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第三章

230話目

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廃村



「という訳でしばらく街への出入り禁止な」

「え?!」

廃村の幌馬車のリビングにて長谷川さんにそう言われた。
内容を聞けばいつの間にか私は陛下のというか王室の保護下に入ったらしい。
それでアルフォート様が陛下から命を受け私の保護者に任命されたとのことだ。
楽しく自販機に入れる商品を選んでたり、商品の売れ行きを眺めていたり、春子さんや灯里と次はどの商品が良いかなとか話していたから、長谷川さんから聞かされる話が根耳に水でビックリした。
皆知ってたのかな? 私だけ知らされないようにしてたの?


「ついては陛下の発言で貴族どもがピリピリしている。 桜が見つかったら巻き込まれるぞ」

ひえぇぇぇ……そんなのに巻き込まないでほしい。

「た……例えば?」

ごくりと生唾を飲み込み長谷川さんに尋ねる。
もし捕まってしまった後の事は少しばかり気になる事だ。

「ほとんどは好待遇で軟禁状態かな? どこに行くにも監視付き。 カタログギフトもその貴族の許可制になるかもしれんな」

「……え?」

意外と好条件?
いや、あのカタログギフトを自分の意志で使えないのは嫌だ。
全然好条件じゃないじゃないか。

「それ以外で最悪なのは妊娠しないのをいいことに便利屋兼妾とかか? いや、後妻にされるかもしれんな。 婚姻を結んでしまえばおいそれと手出しは出来なくなってしまうからな」

「そんなの嫌です!!」

長谷川さんの言葉に思わず身震いしてしまう。
脂ぎった親父どものお相手なんて死んでもごめんだよ!!
婚姻さえ結べば手出しできないってなんでよ!! 助けてよ!!

「というか私こっちで婚姻結べるんですか? 子供も出来ないですよね、というかこちらの国民でもないですよね」

「そこら辺は婚姻できないという法律が無いからな。 実際にオーフェンと春子さんは結婚してるだろ」

「そうだった!!」

身近に居たよ。 結婚してる人!!

でも……

「子供……」

「それは本人同士納得していれば他がとやかく言う事ではないぞ」

やんわりたしなめられた。 そりゃそうだ。
だからこそ春子さんは初めてあっちに行ったとき涙した訳だし。
二人の絆は接する時間の短い私には到底計り知れないものだ。


「まぁ、話は変わるが……後妻にされれば貴族は手出しできなくなるかもしれん。 だが、魔力を回復したい渡り人達はんなこと関係なくその貴族に喧嘩吹っ掛けるかもしれんな。 桜も思い当たる奴ら居るだろ?」

その言葉に思わず灯里や相良さんはじめ廃村メンバーの顔が思い浮かんだ。

「そうなったらその貴族だけでは済まなくなるぞ」

存外に貴族と渡り人の確執が広がることを意味している。

「完膚なきまでに潰して回りそうですね……」

1件や2件どころではなく、噂があるところにも回りそうだね……。

「そうだ。 だから桜が気を付けてくれ。 この国を渡り人の手から守ってくれ」

「分かり……ました……? 私が?」

なんで狙われる私が貴族側の心配しなくちゃならないんだ? 
最後の方意味が分からず頭の上にハテナマークが飛んでしまった。

長谷川さんにそう言われたが、つまりは街に行かなければいい訳で、廃村で倉敷さん達と一緒いつも通りにに開発三昧をすることにした。

出禁されても一緒じゃないか? と気づいたときは、長谷川さんの話からすでに2週間経っていた。

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