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第三章

262話目

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「……ユーリアスの腕前はそんなになのか?」

さっきまで否定的だったマッヘンさんが倉敷さんの話を聞いてソワソワしだした。

「あぁ。 菅井よりも上だ」

それに頷き断言する倉敷さん。

「鋼はのう……もうちょっと精進が必要じゃもんな」

「なんかショック!!」

菅井さんは流れ弾が当たった。

「倉敷さん的に問題ない人物なんですか?」

そう私が問うと倉敷さんは、

「転がしやすい」

「それはなによりで」

そう答えた。
実際に倉敷さんに関わったばかりに廃嫡の危機にまで陥っているのだからなんというか……良く言えば素直な人なんだろうな……うん。

「大体のいきさつは分かった。 分かったが……うん、分かった」

アルフォート様が苦虫を噛み潰したような表情をした。

「ユーリアスがここに滞在するのはもう決定事項だ、そしてユーリアスが廃村に滞在しているときにあちらの世界に行くのは止めてほしい。 その代わり日中だけしか来させないようにする。 申し訳ないが聞き入れて欲しい」

「……まぁここはアルフォート様の土地で良くしてもらっているので私としては文句ないです」

悪い人のカモになった人物だ。 自業自得とはいえそんなに悪い人ではなさそうだもんね。

「ちょいとユーリアスの腕前が気になるの、いつからこっちに来るんじゃ?」

マッヘンさんはむしろ早く来いと言わんばかりの反応だ。
魔道具のことになると本当に見境ないね。

「いつか……ふむ、今日グリフォンでフォルラーニ侯爵領に戻ったから色々準備し荷物を持っての移動となるからひと月はかかるかもしれんな」

「そんなにかかるのか……残念じゃの」

「あ、相良さんはどうですか?」

「私ですか? 私は別に構いませんよ」

相良さんは特に興味を持っていないようだ。
今は魔獣が相手してくれてるもんね。

……いやちょっと残念がってる? フォルラーニ侯爵強かったもんね。

「了承してくれて助かる。 移動には時間がかかる……滞在場所から手紙をもって連絡が来るとのことだ、連絡が来たらこちらにも連絡をする」


「わかりました」

それから数週間してユーリアスさんがやってくるのだった。



王都商業ギルド

「その後どうだ」

「はい、ミラーリア侯爵令嬢がブリストウ領に入ったのを確認いたしました。 商業ギルドに赴いたようでしたがその後自動販売機という名の魔道具の撤去はされませんでした。 その後侯爵令嬢はブリウスト領主の館に赴いたようでしたがその後も相変わらず魔道具は設置されたままとなっております」

「……忌々しい。 オーフェンの言う事は真だったということか……。 貴族どももよくも儂に危ない橋を渡らせようとしたな!! 儂がどれだけ美味しい思いさせてやったと思ってるんだ!! 舐め腐りおって!!」

ダンッ!!!

高位貴族が関わっているだと?! 
ミラーリア侯爵令嬢とはいえ侯爵家を退けられる人物は限られておるじゃないか!!

公爵家以上……すなわち王家が手出ししている案件じゃ!!
いくら貴族との繋がりがある儂とて手出ししたら首が飛ぶわい!!

自らの首に指を這わせ、道を踏み外せば危険な位置だったことに身震いする。

そしてその憤りは通信の魔道具越しで飄々とした対応を取っていたオーフェンにも向いた。

あ奴もそれを知っていて儂を陥れようとしだんだな……オーフェンごときが!!!!

ダンッ!!!!

「して、ミラーリア侯爵令嬢はそのまま身を引いたと申すのか!!」

「は、はい!! ブリストウ領主の館を出たミラーリア侯爵令嬢はそのままブリストウ領を出て行ったそうです」

「そのまま足取りを追え!! 何かあれば報告を寄越すのだ!!」

「はい……それがその……」

「なんだ!!」

「はいぃぃ……侯爵令嬢が通り過ぎた街や村から妙な噂が流れるようになりまして……」

「噂? なんじゃ言ってみい」

「は、はい……なんでもブリストウ領が渡り人を使って私腹を肥やしているという噂でして……」

「それのどこが妙なんじゃ」

「はい……良くよく観察してみると村人や町の人が貴族の使いの者達に熱心に話を広めている節がありまして……」

貴族はすぐ平民を使い捨てようとする。
儂も道具にされるところじゃったがな!!

だから平民はたとえ貴族の使いにとて利を欲する者以外目を付けられぬよう避けるものじゃ。
だが確かにこいつの話が本当なら平民がわざわざ貴族に関する話を広めようとする行動も貴族に関わる者に関わりを持とうというのもおかしな話じゃ。

……もしやミラーリア侯爵令嬢の目的は。

「……おい、その話お前も積極的に広めよ」

「はい?」

「ブリストウ領主が渡り人を使って私腹を肥やしているという話じゃ。 ……そうさのぅ……ブリストウ領の商業ギルドもグルじゃという話も付け加えておけ。 良いな」


「分かりました」

扉から男が出て行くのを確認しほくそ笑む。

こいつは使えそうだ。

上手くいけばその渡り人がブリストウ領から出るだけではなくオーフェンの後ろ盾の力も削げるかもしれん。
しかも噂を広めているのはミラーリア侯爵令嬢じゃ。
儂がたとえ付け加えたところで侯爵令嬢が全て罪をひっかぶってくれる。

いやぁ幼い子供に申し訳ないがこれも身から出た錆、考えなしに動くのが悪い。
せいぜい利用させてもらうとするかの。










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