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予言された。
しおりを挟む『王城の南、小さな宿屋の息子が該当者ですね。』
「マジで?」
『マジでございます。』
「めっちゃ具体的だな…。」
『懇切丁寧をモットーにしておりますゆえ。』
予言の巫女(笑)は、国王であるアルグストに恭しく頭を下げながら答えた。
『因みにプラチナブロンドで、顔も体もそこそこ良いです。』
「マジか。」
『マジでございます。』
ふ~ん、とアルグストは顎に指を当てて考えた。
それならまあ、いっか。
「では、そやつが救国の英雄って事で良いんだな?」
『確実です。』
「よし、では…。」
アルグストは部屋の隅に控えていた騎士を呼び、言った。
「聞いていたか。」
「然と。」
「では直ちに第一騎士団で丁重にお迎えしてこい。丁重にだぞ、丁重に。
傷一つでもつけたら打首だから。」
「御意。」
騎士は礼をして足早に立ち去る。
それを見送ってからアルグストは、扉の表に控えていたもう侍従に申し付けた。
「姫を執務室へ呼べ。」
暫くして現れた、アルグストの一人娘である17歳のレナ姫は、少し不機嫌だった。
服はきちんとしているが、髪が少し乱れている。
「お父様、何?今カノジョと取り込み中だったんだけど。」
「カノジョってどのカノジョだ。この間一緒に出かけてた黒髪のメイドか。それとも騎士見習いの青い目の公女か。」
「いちいち覚えてないでくださらない?娘の性事情の相手を把握してる父親なんて薄気味悪いですことよ。」
「……。」
娘が2歳の頃から口で勝てた試しが無いアルグストは黙った。
「で、なんですの?こんな最中にお呼び出しなんですから、とっても大切な事なんですのよね?」
レナ姫は優雅に微笑んだが、額の青筋を確認したアルグストは肝がヒヤッと冷える思いだった。
娘って何処の娘もこんなに怖いの?
「で、な ん で す の ?」
長椅子にふんぞり返って膝の上に置いた手、その指先で忙しなくトントントントンするレナ姫
。
最早苛立ちを隠す気も無いようだ。
「…あの、この間言ってたさ、お前の結婚式の事、…なんだけど…。相手がわかったから…。」
「あ?…あ、あ~、アレですか。わかりましたわ。」
「…詳細、聞かない?」
アルグストはビクビクしながら一応聞くだけ聞いてみたが、レナ姫は鼻で嗤って言った。
「必要ございます?」
「…うん、まあ…レナが良いなら良いんだけど…。」
「では、結婚式の件は確かに承りましたわ。」
「ウン…ヨロシクネ…。」
ヒールを鳴らしながら去っていく娘を寂しげに見送るアルグストには王の威厳などは微塵も感じられない。
予言の巫女と侍従は、何とも言えない哀れみの眼差しでアルグストを眺めた。
「…なあ、お前のとこの娘って、どう?」
不意にアルグストに問いかけられ、侍従は えっ、と驚いたが、
「ウチの娘は未だ4つですので…。」
と、可愛い盛りの娘の笑顔を思い浮かべながら答えた。
「4つか、、、。」
羨ましい。
「年頃になっても、女遊びは程々にさせろよ…。」
「…はい。」
でも多分、侍従んちの娘にその助言は不要だろうな、と予言の巫女は思った。
そして、あの姫が男じゃなくて本当に良かったと思った。
男だったら女色の限りを尽くして子種を撒き散らし、王子と姫が量産される事になっただろう。
金がかかるし、お家騒動の火種にもなる。とんだ屑男だ。
政治はそれなりに上手くやりそうだが、人として不実だ。
(まあ、英雄様の結婚相手には、うってつけの後腐れない相手よね。)
予言の巫女はそう思いながら肩を竦めた。
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