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第三章
110話目
しおりを挟む「いらっしゃい。 用事とは何ですか?」
「オーフェンさんお時間頂きありがとうございます」
扉を潜りまずはお礼を言う。
相良さんはそのまま冒険者ギルドに残って解体を見学するらしい。
商業ギルドには私と春子さんで向かった。
席に着くと職員の人がお茶とお菓子を運んできて私たちの目の前に置いて去っていった。
「ちょっとお伺いしたいことがありまして……」
「何でも聞いてください。 ネーアの街の守護者さん」
「うっ……」
ネーアの街の守護者とはあのブレスを防いだのと魔法を防いだことから目撃した冒険者からそう言われるようになってしまったのだ……。
恥ずかしい……穴があったら入りたい。
「だから私隠れて退治してたのよ。 ここの人達二つ名付けるの好きなんだもの」
私の場合消えるまで20年かかったわ……と春子さんに言われた。
それ早く知りたかったんだけど春子さん。
恨めしそうに春子さんを見た。
ちなみに相良さんは直接目撃されなかったことから二つ名は付かなかった。 解せぬ。
テーブルに置かれたお茶を飲み喉を潤し本題に入ることにした。
「えっと……私こっちでやりたい方向性が見えてきたんです。 その相談をしたくてですね……」
「ほうほう」
「まずは私あっちの世界の物を広めたいんです。 つきましてはどうやって広めればいいか考えたいので、ここで売った物の販売先や最終売買先を教えて貰いたいんです」
「つきましては? まあ……良いですよ。 ここで渡り人から買い取ったあちらの世界の物はまず王都にある商業ギルドに買い取られます。 そこから先は大手の商会か貴族になりますね。 ……広めると有りますがどの程度です?」
「出来れば貴族だけでなく一般市民まで。 ……私あっちの世界とこっちの世界が混ざったらどんなものが出来るのか見たいんです。 それには幅広い人達に知って貰う必要があるじゃないですか」
「方法はどうするんです? 何か考えがあるんですか?」
「円を使おうかと思ってます。 あちらの世界の通貨です。 まだ漠然としてるんですが円と交換で品物を売れるようになれば買い占めは出来ないんじゃないかと思いまして……」
「こちらの通貨と交換比率は?」
「ひ……比率? えっと……金貨1枚に対し100円です」
ハンスさんに言われたことをそのまま使っちゃえ。
ふむ……と顎に手を当て考えるそぶりを見せるオーフェンさん。
「そんなにお金あるの? とんでもない金額が必要になるわよ?」
「それは大丈夫です。 用意してあります」
「金貨と円の交換所は何処を使用するつもりですか?」
「そこは考えて無かったです……」
ふむ…とまた考え込むオーフェンさん。
「ならば商業ギルドで請け負いましょう。 この件領主様へ連絡しますね」
「先に王都の商業ギルドへ連絡したら握りつぶされそうなので」
「握り潰す?」
「渡り人の持ち込んだ商品は高価な上人気が高いですからね。それが取り扱えなくなる危機にあの強欲な奴らが黙って見てるわけないじゃないですか。 だから上から圧力掛けます」
「恨まれそうですね」
「こう言うものは何にせよ多少どこかからか恨まれる物ですよ。 敵に回したままにするか味方に付けるかは桜さん次第ですね」
「出来れば味方について欲しいですね……」
人の恨みほど怖いものはないからね。
「弱みを見せたら漬け込まれるだけですよ?」
「恨まれるよりましです」
「ならば落とし所を決めて下さい」
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