29 / 36
未来編 思春期くん。 2 (葵)
しおりを挟む藤川葵、15歳。高一。α。
九州の、とある地方都市に住んでいる。
理想のタイプは母である藤川洸。
尊敬してるのも、藤川洸。
そして、憧れてるのは、藤川丞。
子供の頃から圧倒的に格好良い、僕の父親で、目標とする人だ。
なんだけど…。
「藤川のお父さんって、すんげえカッコイイってマジ?」
そんな事を 今年、高校に入学して新しい交友関係が広がってから、よく聞かれるようになった。
「αなんだよな。葵と同じ。葵にそっくり。」
中学からの友達は父さんを見た事があるから、そんな事を言っちゃうし。
と言うか、それを言うなら僕が父さんにそっくり、って言うべきじゃない?
何時の間にか、僕が一言も発さない内に、僕と父さんの事は知れ渡ってしまった。
元々、公立校ではαは少ないから、噂好きには格好のターゲットなんだろうな…。
仕方ないなあ、まあ今の所害は無いし…
と放置していたんだけど、つい最近、そうも言ってられない事態になってしまった。
高校に入学してから同じクラスになって仲良くなった児玉くん…。
多分、β。
共学なのに何でわざわざ男子を…って思う?
でも仕方ないんだよ、児玉くん、マジで可愛い。
児玉くんは、ヤンキーに憧れている。
小柄で華奢で中学生みたいなんだけど、髪を明るいアッシュグレーにしてきたりして、ピアス(風イヤリング)は勿論いくつも付けてるし、頑張ってる。
形から入るタイプらしい。
なんか三白眼に憧れてるらしいんだけど、それはちょっと無茶かな…。
黒目がちのでっかい目してるから…。
カラコンとか入れてみたら?ってアドバイスしてみたけど、それは怖いから嫌なんだって。可愛くない?
とにかく不良という存在に対するリスペクトが凄くて、よりそこに近づく為に頑張ってるのがいじらしい。
わざとぶっきらぼうに話そうと練習してたり…。努力家だ。
でもなあ…。
圧倒的に顔が可愛すぎて、空回りしてるんだよね。
あと2年くらいしたら、児玉くんも育つのかもしれないから、そうしたら似合ってくる可能性もあるかも。
育った児玉くんも、美人なんだろうなあ。
同クラだから、不良に憧れているにしては真面目に授業を受けてる児玉くんには毎日会えて、幸せ。
猛アピールが実ったのか、最近はすごく距離が縮んで仲良くしてくれてるし、嬉しい。
そんな感じで毎日楽しく片想いライフを送ってたんだけど、ある日のお昼時、そんな児玉くんの愛らしい唇からとんでもない言葉が飛び出してしまった。
「藤川の親父さん、すんげえかっきいαなんだってな。大人になった藤川って感じ?見てみたいなあ。」
「…ソンナコトナイヨ…。」
「いいなあ…背も高いんだろ?憧れる~。」
「……ソウ?」
……。
マズイよね。
これ、マズイ展開じゃない?
児玉くんが父さんに会ったら、父さんを好きになっちゃうかも…。
僕はお弁当(自作)のタコさんウインナーを児玉くんのお口にあ~んしてあげながら、思った。毎日多目のおかずは早くおっきくなりたい児玉くんへの餌付け用だ。
だってウチの父さん、同級生の親よりだいぶ若めだし、息子の目から見てもかなりイケてる大人の男。
…母さんの尻に敷かれてるけどさ…。
「藤川?」
上の空で白飯をつついてたら児玉くんが心配そうに覗き込んでくる。
ぐはっ、かわいっ!!!!!
なんでそんなにおっきなおめめなの?!
高校生なのに!!
「どした~?」
テレビで見るアイドルなんかより全然可愛い…。鼻を押さえて天を仰ぐ僕。
駄目だ、鼻血を出してしまえば変態扱いされて敬遠されてしまう。
「…うん、なんでもない。大丈夫。」
気合いで興奮をおさめてにっこり笑う。
児玉くんが小さな胸を痛めてしまったら大変だ。
「そう?」
児玉くんは座り直して、
「藤川って時々そんな風にしんどそうにしてるから心配。調子良くなかったらあんま無理すんなよな。」
と言いながら、ひょいっと僕の卵焼きを指でつまんで自分の口に放り込んだ。
そして、超真面目な顔で言った。
「お前が無理しなくて良いように、俺、自分で食うからさ…。」
君のそういうとこ、マジで好きだ。
115
お気に入りに追加
3,875
あなたにおすすめの小説
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
番、募集中。
Q.➽
BL
番、募集します。誠実な方希望。
以前、ある事件をきっかけに、番を前提として交際していた幼馴染みに去られた緋夜。
別れて1年、疎遠になっていたその幼馴染みが他の人間と番を結んだとSNSで知った。
緋夜はその夜からとある掲示板で度々募集をかけるようになった。
番のαを募集する、と。
しかし、その募集でも緋夜への反応は人それぞれ。
リアルでの出会いには期待できないけれど、SNSで遣り取りして人となりを知ってからなら、という微かな期待は裏切られ続ける。
何処かに、こんな俺(傷物)でも良いと言ってくれるαはいないだろうか。
選んでくれたなら、俺の全てを懸けて愛するのに。
愛に飢えたΩを救いあげるのは、誰か。
※ 確認不足でR15になってたのでそのままソフト表現で進めますが、R18癖が顔を出したら申し訳ございませんm(_ _)m
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
結婚式当日に、婚約者と実の弟に駆け落ちされたΩのお話
雷尾
BL
今回は運命の番サイド。ご都合展開かつ登場人物全員多分歪んでいます。
復讐はやらないよりやったほうがスッキリするからやっといた方がいいですよね系のお話です。
推奨メンタル
・略奪愛絶許な方
・浮気した側はそれなりに報復されてほしい方
・浮気した奴は許せないが、それでもまだ(浮気した奴に)心が残っていてもやもやイライラしている方
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる