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第一章
11話目 新たな渡り人1
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木製のドアをノックすると中からどうぞと声がした。
「お邪魔するぞ」
そう言ってハンスさんはドアを開けた。
「……今度は何を鑑定するんですか?」
「いや、今日は人を紹介に来たんだ」
中に居たのは黒髪黒目同じくらいの歳の男性だった。
「紹介?」
「このお嬢さんだ」
ハンスさんに背中を押されて前に出た。
「渡り人か!」
私と目が合った男性は嬉しそうな声を出した。
……めちゃくちゃ歓迎された。
「初めまして橋沼桜と言います」
「僕は高梨涼だよ。 よろしく」
高梨さんが手を差し出してきたのでこちらも手を差し出して握手をした。
そして四人がけのテーブルに案内されて腰を下ろした。
「飲み物入れてくるけど……橋沼さんはあっちの世界風とこっちの世界風どちらが良い?」
……こっちの世界風って何?
その言葉に興味が湧く。
「こっちの世界風でお願いします」
「了解」
「「えっ?」」
奥の方から水差しとガラス製のティーポットと筒とカップをお盆に乗せ持ってきた。
何をするんだろうとワクワクしながら成り行きを見守る。
ティーポットに水を注ぐとティーポットが浮いた。
「「えっ?」」
「ほう」
「え?」
浮いたティーポットに驚いていたら他からも同様に驚きの声が上がった。
その声に疑問に思い、声を出したハンスさんとユリウスさんをマジマジと見てしまった。
「……初見の私は分かりますがなんで二人も驚いてるんですか?」
「いや……いつもは普通にお茶入れてくるし」
「見事な魔力操作なものでな……」
……どうやら私に対してサービスしてくれたみたいだ。
続いて宙に浮いたティーポットの下に炎が現れた。
そして炎がティーポットを丸ごと包んだ。
「ガラスに火って大丈夫なんですか?!」
「大丈夫大丈夫……これ専用のティーポットだから」
高梨さんが炎を操りながらそう教えてくれた。
ティーポットが熱されてコポコポと水が沸騰する音が聞こえてくる。
「……そろそろ良いかな?」
火が一瞬で消えた。
蓋が浮きそこに茶葉を入れた。
お湯に触れた所から色とりどりの花が咲いた。
「花開き草か。 ……なるほど、これは綺麗だ」
蒸らす間にカップをそれぞれの前に置き、置き終えると空に浮いたティーポットが移動し注いでいった。
注ぎ終えたティーポットはゆっくりとお盆の上に着地した。
「どうだった?」
「凄いです! 空に浮くってどうやったんですか、……属性は……属性魔法じゃなく貰った魔法……ですか?」
「これは風属性魔法だよ。 僕が貰った魔法は鑑定魔法だからね」
「風属性! じゃあ私も出来ますか?」
「練習すればできるよ。 ……ただ、魔力使うからその辺気を付けてね」
そう言われると尻込みしてしまう。 なんてったって魔力は回復しないので。
「高梨さんはどれくらいかかったんですか?」
「ここまでくるのに僕は10000ちょっとくらいかかったかな? 今の風操作浮かすので10、動かすので10かかってるからね。 火属性は1000くらいかな? こっちは火加減の調整だけだったから」
「それくらいかかるのか……」
