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ともだちできた
しおりを挟む「もっとこう、派手で計算高い感じかと想像してたんだよね。」
アドリア殿下は柔らかい笑みを浮かべているが、俺としては
(観察されてるな~。)
と、居心地が悪いような気持ちになった。自分の部屋なのに…。
「左様で…。」
「それがこんなに色白の楚々としたあどけないお方だとは。」
「……ははっ…」
少し離れて後ろに立っている草鹿がうんうん頷いているのが窓に映って見えてるんだけど、草鹿、お前もか…。
「色にお強い殿下を閨の性技で籠絡した女狐みたいな男って話でしたが、、やっぱり噂はアテにならないものですね。」
「私はまだそういった経験はございません。」
口の端を引き攣らせながら少し語気を強めて言っておく。
いや俺の噂よ。
「うん、見るからに清らかなのがわかります。
世の噂を真に受けたつもりはありませんでしたが 不躾な真似を致しました事、申し訳ありませんでした。」
座ったまま頭を下げられてビクッとなる。
いや王族に頭下げさせるとか…!
やめて!!
「いえ、頭をお上げ下さい。」
「お許しいただけますか。」
「許すなどと…そのような。
真実を知っていただけたなら、私は、それで。」
これ、普通の、大体の人がするような当たり障り無い対応だと思いませんか?
「…雪殿は、なんと謙虚なお人柄なのでしょうか…。
名は体をあらわすといいますが、雪殿は身も心もまさしく雪のように清らかでいらっしゃいますね。」
「…あ、あはは…。恐縮です…。」
清らか。
確かに清らかではある。
童貞処女だもんな。
ごめんなさいね、カノジョの一人もいなくって。
(櫻子嬢は10歳になる前迄の幼馴染みでしかない…。)
「とても好ましく思います。」
アドリア殿下が少し首を傾げるようにすると、長くさらさらと流れる白金の髪も揺れる。
けぶるような淡い緑の瞳。
「友人になっていただけませんか。」
微笑みながら右手を差し出されて、俺のような凡百の徒が果たして断れるとお思いだろうか?
否。
「…ぜ、是非とも~…。」
差し出すしかない右手。
無事、握手するも何故か左手も添えられて俺の右手を包まれました。なんかこの感じ既視感あるわァ…。
「嬉しいです。このような可愛らしい方とお近付きになれて。」
「アハハ…ワタクシモデス…。」
殿下はまじまじと俺を見て、
「あ、何かに似てると思ったら、」
「…?」
「アレに似てますね、テン…。いや、テンより…ほら、和皇国にも似たようなのがいるんでしょう、ええと、」
「……テン…?」
「あ、そうそう、アレだ、
オコジョ。」
「オコジョ…」
「放っておけない感じですよね、雪殿って。」
「…オコジョ…。」
後ろで草鹿がうんうん頷いてる気配。
「オコジョ…」
小動物じゃん…。
そっか。
俺、オコジョなんか…。
15の男子が、そんなん言われて喜べる訳も無く、その夜殿下が自室に引き揚げられた後、俺はメンタルの疲弊により 早々に不貞寝した。
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