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第三章
239話目
しおりを挟む「お休みになられてたのでは?!」
その声にビックリし振り返ってしまった。
「異世界のお酒がこんなにあるのにくつろいでいられるわけがないな」
どこか弾んだ声でそう答えるのは陛下だ。
「日本酒や焼酎もこんなに種類があるのだな……」
口元に手をやりにやけるのを隠そうとしているが、ベルゲマン公爵も声色は明るいせいで隠せていない。
「ブランデーやウィスキーも種類豊富だな」
もちろんアルフォート様も嬉しそうだ。
「……」
3人からの圧が強い。
のみたいという無言の圧が。
食事前なのにどうしようと困っていたら、
「……ポーションは余分にある」
「……分かりました」
長谷川さんからもポーションを渡された。
これはもう飲ませるしかないな……。
「試飲……致しますか?」
「「「是非」」」
そう問えばそれはそれはいい笑顔で御三方からお返事を頂いた。
こうなってはしょうがない。
「これからお食事になりますので、お一人様5本お選びいただいて少量をお出しいたします。 お好みの物を食事の際お出しいたします。 宜しいでしょうか?」
「構わない」
「5本だけか……」
「うーむ……迷うなぁ」
テーブルの前を陣取り真剣に悩んでらっしゃる。
「お酒の種類の説明は必要でしょうか?」
「料理の種類は肉料理か?」
「地元の食材を使った料理となります。 メインは肉料理とお聞きしております」
前回は食材を持ち寄ってバーベキューを楽しんだ。
今回は身分も身分の人たちなのでちゃんとした料理人による出張サービスを頼んだ。
それによるとお肉や海鮮、地場食材や一応ワインなども用意してくれる。
私が出したお酒はあくまでもおまけなのだ。
「一応肉料理に合ったワインは別にあります」
「そうか」
それからしばらく日本酒の甘口辛口の説明や、ワインの赤白ロゼの区別、甘さ辛さ濃さや爽やかさ等説明しながら選んでもらった。
夕食になり席に着く。
上座から陛下、公爵、アルフォート様、長谷川さん、対面は同じく上座から王妃様、サフィリア様、オリヴィア様、私の順番だ。
「あらあら桜さんお疲れですね」
オリヴィア様がこっそりと私にそう言った。
オリヴィア様達はオリヴィア様達で下の露天風呂を3人で楽しんだらしい。
ヒノキの露天風呂は王妃様もサフィリア様も初めてで、王妃様もサフィリア様もとても楽しそうでしたとオリヴィア様は語っていた。
いいなぁ、私もそっちが良かったかも。
そんな事を思いながら食事を楽しんだ。
流石プロの料理人。
地元食材は新鮮でかかっているドレッシングも美味しい。
果物を使っているのかフルーティーで、ちゃんと塩味も感じられるし野菜の甘さも絶妙にマッチしている。
シャキシャキとした歯ごたえで噛むと水分が溢れだし、とてもみずみずしい。
海鮮は海老やホタテといった定番の物から見事な霜の入ったお肉。
焼き加減も絶妙で美味しい。
女性陣は最初はサーブされるままワインを口にしていた。
男性陣は最初はワイン、後から自分が選んだお酒を飲み始めた。
ベルゲマン公爵はワインボトルを空けきってから飲んでたよ。 お酒強いね。
「あら? そちらは?」
王妃様が陛下が飲む飲み物に興味を示した。
女性陣にはここから私がお酒を選んでもらうよ。
どちらかというと割って飲む甘いお酒メインだ。
「こちらの世界のお酒だ。 先ほどテーブルに出されていてな。 選ばせてもらったのだ」
「そうなんですね」
そっと席を立ち、給仕用の台にリキュールを並べる。
同じように長谷川さんも席を立ち私の補助をしてくれた。
「失礼致します」
カートを押してテーブルの隣に立つ。
「……それは?」
「甘いお酒です。 アルコールが控えめなお酒となっておりますので女性向けとなっております」
「甘いお酒?」
「まぁ」
陛下は眉を顰めて瓶を眺める。 甘いお酒の想像がつかないようだ。
それはそうだよね。 さっきまで出してなかったし。 甘いお酒って飲んだことないよね。
リキュールのボトルはそのままでも面白い。 色とりどりの液体が入った大小入り混じった瓶だもの。
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