勇者様の攻略対象は勇者様

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勇者に捕獲される勇者

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 こいつぁ大事になってきたぜ…。

 
 俺はアスランを撒いて城の屋根にいた。勿論、華麗に身軽に上がった訳では無い。
 えっこらよっこら塔の中の長~い螺旋状の階段を上がり、此処へ来たのである。
 つーか、もう他の場所ではアスランにアタリがつけられてて、1人になれる場所なんか、多少のリスクを犯さなければ確保出来なくなっていたのだ。


 赤と言うかオレンジ色の、なんか御伽噺っぽいメルヘンな屋根の上は瓦っぽい。もう良いか、メルヘン瓦で。その上に仰向けに寝転がり、ピンク色の空を眺めながら俺は思った。

 ここ傾斜、結構きついな、と。

 昨夜聞いたアスランの言葉が頭の中にリフレインしている。
 ガッツリ目の子作りセックス迄。

…俺に出来るだろうか、そんなガッツリ目の…いや出来るかじゃねえな。
 ヤられて耐えられるだろうか、俺のこのガラス細工の如く儚い穢れを知らぬアナルに、あのアスランの凶悪なブツを…?


(…肛門裂傷と内臓への負荷で死ぬかもしれん…)

 そもそもだが、異世界出身の受精の為の生殖器官を持たぬ男の俺に子が宿るとは思えんし仮に宿っても産みたくない。出産は鼻からスイカと聞く。俺は鼻からスイカを出す趣味は無い。そういうアレはこの世界の男に託したい。
 ガッツリ目をやらずともエンディングを迎えられる抜け道は無いものか。           
 あと元の世界に帰りたい。
 ピンクのとち狂った空の色は、もしかしてアハ~ンなBLの世界観の現れなのだろうか。鬱だ。

 俺はぼんやりと、何時の間にか腹を撫でていたりしてハッと我に返る。
 男でも、相手の男の子供を産みたいと思えるのは、よっぽどその男に惚れているからなんだろうな。
俺には一生わからない心境だろうが…。


「あ」

「あ?」

 視界に何かが入って来たと思ったら、ルーダのメガネっ子魔道士が杖に乗ってゆっく~り飛んできた。何時見ても中学生みたいなショタみ溢れる魔道士だ。
 とっくに30越えてるって聞いた時は顎が外れかけたぜ。
 そんな事を思いながらふよふよ此方へ向かってきながらキョロキョロしている魔道士を眺める。

 すると、はた、と魔道士が俺を見た。そして俺と目が合った瞬間、声を張り上げた。

「いましたァ~~~!!!」


…オイ、メガネっ子てめぇ。





恐ろしい速力で階段を走破してきたアスランによって屋根の上にて捕獲された俺は、新たに開拓した憩いの場を数分で失った。




「もう。危ねぇだろ、落ちたらどうすんだ。」

歳下にめちゃくちゃ怒られる。しかし反論出来ないのは、確かに俺も彼処の傾斜はやばいと思っていたからだ。

…いやまあそれはどうでも良いんだけど、何故俺はアスランにベッドの中で横抱きにされているのか。


「頼むから目の届くとこにいてくれ。不安になる。」

「は?不安?」

いやどうしたんだお前…。

抱き締められて暑苦しいんだが、何だか振り解けない雰囲気なんだよなあ。
そんなに心配かけてしまったんだろうか、ほんの小一時間いなかった程度で。


「…何で急にそんなに心配性になってるんだ。」

俺は困惑しながら聞いてみた。確かに当初よりは少し親密度は上がったけれど、俺としてはあくまで近所の少し可愛がってる子って程度の認識である。
幼馴染みや同級生の弟、みたいな?
アスランの方から見れば、俺は単なる攻略対象なんだろうが。

「あのさぁ…。」

アスランは俺の肩に顔を埋めて溜息。

「輝、ニブチンって言われるだろ。」

ドキッ

「そ、そんな事は…。」

言われる。自分としては空気を読める男のつもりなのに、鈍感ってよく言われる。何故それを。


「俺、ずっと輝にタイプだとか好みだとか、言ってたよな?」

「……まぁ?」

「言ってたよな?」

「…はい。」

そりゃま、聞いたが。

「俺みたいな見た目が好きなんだよな?だからそれにそぐった外見を持つ俺が召喚されたんだろうな?」

ゲームがより近い人間をキャラとして召喚んだんだと俺は推測している。
が。

「まあ、そうかもしんないけど。でも此処にいる輝は生身でキャラなんかじゃないし、設定じゃわからない輝独自の性格だってあるだろ。
外見だけで好きになる訳ないだろ。」

「は?あ?好き?」

「好きだよ。」

「あ、そうか、攻略対象の好感度上げ…。」

「違うっての!!
あ、いや輝からの好感度は欲しいけど!!」

アスランは本日2度目の長~~~い溜息を吐いた。


「もう攻略とかそういう事じゃないんだけどなあ…。」



んー…。すまんもうちょいわかり易く。





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