勇者様の攻略対象は勇者様

Q.➽

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叩き落とせ、奈落。

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「ゲームのゴール?
ガッツリ目の子作りセックス迄だな」

と、アスランは笑った。





 この世界に来てかれこれ2週間。俺はやはり、剣にも魔法にも一向に才が見えない。
 メンバーは集まったが、本当に魔王討伐の旅とやらには行けるのだろうか。
 平和過ぎて、ぶっちゃけそんなに魔王倒す意味見い出せなくね?という気持ちになってきている。
 大体、魔王って今現在、どんな被害を出しているんだ?と、長老っぽい人に聞いてみたら、首を捻って、

「魔王はこの世界の大切な何かを奪って隠している、と言われている…」

 これはまだ良い。

「魔王は辺境の魔王城奥深くに隠遁していて、誰もその姿を見た者はいない…」

 これも未だ良い。

「花嫁にするべく、あちこちで美しい者をさらっている…」

……うん?

「伴侶となる者を求め、異次元から召喚したりして被害者である異界人が、多数苦情を申し立てている…」

 雲行きが怪しくなってきた。





「もっとこう、何処かの村で魔獣の被害が出てる、だとか 魔王軍が何処かの街に侵略して来てー、とか……そういうのは無いのか?」

 俺は、この世界に於ける魔王討伐の必要性に疑念を持ち、アスランにそう言ってみた。此奴なら何か知ってるかもと考えたからだ。

 アスランはこの世界に来て直ぐに剣が振るえ、最低レベルの魔法も扱えたらしい。勇者としてのスキルを十二分に備えて転移してきた、いわば正統派チート勇者、しかもプレイヤー(暫定)なのだからゲームの粗筋くらい知ってるだろうと踏んだのである。

 ゲーム内とはいえ命懸けになるからには、流石にそれくらいは知りたい。殺されたら死ぬんだろうか?死んだら元のリアル世界に戻れたりしないのだろうか。

 アスランは、う~ん と考えて、

「このゲームって、ぶっちゃけメインは魔王討伐じゃないかんね」

と言った。
 言ってしまった。
 言ってから、あ…。とアスランは口を押さえたが、俺は既に聞いてしまった。

 やっぱりな。やっぱりそうか。

 アスランが、そろり……と俺の顔を見る。絶対わざとだろお前、と思いながら平静を装ってしまう俺。

「…そうか。まあ、そうじゃないかと思ってはいた」

「え、マジ?どの辺で?」

 そう聞かれて、素直に答える。

「まず、女性という概念が無い」

「あ~、ま、そうだな。いねえな。そりゃ気づくよな」

「当たり前だろう。不自然過ぎるわ」

 代わりに少し中性的な男性か、しっかりした体格なのに何処か雌臭い男性。そして、男同士のカップルばかりが目立つ。

 そんな世界に来て、もの思わぬ者などいるだろうか。
 そんな奴は余程のボンクラだ。或いは日頃からそういう世界に慣れ親しんでいる者。

 俺はおおよその予想が的中した事に全く嬉しさを感じなかった。
それどころか、やはりこのゲームの目的とするところは…と色んな意味での危機感を新たにしている、なう。(古)

 俺、今悲愴感漂わせてないか?

 なのにそんな俺を見てニヤニヤし出すアスラン。これは絶対、俺が凹んでいるのを察しているな…。
何なら楽しんでいる。

「…この世界は、つまり…その、BLの世界、なんだろうか?」

 俺は遂に知りたくない核心に触れてしまった。もう絶対そうだとわかってるけど、聞きたくないけど!知らねば対策が立てられないのでな…。
 出来るだけの平静を装ってはいるが、心は血の涙を流している。

「そうだぜ」 

 アスランは事も無げに答え、物凄く良い笑顔をした。
やはりな。
 もうビンビンフラグが立っている。嫌な予感が確信に変わりつつある。

 友人の腐女子が手にしながら話して盛り上がっていた、男同士頬を染めながらくんずほぐれつ絡み合っている肌色多目の過激なパッケージが頭を掠めた。

 震える声で、更に俺は問いかけた。

「……因みに、攻略キャラとのゴールはどうなるんだ…?カップル成立迄か、結婚迄か」

 そんな生易しい事で終わる筈が無いのは、もうわかっていた。

「ゲームのゴール?」

 アスランの形の良い唇と低音の響く声が、俺を奈落の底に叩き落とす迄 後3秒。








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