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第一章

10話目 街歩き

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翌朝

「「おはよう」」

お酒を飲み過ぎた灯里は顔色が悪かった。

萎れかけのお花みたいにしおしおだった。

スポーツ飲料をアイテムボックスから取り出して灯里に手渡す。

「ありがとう」

灯里はカラカラの大地に水を与えるかの如く一気に飲み干した。

そこから幾分元気になった灯里は身支度するとお礼を言って冒険者ギルドに出勤して行った。

私は片付けを後回しにして二度寝をした。




二度寝から覚めると、窓から見える日は高くなっていた。

うーんと背伸びをし固まった筋を伸ばす。

アイテムボックスからスポーツドリンクを取り出して喉を潤す。

ぼんやりした頭が覚醒してくるとお腹も減ってきた。

どうしよう隣の食堂でご飯もらおうかな。

降りるのもめんどくさいなと思いしばし悩む。
その間もなり続けるお腹に耐えかねたので、最低限の身支度をして隣の食事処でお昼ご飯を食べた。

食べたものは野菜スープとパンだ。 野菜スープに入っている野菜は柔らかく煮込まれベーコンの味もいい塩梅だった。
お腹も膨れると今度はお風呂に入りたくなってきた。

……この宿にはお風呂がない。

宿のおかみさんに共同浴場の場所を聞き近くにあるというので入りに行ってきた。

スッキリして宿屋の自室に戻るとベッドに腰掛けた。

改めて神様から貰った取り寄せの魔法を見てみよう。

昨日は衝動的にチョコとツマミに使ってしまった。

おかげで操作方法はバッチリだ。

スクロールして見ていく。 こうしてみると今まで色々な物を買ったんだなと実感する。

小さい頃に買った駄菓子や文房具、小学校の頃にハマった知育玩具やカードゲーム、懐かしいキャラクター、
昔購読してた雑誌、家族旅行で買ったフサフサしたよく分からないキーホルダー、動物園で購入した動物の餌、好きだった歌手のCD、電車の切符や入場券等食べ物以外にも色々あった。

ってかこれってガチャガチャやUFOキャッチャーの景品まで購入扱いになるんだ。

他にもお店で食べたパスタやコーヒー、テイクアウトした洋菓子、ゲーム機なんかもある。

職場の人の結婚祝いに買ったカタログギフトなんかもあった。

流石に貰い物は一覧になかった。 お土産で貰ったお菓子美味しかったんだけどな。

取り敢えず観光で行った牧場のアイスを取り寄せた。

搾りたての牛乳を使って作られたアイスはミルキーでコクがあって美味しかった。

……よし。 散策するか!

昨日来ていた服はビニール袋に入れ一まとめにしアイテムボックスに入れておき、新しい服に着替えた。

宿屋のおかみさんに鍵を預けて街へと繰り出した。


まずは大通り、ギルドから宿屋へ向かった道も大通りだ。 宿は大通りから一本中に入った場所にあるのですぐそばだ。

ここの交通量は多かった。

移動手段は馬車が多いみたいだ。 というか馬ってこっちにもいるんだ。 魔獣だけじゃないんだねと思いながら歩道を歩く。 道は石畳、街路灯なんかもある。 電気はあるのかな? 定番だと魔石とかかな?

家とかお店とかは木造りだったり煉瓦だったり塗壁だったりとまちまちだ。

路面店には野菜とか果物が売られてる。 見たことない物ばかりだ。

オレンジっぽい見た目なのに青かったりトゲトゲしてたりスイカのような大きさなのに張りがなくダレてたり、やたら光沢があったりともすれば見慣れた果物なんかもある。

興味を惹かれてマジマジと覗き込んだ。

「お嬢さん渡り人かい?」

「そうですよ」

恰幅のいいおじさんに話しかけられた。

「なら何かあちらの世界の果物を持ってはないかい?」

「ありますよ」

「おお! 良ければ店頭に並んでいるものと交換してくれないかい? もちろん何個か持ってっていいからさ!」

ありますと言ったもののりんごと梨くらいしか無いな。
ゴソゴソとアイテムボックスを漁り取り出す。

「これでも良いですか?」

「おお! いいよいいよ! りんごとなしだね!」

おじさんに手渡しトゲトゲした果物を数個とオレンジ色の瓜に似たものを数個もらった。

「これはドリィの実とパプーの実だよ。 食べ方を教えてあげよう」

奥からナイフを持ってきて実演してくれた。

ドリィの実は中の液体が溢れないように上の方を切り液体を飲む。 飲み切ったらヘラで中身をこそげ落とすようにして食べるらしい。
中身をコップに分けてくれた。

液体の味はココナッツとドリアンを足して二で割ったような味だ。
匂いは甘い。
青果店のおじさんが木べらを渡してくれたのでこそげ落として食べてみた。
滑らかな舌触りでこちらはドリアンを薄くした感じだ。

「食べやすいですね。するする食べれそう」

「そうかそうか。じゃあ次はパプーの実だね」

パプーの実は真っ二つに割られた。
中も濃いオレンジ色だ真ん中付近に種が入っている。
種を切り落として皮を剥きフォークに刺して渡してくれた。

パプーの実の食感は柿だ。 味はバターカボチャに似てる。 こちらも甘さ控えめだが食べやすい。

「こちらも面白い味ですね。 もうちょっと寝かせたらもっと甘くなりそう」

「よく気付いたね。こちらの食べ頃は後2-3日ってとこだ。 渡したパプーの実も2-3日したらもっと甘くなるよ」

「ご馳走様です。 ありがとうございました」

パプーの実を食べ終えるとフォークを返してお礼を言った。

「こちらこそりんごとなしありがとう」

ホクホクと笑顔で青果店を後にした。

あっちには花屋、こっちはパン屋、古着屋もある。異世界らしい道具屋も。 路面店に屋台あっちこっちをフラフラと歩き回った。

そんな中……

「ハンスさん!」

「お、桜か。 街の探検か?」

「そうなんです」

昨日街まで案内してくれたハンスさんとユリウスさんが居た。

「あれ? 今日はクイナさんとイリスさんは居ないんですか?」

「あー……そうだな……」

「イリスは今クイナに叱られてる」

「え?」

気まずそうに視線を彷徨わせたハンスさん。

さらっと言うユリウスさん

そしてハンスさんが理由を教えてくれた。

「ウチらのパーティーは一軒家を借りて暮らしてるんだ。 共同スペースとそれぞれ一部屋ずつ個室がある。 ……で、クイナが昨日桜から貰ったやつあっただろう? あれを部屋で眺めてたらイリスが入ってって許可も得ず食べたんだ。 それでクイナが激怒したってわけ」

「私たちは二人の巻き添えを喰らわないように次のスタンピードに向けて買い出しに来たのさ」

「きっと落とし所はその辺りだろうからな」

「あーなるほどー」

クイナさん気に入ってたみたいだからね。 私がそれやられたらグーパンチお見舞いしちゃうかも。

「お、そうだ。 桜はこれから時間あるか?」

「ありますよ?」

「昨日言ってた渡り人紹介してやるよ」

「良いんですか?」

「おう」


そしてハンスさんに案内してもらったのは街の外れの方にある一軒家だった。
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