262 / 274
第三章
262話目
しおりを挟む「……ユーリアスの腕前はそんなになのか?」
さっきまで否定的だったマッヘンさんが倉敷さんの話を聞いてソワソワしだした。
「あぁ。 菅井よりも上だ」
それに頷き断言する倉敷さん。
「鋼はのう……もうちょっと精進が必要じゃもんな」
「なんかショック!!」
菅井さんは流れ弾が当たった。
「倉敷さん的に問題ない人物なんですか?」
そう私が問うと倉敷さんは、
「転がしやすい」
「それはなによりで」
そう答えた。
実際に倉敷さんに関わったばかりに廃嫡の危機にまで陥っているのだからなんというか……良く言えば素直な人なんだろうな……うん。
「大体のいきさつは分かった。 分かったが……うん、分かった」
アルフォート様が苦虫を噛み潰したような表情をした。
「ユーリアスがここに滞在するのはもう決定事項だ、そしてユーリアスが廃村に滞在しているときにあちらの世界に行くのは止めてほしい。 その代わり日中だけしか来させないようにする。 申し訳ないが聞き入れて欲しい」
「……まぁここはアルフォート様の土地で良くしてもらっているので私としては文句ないです」
悪い人のカモになった人物だ。 自業自得とはいえそんなに悪い人ではなさそうだもんね。
「ちょいとユーリアスの腕前が気になるの、いつからこっちに来るんじゃ?」
マッヘンさんはむしろ早く来いと言わんばかりの反応だ。
魔道具のことになると本当に見境ないね。
「いつか……ふむ、今日グリフォンでフォルラーニ侯爵領に戻ったから色々準備し荷物を持っての移動となるからひと月はかかるかもしれんな」
「そんなにかかるのか……残念じゃの」
「あ、相良さんはどうですか?」
「私ですか? 私は別に構いませんよ」
相良さんは特に興味を持っていないようだ。
今は魔獣が相手してくれてるもんね。
……いやちょっと残念がってる? フォルラーニ侯爵強かったもんね。
「了承してくれて助かる。 移動には時間がかかる……滞在場所から手紙をもって連絡が来るとのことだ、連絡が来たらこちらにも連絡をする」
「わかりました」
それから数週間してユーリアスさんがやってくるのだった。
王都商業ギルド
「その後どうだ」
「はい、ミラーリア侯爵令嬢がブリストウ領に入ったのを確認いたしました。 商業ギルドに赴いたようでしたがその後自動販売機という名の魔道具の撤去はされませんでした。 その後侯爵令嬢はブリウスト領主の館に赴いたようでしたがその後も相変わらず魔道具は設置されたままとなっております」
「……忌々しい。 オーフェンの言う事は真だったということか……。 貴族どももよくも儂に危ない橋を渡らせようとしたな!! 儂がどれだけ美味しい思いさせてやったと思ってるんだ!! 舐め腐りおって!!」
ダンッ!!!
高位貴族が関わっているだと?!
ミラーリア侯爵令嬢とはいえ侯爵家を退けられる人物は限られておるじゃないか!!
公爵家以上……すなわち王家が手出ししている案件じゃ!!
いくら貴族との繋がりがある儂とて手出ししたら首が飛ぶわい!!
自らの首に指を這わせ、道を踏み外せば危険な位置だったことに身震いする。
そしてその憤りは通信の魔道具越しで飄々とした対応を取っていたオーフェンにも向いた。
あ奴もそれを知っていて儂を陥れようとしだんだな……オーフェンごときが!!!!
ダンッ!!!!
「して、ミラーリア侯爵令嬢はそのまま身を引いたと申すのか!!」
「は、はい!! ブリストウ領主の館を出たミラーリア侯爵令嬢はそのままブリストウ領を出て行ったそうです」
「そのまま足取りを追え!! 何かあれば報告を寄越すのだ!!」
「はい……それがその……」
「なんだ!!」
「はいぃぃ……侯爵令嬢が通り過ぎた街や村から妙な噂が流れるようになりまして……」
「噂? なんじゃ言ってみい」
「は、はい……なんでもブリストウ領が渡り人を使って私腹を肥やしているという噂でして……」
「それのどこが妙なんじゃ」
「はい……良くよく観察してみると村人や町の人が貴族の使いの者達に熱心に話を広めている節がありまして……」
貴族はすぐ平民を使い捨てようとする。
儂も道具にされるところじゃったがな!!
だから平民はたとえ貴族の使いにとて利を欲する者以外目を付けられぬよう避けるものじゃ。
だが確かにこいつの話が本当なら平民がわざわざ貴族に関する話を広めようとする行動も貴族に関わる者に関わりを持とうというのもおかしな話じゃ。
……もしやミラーリア侯爵令嬢の目的は。
「……おい、その話お前も積極的に広めよ」
「はい?」
「ブリストウ領主が渡り人を使って私腹を肥やしているという話じゃ。 ……そうさのぅ……ブリストウ領の商業ギルドもグルじゃという話も付け加えておけ。 良いな」
「分かりました」
扉から男が出て行くのを確認しほくそ笑む。
こいつは使えそうだ。
上手くいけばその渡り人がブリストウ領から出るだけではなくオーフェンの後ろ盾の力も削げるかもしれん。
しかも噂を広めているのはミラーリア侯爵令嬢じゃ。
儂がたとえ付け加えたところで侯爵令嬢が全て罪をひっかぶってくれる。
いやぁ幼い子供に申し訳ないがこれも身から出た錆、考えなしに動くのが悪い。
せいぜい利用させてもらうとするかの。
3
お気に入りに追加
724
あなたにおすすめの小説
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。
武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。
人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】
前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。
そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。
そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。
様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。
村を出て冒険者となったその先は…。
※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。
よろしくお願いいたします。
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
異世界に転移したので国民全員の胃袋を掴みます
りゆ
ファンタジー
じゅわわわわっっ!!!
豪快な音と共にふわふわと美味しそうな香りが今日もセントラル家から漂ってくる。
赤塚千尋、21歳。
気づいたら全く知らない世界に飛ばされていました。まるで小説の中の話みたいに。
圧倒的野菜不足の食生活を送っている国民全員の食生活を変えたい。
そう思ったものの、しがない平民にできることは限られている。
じゃあ、村の食生活だけでも変えてやるか!
一念発起したところに、なんと公爵が現れて!?
『雇いシェフになってほしい!?』
誰かに仕えるだなんて言語道断!
たくさんの人に料理を振舞って食生活改善を目指すんだ!
そう思っていたのに、私の意思に逆らって状況はあれよあれよと変わっていって……
あーもう!!!私はただ料理がしたいのに!!!!
前途多難などたばた料理帖
※作者の実体験をもとにして主に構成されています
※作中の本などは全て架空です
転生貴族可愛い弟妹連れて開墾します!~弟妹は俺が育てる!~
桜月雪兎
ファンタジー
祖父に勘当された叔父の襲撃を受け、カイト・ランドール伯爵令息は幼い弟妹と幾人かの使用人たちを連れて領地の奥にある魔の森の隠れ家に逃げ込んだ。
両親は殺され、屋敷と人の住まう領地を乗っ取られてしまった。
しかし、カイトには前世の記憶が残っており、それを活用して魔の森の開墾をすることにした。
幼い弟妹をしっかりと育て、ランドール伯爵家を取り戻すために。
自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。
女神の話によれば、異世界に転生できるという。
ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。
父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。
その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。
食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。
そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる