/風属性Lv1/土属性Lv1/光属性Lv1/闇属性Lv1
スキル
鑑定
ユニークスキル
世界地図/インベントリ/百科事典
加護
女神の加護(小)
――――――――――――――――――――――――――――――――
地図地図!世界地図!
現在地を把握しようと試みる。
心の中で世界地図と言ったら目の前にA4サイズの半透明の板状の地図らしきものが現れた。
――うん。だよね。
どうやら最初から全てマッピングされている訳では無いらしい。
この地図に表示されていたのは、木の生え具合からして、
今いる場所から半径10mほどの範囲だけだった。
とても不親切な設計だ。
当たり前だが町なんてない。
……落ち着け、次だ次。
まず魔法使ってみよう。
このままでは凍えてしまう。
とりあえず火属性唱えてみるか。
「ファイアー」
手に何かを集めるようなイメージをし火属性の魔法と思いついた名前を唱える。
すると直径20cm位の火の玉が出た。
そのまま重力に負けて落下した。
ジュッと雪の表面が少し溶けて火の玉は消えてしまった……。
火の玉が出て消えるまでこの間およそ1秒。
暖を取るどころではなかった。
そういやお約束だとMPを消費してるはずとステータスを見てみる。
MP 90/100
今ので10も消費したのか…。
……まてまてまてまて。
あと9回しか使えないじゃん!
移動するべき!?いや町どっちよ!!
………俺の異世界生活終了早かったなぁ。
タイミングよく風が吹く。
舞い上がる雪。
落ちてくる雪。
あまりの冷たさに我に返った。
……悲観にくれる前になんとかせねば。
せめて雪をしのげる場所があればいいのだが。
ここにいてもしょうがない。
正解かは分からないが歩いてみるかと歩き出した。
そうしてたどり着いたのは谷でした。
見上げれば雲まで届きそうな土の壁、
左右を見ても終わりのみえない土の壁。
休めそうな洞窟もなし。
かじかむ手足に心が折れそうになる。
最悪穴でも掘るかと涙目になりながら壁を見た。
そしたら、洞窟ではないが土壁が崩れ雪に当たらず座れそうな場所があった。
高さは腰よりも高く奥行は1mぐらい、
ただ奥に行くにつれ高さが低くなってるので、実際は80cmと言ったところか。
幅は足を伸ばしても少し余裕があるくらいだ。
立っては入れないが座ってならなんとか休めそうだ。
雪を手で除けて穴に潜り込む。
狭いがな腰を落ち着け改めてステータスを見た。
「あ……MPが回復している。」
さっきまで90/100だったのが96/100になっていた。
さっきはすぐに消えたけどもう一度魔法使って見るか。
入って右奥の土の壁を手で掘る。
爪に土が入るが気にせずに体感で10分ほど掘ってみた。
あ、またMPが回復して97/100になっていた。
おそらく10分位で1回復かな?厳しいな。
「ファイアー」
今度はさっきみたいに雪の上ではなく土の上に手をかざして唱える。
良かった消えない。
オレンジの火が揺れる。
……今度はどれくらい持つんだろう?
「……あったかい……」
びしょ濡れになった靴を脱ぎ逆さにして雪が溶けた水を出す。
火の前に置き足置きにする。
かじかんだ手と足を火にかざす。
ぐ―きゅるるるる―。
ホッとしたからかお腹がすいた。
取り敢えずおにぎり食べよう。
そう思ってふと手足を見た。
火を置く場所を掘ったから泥だらけだった。
おにぎり食べる前に綺麗にしたいな…と思ったら頭の中に呪文が浮かんだ。
「ピュリフィケイション」
呪文を唱えると周りが一瞬光ったような気がした。
爪に入った土の感触等さっきまで土が着いた違和感がキレイさっぱり消えていた。
見ると最初から汚れなんて着いてないような綺麗な手になっている。
こんな便利な呪文があるのかと感心すると同時にステ―タスを見る。
MPが87/100から10減って77/100になっていた。
便利だけど消費MPキツいな。
そんなことを思ったらぐ―きゅるるるる―と再びお腹が鳴った。
おにぎりおにぎりっと、
確かイベントリから取り出すんだよな、どうやって取り出すんだろう?
「インベントリ」
取り敢えず唱えてみた。そしたら目の前に黒い穴が空いた、何これ怖っ。
「インベントリ」
もう一回唱えたら消えた。やっぱりこれがインベントリなのか。
「インベントリ」
今度は意を決して黒い穴に手を突っ込んでみる。
なんだか不思議な気分だ。
何にも触れてないし感覚は黒い穴に手を入れる前と変わらない、
手を左右上下に振ってみるが何かにぶつかる感触も無い。
だからどうやって取り出すんだろう?
試しにおにぎりおにぎりおにぎりと頭の中で唱えてみる。
……ビンゴ!手に何かにが当たった。
黒い穴から手を引き抜くと海苔の巻いてない真っ白なおにぎりを持ってこれた。
「……ホカホカだ」
拳よりも大きめのおにぎりは、炊きたてのご飯を今握りましたと言わんばかりのいい香りがしていた。
たまらず一口齧る。
お米の良い香りが鼻を抜ける。
程よい塩加減によってお米の甘さが引き立っており絶品だった。
手についた米粒1つ残さずあっという間に平らげてインベントリから水を取り出し喉を潤す。
穴の外を見上げる。未だに降り続ける雪はまだまだ止みそうもない。これはもっと積もりそうだ。
今いる場所も休憩する分には良いが長時間滞在出来るような場所では無い。
もはや遭難だ。そんでもって歩いてすぐの場所に街があるとも分からない。
闇雲に歩きまわって体力を減らすよりも、応急的な拠点を作った方がいいかもしれないなと土壁を見渡してそう思った。
1
お気に入りに追加
1,447
あなたにおすすめの小説

