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始まりは、キスから (※R18描写注意)

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 (準備って...)

 昼間見た、アナルセックスの為のHowToページを思い出す。腸内洗浄、潤滑剤や手指を使っての根気良い慣らし、拡張。一体何処まで。あの中の、一体何処までやったんだ?
 あの花瀬が俺とセックスしたいが為に...。
 
 (そんなの、何だか...興奮するじゃないかよ)

 男は単純だ。そんな事で、苦手だと思っていた同性が妙に健気に見えてしまうくらい、単純だ。
 しかも誘うように自分からキスを仕掛けて来るなんて。セックスは初めてだって言っていた。おそらくキスもそうなんだろう、というぎこちなさ。

 でも逆にその初心さが、男慣れした女の子ばかりを相手にして来た俺に火を付けた。

 合わせたまでは良かったが、閉じたままの唇。それを舌でつつき、あやすようにこじ開ける。花瀬の唇は易々と俺に侵入を許した。強ばっていた舌を舐めると、おずおずながらも素直に応えて来る。絡めた舌がぬるぬるとうねる。飲み込むタイミングがわからないのか、花瀬の唾液が溢れて来た。飴かタブレットでも舐めていたのか、何故か桃のような香りがするそれを、俺は啜って飲み込む。甘い。
 息継ぎの仕方を知らないのか、花瀬が息苦しそうに眉を寄せている。またしても初めて見る表情に、俺は更に興奮した。
 だが、最初からこのまま飛ばし過ぎてもバテさせてしまう。俺はそっと唇を離して、花瀬の耳元に口を寄せた。

「大丈夫?ちゃんと鼻で息しな」
「っ、はい...」

 頷いた花瀬は目を伏せ、俺はそれにつられるように彼の顔を見つめた。邪魔な前髪が左右に分かれ、日頃は見え辛い顔が露になっている。特に大きくも小さくもない奥二重の垂れ目。長くはないが密集した睫毛。高くはないけれど、形の良い鼻。幼さの残る頬。そして控え目なパーツの中、唯一目立つ、ふっくらとした赤い唇。女の子達のようにリップの香料の味のしないそれは、正直俺的にはとても美味かった。

(...なんだ、こうして見ると意外に可愛い...)
 
 何の興味も無かった後輩の筈なのに、キスに反応をされたくらいで一気に見方が変わるとか、我ながら節操が無いなと呆れる。でも実際、今の花瀬は可愛い。少なくとも、俺のペニスを完全にやる気にさせるくらいには。女の子とする時でさえ、服を脱がせて愛撫を始めて、声を聴き始めてからが勃起の始まりだというのに。現金なもんだ。

「...先輩」
 
 俺がまじまじと観察している視線を感じたのか、花瀬が顔を上げて俺を見た。訝しげな声に呼ばれ、俺は我に返る。

「やっぱり、気が乗りませんか?」

 その問いに俺は首を横に振り、花瀬の左手首を掴んで、自分の股間に誘導する。ジョグパンの生地を押し上げる熱を持った塊に、花瀬は一瞬肩を揺らして、それを凝視した。

「この通りだから安心しろ」
「...良かったです」

 感触を確かめるようにやわやわと柔らかく掴まれて、俺のペニスはどくんと反応する。

「...っ」
「あ、また大きく...」

 布越しに、もどかしい刺激。俺は堪らなくなって、ジョグパンを下着ごとずらした。ぶん、と腹につきそうに勢い良く跳ね上がったペニスを花瀬の手に握らせると、花瀬は驚いたように少し目を見開いて、それでも離したりはせず、素直にきゅっとペニスを握り込んだ。

「...大っきくて、熱くて、太い...。先輩、優しそうな顔して、すごいですね。俺のと、全然違う」

 花瀬は率直な感想を述べているだけなんだろうが、今の俺にはちょっとした言葉責めだ。極めつけに、

「頼んでおいてなんですけど、こんなの、僕に、挿入(はい)りますかね...」

 なんて言いながら、手を上下させるものだから、俺のペニスはこれ以上無いというほど張り詰めた。要するに完勃ちだ。海綿体に血液が集中して、竿も玉もパンパンになっている。
 このままでは非常に不味い事になると悟った俺は、一旦花瀬の手を止めさせた。それから深呼吸をして、自分を落ち着かせる。そして、反省した。
 俺だけさっさと臨戦態勢にされてしまってどうするんだ。花瀬はまだ、シャツすら脱いでないというのに。童貞じゃあるまいし、挿入前にみっともなく暴発する訳にはいかない。

(というか...コイツって、なんか...)

 言い訳がましいと言われそうだが、俺は断じて早漏などではない。さっきも言った通り、前戯を始めて女の子の感じる声で徐々に興奮していくというのが通常の流れなのだ。決して女の子を置き去りにして性急に事を進めたりもしないし、挿入してからフィニッシュまでの持続時間だってそれなり。早くもなければ、遅漏でもない。
 そんな自負を持つ俺をこんな状態にして、自分はケロッとしているなんて...実はコイツ、とんでもない手練れなのでは?
 などと考えて、すぐに思い直す。
 
(いや、それはないな)

 さっきのキスも、今しがたのぎこちない手つきも、演技ではなく本物だった。とすれば、童貞処女故の天然発言か。

「あの...」

 躊躇いがちに俺を呼んだ花瀬と目が合う。俺はそれには答えずに、彼のシャツのボタンに手をかけた。上から順にゆっくりと外していくと、白い胸が露わになって、何故かドキッとする。見慣れたふくよかで揉み応えのある乳房ではなく、脂肪どころか筋肉すら最小限の、薄く貧相な胸板。小さな乳首。色気もヘッタクレも無いそれに、どうしてこんなに心臓が高鳴るのか。その取ってつけたようなお粗末な突起に、血管の透けた青白い肌に、肉付きの悪い骨っぽい体に、頼りないほど細い首筋や棒切れのような腕に。
 どうして俺は、こんなに興奮しているんだろうか。
 

(射精(だ)したい...早く、コイツの中に出してみたい)

 全部剥いて、優しく触って、愛でて、溶かして、味わって、その体の中の一番奥に、最初の痕を刻み込む。
 
「先ぱ...あっ」

 何か言いかけた花瀬の言葉を遮るように、俺は両手で彼の薄い肩を押さえ、痛々しく浮き出た鎖骨にしゃぶりついた。

 


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