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第三章

259話目

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ユーリアス殿への罰を倉敷に問うたら助手にしたい……だと。
倉敷へと目配せをしたらこちらに気づいたようで頷いている。

何の頷きだそれは。

ユーリアス殿を見ればそれはそれは期待に満ちた目でこちらを見ている。
反省のはの字も見当たらないぞ。

最後にそう言いだしたフォルラーニ侯爵を見れば深々と頭を下げた。

「愚息を押し付ける用で申し訳なく思っています。 出来れば被害者の意向を組んでいただけないでしょうか」

「私からも頼みます!!」

「お前は黙っていろ。 ユーリアス!!」

「あいたっ!!」

またしても目の前でユーリアス殿の頭に鉄拳がさく裂した。

私が黙っていたらいくつユーリアス殿の頭にコブが増えるのだろう。
そんな現実逃避をしながら考えてみる。

ここでユーリアス殿を受け入れた時のメリットとデメリットだ。

デメリットは桜の魔法の秘密の露出。
廃村に住まうとなるとあちらとこちらを行き来出来ると知られてしまう。

ユーリアス殿の性格がまだ把握し切れていないうちに知られるのはまずい。
フォルラーニ侯爵まで知られてしまうだろうからな。

住まわせるとなると街に住んでもらい城の転移門を使用して行き来してもらうか?
門限付きで桜たちがあちらの世界に行く前にこちらに帰ってきてもらう。
かつ転移門を使用する際は私や長谷川が必ず見張りに付く……とかか?
桜たちにもユーリアス殿が廃村に居る場合あちらの世界に行くことを避けるようにしてもらえば可能か?

メリットはフォルラーニ侯爵への貸しが作れることか。
これは作ろうと思っても作れるものではないな……。

味方になるという言質は貰っていたがより確実なものになるな。

そう考え返答を決めた。

「分かりました。 ユーリアス殿の受け入れを認めます」

「あ「ありがとう!!」 ユーリアス!!」

「あいたっ!!」

その後もいくつかユーリアス殿はコブを増やしフォルラーニ侯爵と共に一旦自領へ帰る事となった。

荷物などの準備の手筈は整えているので今度は荷物と共にこちらへやって来るそうだ。
到着をめどにもう一度フォルラーニ侯爵がグリフォンでこちらに赴き、正式な誓約書を交わす運びとなった。

こちらも住居の準備をしておかなければ。
フォルラーニ侯爵とユーリアス殿が岐路につくと残った倉敷を伴い廃村へと赴いた。


廃村

倉敷さんが居なくなってから数週間が経った。

その間村での生活はそう変わり映えしない。
元々それぞれが自由に活動し暮らしているので個人行動が多い。

倉敷さんと関わりの多そうなマッヘンさんでさえ自分の作業場に籠り魔道具の改良を楽しんでいる。

菅井さんは魔法の練習に勤しみ、相良さんはいう間でもなく魔獣退治やたまに店番に行ったりしている。

高梨さんや灯里は顔を見せに来るだけだからそもそも倉敷さんとそんなに話はしないしね。

それに通信の魔道具で皆と小まめに連絡を取っているので倉敷さんの動向も知れている。
そう言う事もあり特に気にすることは無かった。

まぁさしていうなら移動長いなぁくらいな感じだ。
どうやら屋敷には到着したらしいが数週間かかってやっとだという。

少し疲れた様子の声が聴かれ、そこまで苦労してでも見たことのない魔道具を見たがる執念に関心した。

「相良さんの出番までもうちょいですかね」

「そうですかね」

寒いけれども天気がいい。
スケート靴を取り寄せて氷で滑ってたら、魔獣狩りから帰って来た相良さんが近寄って来た。

どうやらお昼ご飯を買いに着たみたい。
こちらにいる時は皆で一緒に宿に行くことはあってもお昼や朝ごはんを一緒に食べることは無い。
それぞれの活動時間がバラバラだからだ。

だから私は格安でごはんの取り寄せを行っていたりする。
対価は物々交換でもいいし、あちらでもこちらでもどちらのお金でもいい。
そこら辺は要相談で行っている。

案の定相良さんからはアイテムボックスにご飯を補充したいから取り寄せてもらえないかと言われた。

スケートリンクから出てベンチにベンチに腰を下ろし取り寄せてほしいお弁当のカタログを渡す。

ちなみにこのカタログは高梨さんや灯里にアルバイト代を支払って一緒に作ってもらった手作りの品だ。

番号も記載し、注文カードも作成し、記入してもらい私がそれをもとに取り寄せる。

じゃないと取り寄せできるご飯も店やメニューの数が多すぎて選ぶのに時間がかかるからだ。
ちなみにこれは私のアイディアじゃなくて灯里のアイディア。
灯里も注文するときは大変みたい。
いつも注文する物ならそこまで手間はないけれどたまに新しい物に挑戦したいって時があるじゃない。
デザートであれ食べ物であれ。
そういう時に私が何を取り寄せられて何が取り寄せられないのか分からないと不便らしい。
例えばコーヒーSサイズのをいつも飲んでるけどたまにはLサイズのが飲みたい、でも取り寄せられるのか分からないって感じかな。
カタログがあれば、取り寄せられるんだとかこれ取り寄せられないんだとか分かる。
そう言われて私自身も取り寄せられる数が多すぎてお店のメニューの抜けも多い事に気づいた。

結果私も抜けていた部分をあっちの世界に帰って埋めてくことが出来た。

皆もカタログが出来たおかげで皆スムーズに注文できて喜んでいる。

作って良かったね。 かなり分厚いけど。

そんな感じで注文の話をしていたら幌馬車から人が出てきた。
てっきり長谷川さんがやって来たのかと思ったら違った。

アルフォート様と……倉敷さん?!

倉敷さんってあれ? 誘拐されたままだったよね? 一緒に居るってどういう事?

首を傾げていたら二人と目が合った。

……手招きされている。

隣に居た相良さんに視線を向けると相良さんもキョトンとしていた。

「……行ってみますか?」

「そうですね」

相良さんに声を掛けるとそう返事が返って来た。
二人でベンチから腰を上げアルフォート様と倉敷さんの下へと歩みを進めた。

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