こう見えても実は俺、異世界で生まれたスーパーハイブリッドなんです。
若松利怜
ファンタジー
【こう見えても実は俺、異世界で生まれたスーパーハイブリッドなんです。――覚醒編――】
十九歳に成長した霧島悠斗は、自分の出生の秘密を聞かされた。
その後、地球存亡の危機を知った彼は、その日を境に加速的に覚醒していくのだった。
【あらすじ】
霧島悠斗は十九歳の誕生日間近、幼馴染(影浦悠菜)とその母親(影浦沙織)から、かなりぶっ飛んだ話を聞かされた。
その母子と彼の母親(霧島啓子)は、悠斗が生まれる前からの友人でもあり、その頃から家族同然の付き合いをしていたのだが、実は沙織が異世界(エランドール)で意図して誕生させた子供が悠斗だと言う。
沙織は以前、子供の出来なかった啓子の願いを叶える為に、彼女の子供として悠斗をこの世界に連れて来たのだった。
その後、異世界人の二人は悠斗の幼馴染とその母親になりすまし、異世界人と地球人との混合種(ハイブリッド)である彼を、これまでずっとその事実を隠したまま保護観察していたのだ。
突然のカミングアウトに戸惑う悠斗ではあったが、思い当たる節も幾つかはあったのだ。
視界の片隅に現れる家族の位置情報や、瞬発的に身体能力が上がったりと、まるで自分の身体に何か別の何かが居る様な感覚。
その告白を境に悠斗のそれらの能力は目まぐるしく成長し、更に新たな能力が次々と芽生え始めた。
そんなある日、悠斗は地球存亡の危機を知り困惑する。
保護観察をしていた異世界の二人は、悠斗の保護の為エランドールへ行かないかと打診してきた。
だがこれまで知り合った人達や、育ったこの世界を絶対に護ると心に決めた時、悠斗の能力が遂に覚醒する。
そしてそれは、彼の間近で保護観察を続けていた異世界人達であっても想定外であり、誰もが驚く程の超混合種(スーパーハイブリッド)だったのだ。
【登場人物】
霧島悠斗:啓子の染色体と異世界人数名の染色体を使用して、異世界《エランドール》で創られた混合種。
霧島啓子:悠斗の母親。染色体提供者の一人。
霧島圭吾:悠斗の父親
霧島愛美:悠斗の妹
影浦沙織:悠斗が生まれる前からの啓子の知り合い。悠菜の母親。エランドールではルーナ。染色体提供者の一人。
影浦悠菜:沙織の一人娘。悠斗の幼馴染。エランドールではユーナ。染色体提供者の一人。
セレスティア・リリー・カルバン:エランドールの将軍。ラ・ムー王の血族。染色体提供者の一人。
鈴木茂:悠斗の同級生。高校に進学してからの友達。
五十嵐未来:悠斗の同級生。
西園寺友香:悠斗の同級生。

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️

巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。

惣菜パン無双 〜固いパンしかない異世界で美味しいパンを作りたい〜
甲殻類パエリア
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンだった深海玲司は仕事帰りに雷に打たれて命を落とし、異世界に転生してしまう。
秀でた能力もなく前世と同じ平凡な男、「レイ」としてのんびり生きるつもりが、彼には一つだけ我慢ならないことがあった。
——パンである。
異世界のパンは固くて味気のない、スープに浸さなければ食べられないものばかりで、それを主食として食べなければならない生活にうんざりしていた。
というのも、レイの前世は平凡ながら無類のパン好きだったのである。パン好きと言っても高級なパンを買って食べるわけではなく、さまざまな「菓子パン」や「惣菜パン」を自ら作り上げ、一人ひっそりとそれを食べることが至上の喜びだったのである。
そんな前世を持つレイが固くて味気ないパンしかない世界に耐えられるはずもなく、美味しいパンを求めて生まれ育った村から旅立つことに——。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる