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5話目

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(え? 傷が治ってる? ヒールが使えた? なんで……あ!!)

思い当たるのは先ほどのレベルアップ。


(か……鑑定!!)

通常であれば鑑定はスキルを持った一握りの人しか使うことが出来ない。
私はあちらの世界で鑑定魔法が使えていた。

ステータスには反映されずにこちらに来てからは使えなかったが……。
回復魔法が使えるのならばこちらも使えるはず。

そう思い急いでステータスを確認すれば、1だったレベルが今見たらレベル10にまで上がっていた。

この世界では鑑定でレベルとスキル、覚えた魔法は見れるけれどもHPやMPと言った身体能力の上昇なんかの数値は出ない。

(鑑定魔法が使える……でも使える魔法の欄は空欄だ。 鑑定魔法がつかえるって事は……もしかして聖女だったころの魔法も使える? さっきヒールも使えたし。 でも……なんで突然……レベルが上がったから? ……スキルは変わりない……ん? なんだこれ。 New?)

スキルの横に何かマークが出ていた。
目を凝らすと【スキル:医療】の下に【スキル:聖女】が出た。

(え?)

目が点になった。

(スキルツリーみたいに聖女が生えてる!!!! 何この隠しコマンドみたいなやつ!!……そういやさっきアップデートが完了したって聞こえたな。 ……それか?!)


仕組みはよく分からない。
でもこれはチャンスだ。

(アイテムボックスオープン)

あちらの世界で使っていたアイテムボックス。
魔力に応じて収納できる魔法だ。
開く際と閉じる際に魔力が必要になる。

(中身は……空か。 当然だよね、えっと……大きさは……クーラーボックス1個分ぐらいかな?)

アイテムボックスの中に手を入れ広さを確認する。

あちらの世界で死ぬ間際までアイテムボックスに荷物が入っていた。
その中には色々アイテムが死蔵されていたがどうやら消失してしまったようだ。
一度死んでいるんだし当然と言えば当然か。
まぁ、必要な物は譲ってあったし必要の無い物ばかりだったけど。

それは置いておいて。
でもアイテムボックスは使用出来た。

(これは逃げ出せるチャンス? この混乱に乗じて。 あの人達だって私が死んだものと勘違いしてるし。 逆に捕まったら今度こそ外に逃げ出せないかもしれない。 だってあの人達が望んでた聖女の魔法が使えるようになってるし。 人を殺そうとした人達に飼い殺しなんて絶対嫌だ)

今後の選択肢が増え、聖女の魔法が使えると分かり幾分気持ちに余裕が出来た。

(いくら給与が良くても私を殺そうとした人達の為になるなんてまっぴらごめんだ。 こうなりゃこのままダンジョンに潜ってレベルを上げて逃げるか)

そう思ったのには理由がある。
探索者でSランクまで行ければ国に縛られない。
何故ならばそこまでの実力者になれば国とておいそれと手出しが出来ないとテレビの特集で見た覚えがある。
敵に回したら下手をしたら大打撃を受けかねないからだ。

(……となると目標はS級、それまでは聖女の力を隠したほうがいいか)

異世界ではそれなりに尊重してもらえて互いに心地よい距離で過ごせたけど……問答無用で拉致ったところや、役に立たないから殺そうとした人達とそんな関係を築けそうにないしね。
というか私の心情的に嫌。


そう決まれば、まずは他のテントにある備蓄庫を目指す。
アイテムボックスに食料を詰め込みダンジョンに潜ることにした。

食料の備蓄庫はモンスターに荒らされていたが食べれるものも残っていた。

(水も食料も残ってる……まてよ……)

「水生成《アクアクリエイト》」

そう呟くと手のひらから水が滴った。

(水魔法も使えるね。 となると食料を多めに持って行ける)

アイテムボックスが使えると言ってもせいぜいクーラーボックス1個分だ。
入れられる量にも限度がある。
モンスターを倒して魔力量が増えれば容量は増やせるが。
その為にここいら辺に居るモンスターを討伐するのでは敵に塩を送ってしまうことになる。

(日持ちしそうな食べ物を詰め込もう)

幸いダンジョンを踏破するのに日数が掛かると予測されていたみたいで物資の数は多かった。
フリーズドライのスープ、袋麺、容器も必要か。 使い捨てより繰り返し使えるやつの方が良い?それと……水を出せると言っても入れ物にペットボトルは欲しい。 水も数本入れておこう。
小さなナイフもある。 地べたに座るのは嫌なのでブルーシートも入れる。

(テントや寝袋は無いか……土魔法どのくらい使えるかな?)

懐中電灯に電池必要そうなものを片っ端から詰め込んだ。
着替えもあったので今まで着ていた物から動きやすい服へと着替える。
髪を束ね帽子の中に突っ込み、顔を隠すためマスクを着けた。
スマホの電源は落とした。 GPSでも追えないはずだ。

(こんなものでいいかな……よし、ダンジョンアタック開始だ!!)


そして私はダンジョンに向かって駆け出した。
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