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第三章

199話目

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「悩まれている時間がもったいないですものね、優先順位だけ決めて後は調整していきましょう、サフィリア様のお気持ち優先で行きましょう」

「はい」

こそっと私に耳打ちをしてくれた。

「最終手段はサフィリア様が気になった商品を片っ端から購入していきます。 それで時間短縮して、戻られてから試していただきましょう」

「それは試すのが大変になりそうね」

気合を入れてそう言うと、オリヴィア様は目を丸くされてクスリと笑われた。

お店へ移動するとサフィリア様とオリヴィア様は笑顔のまま固まってしまった。

「ど……どうかなさいましたか?」

「サフィリア様……?」

私と瑠璃さんが恐る恐る二人に尋ねる。

「…………」

「まぁ……まあ」

返答が無い。
表情を伺うと、二人とも目を丸くされている。
不審に思いながら二人の視線の先を伺う。

……棚?

何の変哲もない普通に商品が並べてある棚だ。

何か気に障った? 
頭の中に疑問符が浮かぶ。

先に我に返ったのはオリヴィア様だ。

「――……申し訳ありません、品数の多さに驚いてしまいました」

あっけにとられてたのが恥ずかしかったのか少し頬が赤くなっている。

……あぁ、なるほど。

確かにあっちの世界で、こんなに所狭しと商品が並んでるお店見たことない。
壁に棚が備え付けてあり、そこに数個ずつ並んでるとか、部屋の真ん中に棚が置かれていても、背が低く手に取りやすい。
品数はこちらと比べるほどもない位少ない。

ギャップに驚いていたのか。

「……確かに桜さんの言う通り時間が足りなくなりそうですね」

こんなの予想外です、とオリヴィア様が手を頬に宛がいながらおっとりと呟いた。
私とオリヴィア様の認識に齟齬が発生していたのか、そりゃ当たり前だけどね。

「サフィリア様の気になったものを買っていくスタイルで行きましょう、一つ一つ説明していたらこのお店だけで時間が無くなってしまいます」

「……そうですね。 その方が確実ですね」

最初提案した時は微笑ましい者を見る眼付きだったけど、今は納得してくれたみたい。

「桜さん、ここはどうやって購入するのかしら? 教えて頂けますか?」

「かしこまりました」

そう言ってカゴを手に取った。
そこからは私と瑠璃さんは荷物持ちに徹した。 この店はカートが無い。 すなわち全て手持ち。
私と瑠璃さんがタッグを組み、カゴを3つほど重ね、一つが満タンになったら片方がレジに持って行き会計しそのまま荷物を持ち人目の付かないところに行きアイテムボックスへ収納し戻る。
それをサフィリア様が満足するまで交互に繰り返した。 その結果それぞれ4往復する結果になった。 カゴでいうと8個分、買い物の中身はサプリメントが多めかな、次にシャンプーやリンス。 お会計は私の方だけで8万越え、瑠璃さんの方と合わせたら下手したら20万超えてるかも。

次に向かったのはスキンケア重視のお店。
あちらの世界にもお肌のケアの商品はあったけど種類はそれほど多くない。
こちらの世界みたいに肌の細胞を研究をして作ったと言うよりも、これを付けたらなんだか肌がつやつやしたかも? と言うプラシーボ効果みたいなものが多く、効果が不安定なものらしい。

それでもこの美貌を維持するのだから侮れないかもしれないな……。
サフィリア様を見てそう思う。

サフィリア様は先ほどのお店でも楽しかったらしく、こちらのお店に入る前から上機嫌だ。
色んな商品あるから楽しいよね。

オリヴィア様にも気になった物は遠慮なくカゴに入れてもらったから一緒に購入した。
と言うかこのお店でどれだけお金掛かるんだろう。
意を決してお店に殴り込みに行った。


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