26 / 26
26話目
しおりを挟むバッチ来い。
「拡音」
そして新しく拡声器代わりの魔法を使用した。
どんどん集めていこ。
私が歩く足音が何倍にもなって4階に拡散されていく。
天井に止まっていた小蝙蝠にも届いたらしく数十秒後には凄い数の小蝙蝠が音の発生源である私に向かって殺到してきた。
バチバチバチバチッ!!!!
ギィーギィー!!!!!
視界が確保されないのでゆっくりと歩いていく。
ゆっくり歩くせいかお腹の減りも気になった。
アイテムボックスから菓子パンを取り出しむしゃむしゃと咀嚼しながら歩く。
菓子パンの匂いに触発されたからか近くに居た小蝙蝠の気性が荒くなった気がした。
私の周りの音も魔法によって拡散されさらに遠くの小蝙蝠にまで届いていった。
『レベルが上がりました』
「やった」
今日はもう上がらないかなと諦めかけたレベルがあがった。
魔石や素材は捨て置く。
数が膨大な為だ。
ゆったりと小蝙蝠達と戯れながらセーフティーゾーンにたどり着いた。
セーフティーゾーンに入れない小蝙蝠達はギィギィと怒っている。
「静穏」
流石にうるさいので黙らせた。
音が聞こえなくなった小蝙蝠達はしばらくしたら居なくなっていた。
セーフティーゾーンの奥側に行き用を足す。
範囲浄化を唱え別の岩陰に移動する。
ブルーシートを敷き、残しておいたアッシュウルフの毛皮を敷く。
その上に背負っていた荷物を下ろすとエアベッドを取り出した。
(寝心地を確認しなきゃ)
ウキウキと空気を入れる。
(……意外と時間がかかる)
シャコシャコと空気入れを押す。
ペタンとしていたエアベッドは少しずつ厚みが出てきた。
(これで……どうかな)
見た目は十分な厚さだ。
どれやとその上に腰を下ろす。
お尻が地面についた。
(まだ柔らかい……)
まだ空気が足らないのかとややめんどくさくなってきた。
エアベッドから降りるとまたシャコシャコと空気を入れ始めた。
時刻は0時を回った。
(ようやく固くなった)
バフンバフンと上に座り上下に揺れてみる。
ちゃんと弾力が出た。
ごろりと寝転がる。
(あー……ベッドだ)
ついでにリュックからブランケットを取り出し体に被せた。
ここ数日岩に背を預ける形で就寝していたからかすぐに眠気がやってくる。
(……あのベッドで寝ることはもうないんだ)
目を閉じて研究所生活を思い出す。
(もう全部どうでもいい。 あいつら全員くそくらえ)
過去のことだとバッサリ切り捨て悪態を吐いて眠りに落ちた。
(ベッドの効果凄い)
朝7時過ぎ。
むくりとベッドの上で上半身を起こす。
頭をぼりぼりと掻いて大きな欠伸をする。
(……寝すぎた)
よいしょとエアーベッドから足を下ろし腰かける。
アイテムボックスからクーラーボックスを取り出し開けると、一人用のコンロを取り出した。
(飲み物の準備しよう)
鍋にお湯を沸かし昨日持ってきた保温ボトルを出す。
(お湯多い?)
保温ボトルの蓋を開けほうじ茶のティーパックの糸を外に垂らしお湯を注ぐ。
(……1個じゃうっすい)
後からもう一個足して蓋を閉じた。
もう一つ分には足らないけどお湯が余った。
鍋に直に緑茶のティーパックを入れる。
数分置いておき色が十分出たところでもう一つの保温ボトルに注いだ。
ほうじ茶の方のティーパックも取り出し蓋を閉めアイテムボックスに収納する。
使い終わったティーパックは穴を掘って捨てた。
(……こういう時ダンジョンって便利だよね)
ゴミはダンジョンが回収する。
今では企業ようにゴミ捨てダンジョンなる物もあると聞いたことがある。
一般人が立ち入れない。 ゴミ捨て専用のダンジョン。
産業廃棄物から果ては劇物まで。
(まぁ、私には関係のない事だ)
掘った穴を埋め戻しエアーベッドに腰を下ろし緑茶を啜る。
(あったかいお茶美味しい)
ほうっと心が和む。
ついでに朝食を簡単に済ませてエアーベッドの空気を抜き畳む。
(……なんか不格好? こんなんだっけ? リュックサックに入……らない……)
絶望した。
持ってきたときは小さく畳まれていたはずなのに、同じように畳んだはずなのに倍くらいの大きさになっている。
(どうして……どうしてこうなった……)
がくりとうなだれる。
(まって……と言う事は……)
クーラーボックスに一人用のコンロを仕舞いアイテムボックスに収納する。
続いてアッシュウルフの毛皮を畳み、アイテムボックスに収納しブルーシートも同じように入れようとした。
(ぎ……ギリギリだと)
レベルアップにより余裕が出た、はずだった。
(何かを入れ替えてアイテムボックスに収納しようと思ったが駄目だ。 入らない)
しょうがない……とエアーベッドだけ腕に抱えて持って行くことにした。
(レベルが上がったらアイテムボックスに放り込む。 それまでの辛抱だ)
用を足し自身にさて出発するかと範囲浄化を施し防御結界を張り拡音をかけセーフティーゾーンから外に出た。
ギィギィギィ!!!!
