269 / 274
第三章
269話目
しおりを挟む「……って事はシャーロットさんがブリストウ領にまで来て自販機を求める理由はさっぱりわからないって事……ですか?」
灯里がユーリアスさんにそう問う。
「申し訳ないがその通りだマドモアゼル灯里。 力になれなくてすまないね」
いちいち恰好をつけて話すユーリアスさん。
「い、いえ。 色々話を聞かせて頂いてありがとうございます。 こちらの世情に疎くて……」
「他にも分からないことがあったら聞いてくれて構わない。 私が知っていることは教えよう。 レディーの頼み事は断らない主義なのでね」
ユーリアスさんが凄い。 なんというか凄い。
女性の扱いが上手いというかたらしというか。 聞く人が聞けば、合わない人が言えば鳥肌が立つんだろうけど自然体に言ってのけるところがなんかすごい。
「だがそうだね……私もちょっと探っておくよ。 アルフォート様にはお世話になるからね」
「ありがとうございます!!」
「いえいえどう致しまして」
そう言って私と灯里はこれ以上邪魔する訳にはいかないので失礼した。
「ユーリアス探るってどうすんだ? お前ここから出れないだろ」
「出れないなりにやりようはあるぞ!! 私はここでパワーアップしたからな」
女性陣が退出した部屋では、先ほどまでの有能そうなきらめきが綺麗さっぱり消え去り、アホ度が増したユーリアスが自信満々にそう告げる。
「……ユーリアス、お主なぜ女子が居ないとアホになるんじゃ?」
「アホとは失礼な!! やはり私もれっきとした紳士。 レディー達の前では振る舞いに気を付けるさ。 完璧だったろう?」
胸に手を置き自信満々にそう告げる。
それをワシと透がしらけた目で見やった。
「いや、かなり気持ち悪かった」
「失敬な!! 倉敷こそ気を付けたまえ。 そんなんじゃレディーからモテないぞ」
「……どうでもいいわ、あほらしい」
「……お主に若い女子を宛がうのは正解なんじゃろうな」
その様子を見て主催側の貴族がユーリアスに女性を宛がう理由がなんとなく分かった気がした。
ミラーリア侯爵領ヘルバー商会
「シャーロット様がブリストウ伯爵と面会したそうです」
「……そうか。 そうか……」
やはりブリストウ領の商業ギルドと伯爵は通じておったのか。
部下からの報告を部屋で受ける。
窓から見える景色を眺めつつふとあの日のことを思い出した。
+++
「アイゼル会頭、頼みごとがございますの」
ヘルバー商会はミラーリア侯爵の直下の商会として主に薬の流通や薬草などの仕入れを一手に引き受けている商会だ。
ミラーリア侯爵家が作る薬は、少ない回復魔法の使い手を補い、またその優れた効果はミラーリアの秘術により長期間の保存がきき、高価ながらも常備しておきたい貴族からの注文が殺到している。
ヘルバー商会が薬の素材を国を飛び越え他国にも渡りをつけ広範囲から買い付けを行い、珍しい植物なども仕入れてくる。
ミラーリア侯爵家はその素材を使用しさらに薬の改良を行う。
そしてヘルバー商会がそれを高値で販売する。
いわば互いになくてはならない、ミラーリア侯爵家の為の商会と言っても過言ではなかった。
だからミラーリア侯爵家からの信頼も厚く令嬢や令息も素材の目利きをしに幼少の頃よりよく訪れていた。
アイゼルもシャーロットのことは幼少の頃より顔見知りで、口に出せば間違いなく処罰の対象となるだろうが孫娘のような気持で見守っていた。
シャーロットは侯爵にも愛され、使用人たちにも愛され、ヘルバー商会の者達にも愛され、健やかに育って行った。
そんなシャーロットの頼み事だ。
「なんでしょうか? シャーロット様」
デレデレしないように表情を引き締め立場をしっかりと明確にしシャーロットへ聞き返した。
13
お気に入りに追加
747
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたんですけど、スキルが「資源ごみ」だったので隠れて生きたいです
新田 安音(あらた あのん)
ファンタジー
平凡なおひとりさまアラフォー会社員だった鈴木マリは異世界に召喚された。あこがれの剣と魔法の世界……! だというのに、マリに与えられたスキルはなんと「資源ごみ」。
おひとりさま上等だったので、できれば一人でひっそり暮らしたいんですが、なんか、やたらサバイバルが難しいこの世界……。目立たず、ひっそり、でも死なないで生きていきたい雑草系ヒロインの将来は……?
転生王女は現代知識で無双する
紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。
突然異世界に転生してしまった。
定番になった異世界転生のお話。
仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。
見た目は子供、頭脳は大人。
現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。
魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。
伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。
読んでくれる皆さまに心から感謝です。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
世界最強の公爵様は娘が可愛くて仕方ない
猫乃真鶴
ファンタジー
トゥイリアース王国の筆頭公爵家、ヴァーミリオン。その現当主アルベルト・ヴァーミリオンは、王宮のみならず王都ミリールにおいても名の通った人物であった。
まずその美貌。女性のみならず男性であっても、一目見ただけで誰もが目を奪われる。あと、公爵家だけあってお金持ちだ。王家始まって以来の最高の魔法使いなんて呼び名もある。実際、王国中の魔導士を集めても彼に敵う者は存在しなかった。
ただし、彼は持った全ての力を愛娘リリアンの為にしか使わない。
財力も、魔力も、顔の良さも、権力も。
なぜなら彼は、娘命の、究極の娘馬鹿だからだ。
※このお話は、日常系のギャグです。
※小説家になろう様にも掲載しています。
※2024年5月 タイトルとあらすじを変更しました。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。
運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。
憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。
異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。
異世界でフローライフを 〜誤って召喚されたんだけど!〜
はくまい
ファンタジー
ひょんなことから異世界へと転生した少女、江西奏は、全く知らない場所で目が覚めた。
目の前には小さなお家と、周囲には森が広がっている。
家の中には一通の手紙。そこにはこの世界を救ってほしいということが書かれていた。
この世界は十人の魔女によって支配されていて、奏は最後に召喚されたのだが、宛先に奏の名前ではなく、別の人の名前が書かれていて……。
「人違いじゃないかー!」
……奏の叫びももう神には届かない。
家の外、柵の向こう側では聞いたこともないような獣の叫ぶ声も響く世界。
戻る手だてもないまま、奏はこの家の中で使えそうなものを探していく。
植物に愛された奏の異世界新生活が、始まろうとしていた。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる