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第三章

136話目

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日帰り温泉や宿泊ではフロント前に出たけど食事はどうだろう?

そう思いそっと目を開ける。

「いらっしゃいませ、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

どうやらお店の入り口みたいだ。

「はい」

そこで予約した自分たちの名前を言い、予約時間を伝えた。

店内は写真通りの明るさが控えめで程よく間接照明で照らされた落ち着いた雰囲気だった。

席に着くまでにそっと領主と長谷川さんの様子を伺う。

長谷川さんは何やらぼんやりとした、心ここにあらずというような様子で付いてきている。
領主と仲良くなるくらいだから長谷川さんもあっちの世界長かったんだろうな、色々情報が流れてきているに違いない。
領主の方を伺うとポーカーフェイスで分からない。 目が合うとにこりと微笑まれた。

なんとなく気まずい思いをしながら店員の後に続き、席にたどり着く。
注意事項も有効だったようで案内された席は4人席だった。

店員が横にずれ、大きな窓が眼前に広がる。

流石高層ビル。

窓際にある席は天空のレストランと称されるだけあって地上の光に負けて霞んではいるが星空が近く、目線の高さには建物が少ない。

下を見れば建物の明かりや車のヘッドライト、信号の光、看板のネオン、多種多様な明かりが海のように広がっておりとても美しかった。

「っ……」

息をのむ音が聞こえ音の方を向くと領主が窓の外を驚いたように凝視していた。 ポーカーフェイスどこ行った。

窓に対して垂直に机が置かれており、私と相良さん、領主と長谷川さんが並びで座った。

うん、普通の椅子だ。

領主の館の客間のソファーを思い出して大丈夫かな? とちょっと思った、が、領主は窓の外を見入っている。 気にして無さそうだ。 なんだこの椅子はとか言われなくて良かった。

机には一応メニュー表が置かれていた。
コースの飲み物はカクテル一つだけ。 ただドリンクメニューは別払いで頼めるらしい。

「飲み物はいかがいたしますか?」

そう領主含め皆に問いかけた。

「あ……あぁ、すまない。 何があるか教えてくれるか?」

「「ビールで」」

長谷川さんと相良さんから即答で答えが来た。 一応コースの飲み物はカクテルなんだからカクテル頼もうよ。

「ビール? エールに似た響きだが?」

「似たようなもんですよ。 あ、すみませんビール4つで」

私もビール?!

情報の整理が終わったらしい長谷川さんが即座に店員を呼びビールを4つ注文した。

店員から私に向けてお客様もビールで宜しいでしょうか? と一応聞かれたので頷いた。 いいよいいよ私もビールで。 こっちのビールは久しぶりでしょうから飲みたいのね、分かりました。 お付き合いしますよ。

注文してから間もなくビールがグラスで4つ、コース料理の前菜と共に運ばれてきた。

前菜は白身魚が使われたマリネ。

……凄い。 マリネが立体的だ。

放射状に並べられた白身魚にはオレンジ色のソースがかけられており、その中心には円形の白い何かで挟まれた野菜、その上にもオリーブやキュウリなどの野菜が盛りつけられている。 白身魚のさらに外側には小さな点状のピンク色のソースがある。 非常に食べにくそうだ。

全員の前に料理を置き終え店員が戻っていく。

「乾杯しましょうか。 誰が音頭取ります?」

この場合一言は領主からなのかな? と様子を伺う。

「橋沼さんにお願いしてもいいかな?」

「私ですか?!」

様子を伺ったら領主から指名されてしまった。
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