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クソに空気が読める訳無かった
しおりを挟む破棄。
死んでしまった遡行前、俺は一方的に、有責者である筈のクソ殿下から婚約破棄を言い渡された。
俺にはなんの落ち度も無かったにも関わらず、である。
そして時を戻りし、今日。
俺は逆に破棄を告げに…というか、やはり身分としてはあちらの方が上なので、現場を押さえた上で、破棄をお願いした形になる。
暗に、“貴様が原因だかんな。”と、御自身に非があっての事である事を御理解いただいた訳である。
解消、と言わなかったのは、お互い様にしてやる謂れが無いからだ。
あくまで破棄として、色々責任は取っていただきたいし 、払うもんは払っていただきたいのだ。
アンタと違って、最小限の目撃者しかいない場所で、俺から申し出た気遣いに感謝してくれよな…。
今となってはヤツが何を思って俺みたいなのを婚約者にして、何が気に入らなくて破棄なんか言い出したのかは知らんが、正直どうでもいい。
そこはもう問わないから、俺の5年間の苦痛に対する慰謝料だけは払ってくれ。たんまりとな。
あの後無言になってしまった兄から解放され、自室に戻った俺は スッキリ晴れやかな気分でベッドに仰向けにダイブした。
(あ~、やってやった…。)
体が良い具合いに羽毛布団に沈んで、気持ち良く目を閉じる。
乗り込んだ時のクソ皇子…いや皇太子の顔…ちょーウケたわ。
鳩が豆鉄砲食らったような顔、ってあーゆーのを言うんだろうな。ぷくく。
今思い出したけど、一緒に寝てたのってアレ、学園で同級生になった伯爵家の三男坊じゃね?
て事は、これから彼処に入学すると顔を会わせる訳か…。
……え、ちょっと待って?
アイツ、遡行前の婚約破棄の場面でもあの場にいなかった?
ガバ、と跳ね起き記憶を手繰る俺。
…いたわ。クソ殿下の少し後ろ当たりに。
な~んかやけに見覚えがあると思ってたけど、既に関係があったのか。
て事は、おそらく、俺とクソ殿下の破局は吝かでない組だよな…。
もしかすると、学園での嫌がらせの一端を担ってるかも知れない。偏見と憶測だけどな!!
モヤモヤが晴れて更に爽やかな気分になった俺。
ついつい顔が緩んでしまった。
そこへじいちゃん執事が、ノックと同時に入って来た。
いや返事を待て?ホントにプロか、アンタ…。
そう思いながら、振り返ると、何やら何時もとは違い、慌てた様子。
「坊っちゃま、お客様が…。」
「は?いや今日はもう無理なんだけど。つか誰?空気読まね~な~。」
前回、この時間に客とか来たっけ?
覚えが無いし眉を顰める俺。
ついつい言葉も態度も粗暴になってしまうな…いかんいかん。
執事は不機嫌になった俺に、ちょっと困ったように告げた。
「皇太子殿下がお見えに…。」
「…ま?」
いや、何しに来たの?
一瞬期待したけど、…書類はまだだよね…?
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