途端に現れる小蝙蝠。
バチバチと防御結界に当たって自滅していく。
視界が悪いためゆっくりと壁にぶつからないよう歩く。
(……中々上がらないな)
これまでダンジョンでレベル上げをしたおかげで重さ感じないのだが、両手が塞がり不便なことこの上ない。
(5階にたどり着く前に上がるかな……?)
流石に新しい階でモンスターが変わることを考慮すると両手は開けておきたい。
出来る限りゆっくりと進み何とか5階に上がる前にレベルを1つ上げることが出来た。
アイテムボックスからブルーシートを取り出し荷物の整理をする。
(いけるか? ちょっと空いたから……ここをこう詰めて……あ、いけそう!!)
ギュウギュウと荷物を押し込み無理やり隙間を空けるとそこにエアーベッドを押し込んだ。
(閉じろ閉じろ!!)
急いでアイテムボックスを閉じる。
(ふー何とか詰め込めた)
やれやれとブルーシートに腰を下ろしリュックから保温ボトルを取り出した。
(ん、まだあったかい)
暖かい緑茶が体に沁みる。
少し休憩し魔力が回復させると竹串をポケットに、ナイフを手に取り5階へ足を踏み入れた。
5階に突入してから一本道を進む。
(……分かれ道無いし……モンスターも出てこない。 なんだろう)
辺りをきょろきょろしながら前へ進む。
すると大きな扉が目の前に姿を見せた。
0
お気に入りに追加
90
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
隠密スキルでコレクター道まっしぐら
たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。
その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。
しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。
奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。
これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。
五色の掟
影猫
ファンタジー
魔法の適性が人体に影響を及ぼす世界で――。
下民であり、黒髪黒眼であるカミシロ・ロロは周りから『呪われた子』として蔑まれ、七歳の頃には親にも捨てられてしまう。あてもなく彷徨うロロを、ひとりの老人が拾った。
老人はロロを育て、敵に打ち勝つ戦術を叩き込み、果てには【魔法の極意】を死に際に授けた。
それからというもの、幾度もの死線をくぐり抜けたロロはその強さを生かして、様々な依頼を引き受ける『何でも屋』を営むことに。
そんなロロのもとに、魔法省の男から依頼が舞いこむ。
男は言った。
「ロンバルディア魔法学園である仕事をしてくれれば、三億ギニー支払う」と。
依頼の内容は――高位貴族が集結するロンバルディア学園で生徒会長になり、貴族と下民との差別をなくすこと。
簡単な仕事で大金が稼げるとおもったロロは依頼を承諾して、さっそく魔法省の推薦で学園に入学する。
しかしロロはそこで思わぬ悪戦苦闘を強いられることに。
生徒会長になるには様々な関門があったのだ。
竜焔の騎士
時雨青葉
ファンタジー
―――竜血剣《焔乱舞》。それは、ドラゴンと人間にかつてあった絆の証……
これは、人間とドラゴンの二種族が栄える世界で起こった一つの物語―――
田舎町の孤児院で暮らすキリハはある日、しゃべるぬいぐるみのフールと出会う。
会うなり目を輝かせたフールが取り出したのは―――サイコロ?
マイペースな彼についていけないキリハだったが、彼との出会いがキリハの人生を大きく変える。
「フールに、選ばれたのでしょう?」
突然訪ねてきた彼女が告げた言葉の意味とは――!?
この世にたった一つの剣を手にした少年が、ドラゴンにも人間にも体当たりで向き合っていく波瀾万丈ストーリー!
天然無自覚の最強剣士が、今ここに爆誕します!!
クラスまるごと異世界転移
八神
ファンタジー
二年生に進級してもうすぐ5月になろうとしていたある日。
ソレは突然訪れた。
『君たちに力を授けよう。その力で世界を救うのだ』
そんな自分勝手な事を言うと自称『神』は俺を含めたクラス全員を異世界へと放り込んだ。
…そして俺たちが神に与えられた力とやらは『固有スキル』なるものだった。
どうやらその能力については本人以外には分からないようになっているらしい。
…大した情報を与えられてもいないのに世界を救えと言われても…
そんな突然異世界へと送られた高校生達の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ウィングカッターにしたなら最後まで通して欲しい。
……レベルアップで新技が?
でも、魔法学校、しばらく訓練すれば普通に魔法使えてたかも知れませんね。
(資格試験の対策ばっかりやってそう)
理詰めの描写が良い緊張感を出していて良いですね!