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第三章

226話目

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敵対的な勧誘

ヴァンドーム公爵家


「侯爵家が動いたか。 と言う事はどうやら本物のようだな……さて……どうするか」

陛下の命令の後すぐに密偵に指示を出しブリウスト領へ走らせた。
まずはその橋沼桜の素性を探らねばならない。

なんといっても現状名前しか分からなかったからだ。
魔法に関しても胡散臭い。 本当に回復できるのかも怪しい。
ただ、陛下を信じ込ませる何かがあったのも事実。

あの後陛下に撤回の願いを出しても聞き入れてはくださらなかった。
信じられないことに私よりもその渡り人を信じると言う事だ。

……このままではいかん。 国を渡り人に乗っ取られてしまう。
危機感を抱きブリウスト領へ走らせた密偵の帰りを待った。

そこから持ち替えられた情報によるとフォルラーニ侯爵、ドルイット侯爵の手の者がグリフォンにてブリウスト領を訪れ、即日帰還したと言う事。
数日後にフォルラーニ侯爵とドルイット侯爵が直接訪れたことが書かれてあった。

「侯爵が手を出す前にこちらの手の内に入れるべき……か?」

そう思案し、急ぎ陛下へ書状を認めた。





ブリウスト領



「今度は公爵か……」

「大人気なこって」

「要らん人気だな」


陛下からまた手紙が届いた。
丁度長谷川が用事がありこちらに戻ってきている最中に届けられた。

本来であれば一人で見るが、連日の疲労もあり愚痴がてらいてもらった。

この手紙は、陛下の前期族招集の日時が1週間と数日に差し迫った中での手紙だ。
今度の手紙も何か急ぎの要件なのか。
でなければ、全貴族が集まる場に私もオリヴィアと共に招待されているその時に、接触する機会がある筈だ。

それを待てずに送られてきた手紙……嫌な予感しかしない。
軽くため息を吐きペーパーナイフを手に取り封を開けた。

「今度は何だ?」

「……はぁ、今度はヴァンドーム公爵だ」

「要件は?」

「要約すると『陛下の保護下にある渡り人の保護は辺境伯には力不足である。 よって我が公爵家が直々に保護する』 とのことだ。 集まりの時はあんなに毛嫌いしていたのにな」

「渡したら何されるかわかったもんじゃないな。 んで、陛下の考えは?」

「これからも我が領に任せるとのことだ。 もちろん辞退したいならその旨考慮する。 が、その時は桜の保護は王宮で行うとのことだ」

「実質籠の鳥だな。 俺としてはこのままこの領に居てくれた方がありがたいがね」」

「桜が別なところに行きたいというなら止めないが、私の方から出て行ってくれと言う事はしない。 副産物的に、手入れのできない魔獣も間引いてもらえてるからな。 それに桜が今から始めようとしている事は商人の根回し橋渡しが必要だ。 下手なところに囲われると桜がしたいことが出来なくなるうえ……魔力回復できなくなった相良が暴走しそうだ」

「あー……。 否定できないのが恐ろしい」

この国の実力者であるフォルラーニ侯爵と渡り合っていた。
それが暴走する姿を思い浮かべ乾いた笑いが漏れた。


「取り合えず返事は直接陛下にする、社交の場でヴァンドーム公爵に食って掛かられそうだがな」

「でも、フォルラーニ侯爵とドルイット侯爵が今のところ味方に着いたろ? ミラーリア侯爵の動向は分からないが、それを除いたらあとはリシュルー公爵か」

「あぁ。 ベルゲマン公爵も桜がここに留まるのを賛成しておられるから……ここを乗り切れば後はなんとかなりそうだ」

「んじゃあ気を引き締めて頑張ってくれ。 俺のビールの為に」

「誰がお前のビールのために頑張るか!!」

ここが正念場だと気を引き締めてその日を待った。






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