「いや、魔力操作の練習でそれで済むなら少ない方だよ……」
そう言うのはユリウスさん。
そうなのか? とハンスさんはユリウスさんに問いかけた。
「通常はもっと必要だ、必要な魔力も時間もね。 たった10000で済むのは神様から魔力を渡された渡り人だからだと思うぞ」
神様から魔力は貰ってないけど。
「そうなんですか。 こちらの世界の魔力ってどうなってるんですか?」
「冒険者ギルドの魔術師と呼ばれる人達の平均が500-700、領主に仕える魔術師はおそらく1000以上、王宮に使えるとなると10000以上になる。 私でも5000だ」
「そうなんですか」
渡り人は随分優遇されてるんだな。
「渡り人も魔法は使えるが涼みたいに頻繁に魔法を使う人はまれだよ。 なんてったって回復しないからね。 基本は固有魔法に精を出すんだ」
「僕の鑑定魔法は消費魔力10だからね。 しかも商売としての鑑定料は一個につき金貨1枚。 他の人だと銀貨1枚くらいだから鑑定に訪れる人も少ないしね」
すごい暴利だ。
「涼が鑑定業やり始めた時は既存の鑑定士と揉めてたもんな……。安すぎるって」
「一応相場見て同じ金額でやってたんだけどね……。 他の人は鑑定率60-70%なのに対し僕の魔法だと正解率100%だから……他の鑑定士潰す気かって怒鳴られたっけ……」
「他にも鑑定魔法持ってる人いるんですね」
「おう、いるぞ。 だがこっちの鑑定持ちは生まれながら持ってる。 それを使うことによって育てていかなくちゃ正解率は上がらないんだ。 ……まぁ同じ値段でやられたらたまったもんじゃないよな」
「……それは反省してるよ」
苦虫を噛んだような表情をする高梨さん。
「だから橋沼さんも気を付けたほうがいいよ。 揉めると大変だから」
「私は大丈夫かな? 取り寄せ系だし………あれ? あっちの物って売れるの? 商業ギルド登録した方がいいの?」
「「「取り寄せ系?!」」」
「う……うん?」
「目敏い商人には気をつけること」
「ホイホイ取り寄せない事」
「商人ギルドには登録しておいた方がいいな」
上からハンスさん、高梨さん、ユリウスさんと助言があった。
「取り寄せ系も人気だよな。 2-3年に1人の割合で来てる気がする。 魔法自体は頻繁に来る部類で珍しくはないけど商品が人気過ぎてすぐ帰っちゃうんだよな? ちなみに通販系? それともネットスーパー系?」
「自分が過去に購入した物の取り寄せです」
「良いなぁ取り寄せ。 金貨100枚出すからコーラ取り寄せてくれない?」
高梨さんはおもむろにアイテムボックスから金貨を取り出した。
「お邪魔するぞ」
そう言ってハンスさんはドアを開けた。
「……今度は何を鑑定するんですか?」
「いや、今日は人を紹介に来たんだ」
中に居たのは黒髪黒目同じくらいの歳の男性だった。
「紹介?」
「このお嬢さんだ」
ハンスさんに背中を押されて前に出た。
「渡り人か!」
私と目が合った男性は嬉しそうな声を出した。
……めちゃくちゃ歓迎された。
「初めまして橋沼桜と言います」
「僕は高梨涼だよ。 よろしく」
高梨さんが手を差し出してきたのでこちらも手を差し出して握手をした。
そして四人がけのテーブルに案内されて腰を下ろした。
「飲み物入れてくるけど……橋沼さんはあっちの世界風とこっちの世界風どちらが良い?」
……こっちの世界風って何?
