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パーティー会場の悲劇…?
しおりを挟む…来ちゃった…。
眩しいシャンデリア、色とりどりのドレスに身を包みさんざめく貴婦人達。
あちこちで交わされる社交辞令。
そして、俺に突き刺さる数多の視線…。
皇太子殿下、ご入場~、って会場入りする時ってさ、一応格好だけでも取り繕う為に毎回最初だけは腕を絡めるんだけど、ものの数分ですぐ外すんだよね。
だから今日もそうしようと思ったんだが、何故かガッチリ組まれて解けなかった。
いやもうマジで何…?
「殿下、ちょっと…、」
「何だ。」
「いえ、あの…、そろそろ腕をですね…。」
「良いから傍にいろ。」
「……。」
トドメに横目で制されて…逃げられねえ~…。
仕方なく傍に留まる。
はー…何時ものように隅っこ行きたい…。
そうこうしている内に 今日に限って何時までも殿下と並んでいるからなのか、その取り巻き連がヒソヒソし出した。
これだから嫌なんだよなぁ。
ストレスで死にそう。
と、そこへ。
「ラディス殿下。」
取り巻きの中から1人、殿下に近寄ってくる、見覚えのある美少年が。
「羽次(はねつぐ)か。」
「本日はおめでとうございます。」
品良く挨拶とお辞儀をして、此方をちらり、と一瞥するのは、アホ殿下とベッドにいたあの三男坊である。
きっと前夜からずっと一緒にいたんだろうから、既に言ったんだろうに、二重に言うの大変だな~。
羽次君って言うのか。近くで見たら華奢で可愛いな~。
と思って見ていたら、俺の視線を意識してか、俺と反対側の殿下の腕に腕を絡ませた。
(うわ、こんなとこで大胆な事するなあ…勇気。)
それだけご寵愛が深い故の自信なんだろうな~、と思ってたら、信じられない事に殿下がソイツを乱暴に振りほどいた。
「えっ…?」
「はっ…?」
思わず三男坊と同時に小さく声が出た。
え、ソイツ、お気に入りなんじゃなかったっけ?
「控えよ、羽次。弁えろ。」
初めて聞く、怒気を含んだ低い声。
羽次とやらは一瞬で震え上がり、
「も、申し訳ございません!!」
と言って涙ぐみながら場から立ち去ってしまった。
たたた、と小走りに走っていったが、たまに此方をチラチラしていたので、おそらく追いかけてくれるのを期待していたのか…。なかなか根性ぶっといな。
殿下はと言えば、払い除けた後、羽次君には一瞥もくれず。
俺に、済まないな…、と よくわからない謝罪をしてくれていたが、俺としては彼とタッチ交代したかったので、もしかしてその事かと思う。
そして、その場面を見ていたその場にいた人々の間には、ピリッ…と緊張感が。
明らかに俺に対する視線の種類が変化し、殿下と俺の周囲と、取り巻いていた人々の間にも僅かに壁が出来たように感じる。
(…しまった…。)
お飾りだと扱われ、放置されているとばかり思われていた婚約者に、殿下が気遣いを見せた…。
と言っても、たかだか 公の場で、愛人より婚約者を優先しただけの事。
だが、たったこれだけの出来事で、世間に広がっていた今迄の俺に対する認識が覆りつつあるような気がする。
今迄に有り得なかった事だからだ。
それに、先に破棄を要請したせいか、結果としてこの夜、 公衆の面前で婚約破棄を叩き付けられる事はやはり無かった。
それだけでも死へ向かう運命は…回避、できたと見るべき、か?
その割りに、俺の中の危険信号は相変わらず点滅し続けたままなんだが…。
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