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主様、親交を深める。1
しおりを挟むその日の夕食は部屋でとった。
一応ね、VIP専用のレストランはあるんだそうだ。一応ね。
でも利用される事はあまりないらしい。殆どはそこにオーダーして作られた料理を部屋に運ばせて食べる。
まあそりゃそれが一番気楽だわ。
でもたま~に気分を変えたいとか、仲の良い数人で集まって食べたいとか、誰かの誕生日パーティーでもする?ってイベント時とか…確かに、あるよな。うん、ある。
…今度行ってみよっかな。
どんな店か気になる。
部屋で食べた夕食はかなり美味かった。
昼食は普通に学生用の食堂で良いのかと草鹿に聞いてみたら、一般学生用の食堂の奥の特別室か、寮に戻って食べても良いとか。
そうか、戻る前はVIPの方々と接点なんか無かったし、学食使ったのも入学当初だけだったから全く知らなかった。特別室の存在なんて。
最初は食堂の隅で1人でボソボソ食べてたけど、すぐに嫌がらせが酷くなったからわざわざ寮の自室に戻ってた。
その内、授業に出るのすら億劫になって、食事をとるのすら、面倒になって。
…それにしても、上流階級の中の格差もなかなかエグいもんだよなあ…。
歯も要らないような蕩けるような肉を味わいながらそんな事を思った。
「明日からの事でございますが…。」
草鹿がグラスに水を注いでくれながら口を開く。
「うん?」
「校舎の方にもお供させていただきます故。」
「えっ?」
え、何故に?
「一般生徒の方々とは校舎のある棟が違いますので、先ずはクラスにご案内させていただきます。入学式迄には講堂に移動致しまして、その後クラスに戻りましたら私めは近くの部屋に控えておりますので何時でもお呼び下さい。」
「うへえ…」
なんと…。
高貴な方々を見る事が無かったぞと思ってたら、専用棟にいたんかい。
「…え、でもなら草鹿、ずっと仕事で大変じゃない?」
「主様にご不便をおかけする訳には参りませんので。」
「…草鹿は何時休むの?」
心配になってきた。
「ある程度までの治癒魔法と回復魔法は心得ております。」
「…いいな~。」
俺もそういう日常的に便利に使える系のが良かった…。
いくらレアな魔法が使えても、一生に1回こっきりじゃあね…。
心底羨ましい。皆が普通に使える生活魔法が、特に。
風呂から出て、明日からの事を考えていたら 部屋の入口の呼び鈴が鳴った。
来客?此処に?
草鹿が出て、少し話していたがすぐ戻ってきた。
「主様、下の階の方がご挨拶をしたいと…。」
「下…?」
「エリシア公国のアドリア第2王子様でございます。主様の1学年上でいらっしゃいます。」
「…ええ~…。」
え、ヤダな…。面倒…。これ、生意気とか虐められフラグじゃない?
クソ殿下との事も、将来的には解消か破棄狙いだからこれ以上やんごとなき方々とは無駄に関わりたくないんだが。
そんな内心の危惧が伝わったのか、草鹿は俺を安心させるように微笑んだ。
「他の高貴な方々では、滅多になされない事ではございますが、アドリア様は穏やかでおおらかな方でございます故、お心安くお会いされてよろしいかと存じます。」
「優しい方なのかな?」
「御意。」
「…お通しして。」
そこ迄言われては会わない訳にはいかない…。草鹿、君の人を見る目に賭けるわ…。
きっと値踏みされるんだろうな~。
そりゃ国の唯一の皇子…いやもう皇太子か…、皇太子様の婚約者が男ってだけでアレだもんな。
興味津々だよな。
きっとそれらしい美少年とか想像されてるんだろうなあ~…。
俺は既にガッカリされた場合の雰囲気を受け止める覚悟でメンタルのアップを始めた。
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