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第三章

244話目

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王宮


「橋沼桜には参った」

「正しくは渡り人だな」

時はフォルラーニ侯爵達がブリストウ領へ行った後の話である。

王宮の私の私室にて父であるベルゲマン公爵と話のすり合わせをする。
アルフォートから急な報告があり、予定を空けて人払いし盗聴防止の魔道具を起動させ話をすれば耳を疑うような報告だった。

「この度は急ぎ拝謁の機会を賜りまして誠に感謝致します」

部屋へ入室したアルフォートは片膝をつきそう申し述べた。

「よいよい、して急ぎの用とは?」

ソファーへと座れと指示を出すと表情を硬くしソファーへ腰を下ろす。

「……ご報告遅くなりましたこと誠に申し訳ございません」

「報告?」

そう言うや否や所持したアイテムボックスから何やら魔道具を取り出すアルフォート。
本来であれば登城の際に剣や武器が隠し持てるアイテムボックスは預けられる。

下城する際持ち主に返されるのがしきたりだ。
なのにアルフォートはここまで持ち込んできた。

というのも今回はアルフォートから事前に予定を調整する段階で打診があった為許可をした。

何を持ち込んだのか問う前に、出された魔道具を見て言葉を失った。

それは一見すると単なる門の様であるが門を通して見える景色がこの部屋の景色ではない。
前にも見覚えがある景色……どこで見たのか記憶を遡る。

そしてその記憶を見つけた。

理解しまさかと思いが言葉となり口から零れ落ちた。

「……門? 魔道具……まさか転移門か?」

「はい。 転移門です……本来であればアイテムボックスを預けねばならないのですが、物が物だけに検品するのもはばかれましてこうしてここまで隠し持ってまいりました」

その言葉に肯定の言葉が返って来る。

「……報告はこれだけか? ならばこれは本当に使用に耐える出来なのか?」

動揺を隠すべく表情を取り繕い冷静に勤めようと疑問を口にした。

「片方はすでにブリストウの私の私室に設置されております。 今あちらも人払いが済んでおります。 ご確認致しますか?」

「……参ろう」

先にアルフォートが歩みを進め門をくぐる。
すると門が発光しアルフォートの姿が消えた。

ごくりと喉が鳴る。

深呼吸をし歩みを進めた。

門をくぐる瞬間、何か違和感を感じるかと思いきや何もなかった。

身体が門をくぐり抜けると、部屋の様相は一変していた。

「ようこそ、ブリストウ領へ」

「うむ……」

そのまま窓の方へ歩みを進める。
窓の外には見慣れぬブリストウ領の景色が広がっていた。

「転移門はこれだけか?」

「設置済みの物は現在廃村と領主の館、廃村と渡り人相良の店、廃村と橋沼桜の家、そして領主の館と王宮になります」

「これを知る者は?」

「現在転移門を知る者は私とオリヴィア、長谷川、橋沼桜、開発者の倉敷、菅井、マッヘン、相良、渡り人では冒険者の高梨、冒険者ギルドに勤めている本宮、商業ギルド長のオーフェン、妻の春子になります。 貴族ではつい先日ドルイット侯爵とフォルラーニ侯爵に知られました」

「ドルイット侯爵とフォルラーニ侯爵か。 まず現状それ以上広めることはならん」

「かしこまりました」

「……開発者? これはダンジョンから出土した物ではないのか?」

「いえ、魔道具を作る魔法を持っている倉敷主導で作成された魔道具です」

「レシピ産か!! なるほど……なるほどな」

魔道具を作製する魔法は過去にも存在した。
魔法によって作られる魔道具は、過去の魔道具を研究して作る魔道具職人では作り出せない物も作り出せてしまう。
魔法を使用する者の願いが具現化されるからだ。

過去のレシピを解読し組み合わせを変えて進化させる魔道具ではなく、魔法の力が必要な回路を作るからだ。

ただそれにも欠点がある。
必要な素材を集めなければならない。
途方もない願いを叶えるためにはそれ相応の素材が必要になる。
現物を集められなければ術者の魔力が消費される。
その為、魔道具を作製する魔法を持つ者は異世界の物を取り寄せする者よりも早くにあちらの世界に帰っていった。

それが……出会ってしまったのか……。
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