その言葉に興味が湧く。
「こっちの世界風でお願いします」
「了解」
「「えっ?」」
奥の方から水差しとガラス製のティーポットと筒とカップをお盆に乗せ持ってきた。
何をするんだろうとワクワクしながら成り行きを見守る。
ティーポットに水を注ぐとティーポットが浮いた。
「「えっ?」」
「ほう」
「え?」
浮いたティーポットに驚いていたら他からも同様に驚きの声が上がった。
その声に疑問に思い、声を出したハンスさんとユリウスさんをマジマジと見てしまった。
「……初見の私は分かりますがなんで二人も驚いてるんですか?」
「いや……いつもは普通にお茶入れてくるし」
「見事な魔力操作なものでな……」
……どうやら私に対してサービスしてくれたみたいだ。
続いて宙に浮いたティーポットの下に炎が現れた。
そして炎がティーポットを丸ごと包んだ。
「ガラスに火って大丈夫なんですか?!」
「大丈夫大丈夫……これ専用のティーポットだから」
高梨さんが炎を操りながらそう教えてくれた。
ティーポットが熱されてコポコポと水が沸騰する音が聞こえてくる。
「……そろそろ良いかな?」
火が一瞬で消えた。
蓋が浮きそこに茶葉を入れた。
お湯に触れた所から色とりどりの花が咲いた。
「花開き草か。 ……なるほど、これは綺麗だ」
蒸らす間にカップをそれぞれの前に置き、置き終えると空に浮いたティーポットが移動し注いでいった。
注ぎ終えたティーポットはゆっくりとお盆の上に着地した。
「どうだった?」
「凄いです! 空に浮くってどうやったんですか、……属性は……属性魔法じゃなく貰った魔法……ですか?」
「これは風属性魔法だよ。 僕が貰った魔法は鑑定魔法だからね」
「風属性! じゃあ私も出来ますか?」
「練習すればできるよ。 ……ただ、魔力使うからその辺気を付けてね」
そう言われると尻込みしてしまう。 なんてったって魔力は回復しないので。
「高梨さんはどれくらいかかったんですか?」
「ここまでくるのに僕は10000ちょっとくらいかかったかな? 今の風操作浮かすので10、動かすので10かかってるからね。 火属性は1000くらいかな? こっちは火加減の調整だけだったから」
「それくらいかかるのか……」
「いや、魔力操作の練習でそれで済むなら少ない方だよ……」
そう言うのはユリウスさん。
そうなのか? とハンスさんはユリウスさんに問いかけた。
「通常はもっと必要だ、必要な魔力も時間もね。 たった10000で済むのは神様から魔力を渡された渡り人だからだと思うぞ」
神様から魔力は貰ってないけど。
「そうなんですか。 こちらの世界の魔力ってどうなってるんですか?」
「冒険者ギルドの魔術師と呼ばれる人達の平均が500-700、領主に仕える魔術師はおそらく1000以上、王宮に使えるとなると10000以上になる。 私でも5000だ」
「そうなんですか」
渡り人は随分優遇されてるんだな。
「渡り人も魔法は使えるが涼みたいに頻繁に魔法を使う人はまれだよ。 なんてったって回復しないからね。 基本は固有魔法に精を出すんだ」
「僕の鑑定魔法は消費魔力10だからね。 しかも商売としての鑑定料は一個につき金貨1枚。 他の人だと銀貨1枚くらいだから鑑定に訪れる人も少ないしね」
すごい暴利だ。
「涼が鑑定業やり始めた時は既存の鑑定士と揉めてたもんな……。安すぎるって」
「一応相場見て同じ金額でやってたんだけどね……。 他の人は鑑定率60-70%なのに対し僕の魔法だと正解率100%だから……他の鑑定士潰す気かって怒鳴られたっけ……」
「他にも鑑定魔法持ってる人いるんですね」
「おう、いるぞ。 だがこっちの鑑定持ちは生まれながら持ってる。 それを使うことによって育てていかなくちゃ正解率は上がらないんだ。 ……まぁ同じ値段でやられたらたまったもんじゃないよな」
「……それは反省してるよ」
苦虫を噛んだような表情をする高梨さん。
「だから橋沼さんも気を付けたほうがいいよ。 揉めると大変だから」
「私は大丈夫かな? 取り寄せ系だし………あれ? あっちの物って売れるの? 商業ギルド登録した方がいいの?」
「「「取り寄せ系?!」」」
「う……うん?」
「目敏い商人には気をつけること」
「ホイホイ取り寄せない事」
「商人ギルドには登録しておいた方がいいな」
上からハンスさん、高梨さん、ユリウスさんと助言があった。
「取り寄せ系も人気だよな。 2-3年に1人の割合で来てる気がする。 魔法自体は頻繁に来る部類で珍しくはないけど商品が人気過ぎてすぐ帰っちゃうんだよな? ちなみに通販系? それともネットスーパー系?」
「自分が過去に購入した物の取り寄せです」
「良いなぁ取り寄せ。 金貨100枚出すからコーラ取り寄せてくれない?」
高梨さんはおもむろにアイテムボックスから金貨を取り出した。
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