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10 南井 義希は根負けする (※微R18描写あり)
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自分のチョロさに溜息を吐きたくなる。
一度体を触れ合っただけの若い男に、こんなにも感情を掻き乱されるなんて。
自分がαを可愛いと思う日が来るなんて…。
少しだけ、と許した南井の体を、村上は直ぐに溶けて無くなってしまう繊細な砂糖菓子のように少しずつ少しずつ、丁寧に味わった。
年齢に見合わぬ淡い色の乳首を堪能して、緩く勃ち上がった性器を飴でも舐るようにしゃぶって、愛撫に耐えられなくなった南井の放った白濁を、ゆっくりと味わうように飲み下した。
村上は、射精の衝撃に跳ねる南井の腰を大きな両手で逃がさぬようにがっちりと抱いて、最後の一滴まで南井の精を啜ったのだ。
体を繋いだ訳でもないのに、只の相互オナニーなのに、気分が高揚して止まない。互いの匂いのせいも、きっとある。
あまりに色事から離れ過ぎていて舐めていた、と南井は反省した。αと言っても童貞君だから、こんな自分でもなんとかいなせると。甘かった。
村上の手は心地良過ぎたし、その唇は思ってもみなかった官能的な声で南井を高みへ上らせた。甘えて媚びを含む、キラキラした瞳が可愛く見えて、ちょっとだけ、のお願いを聞いてやらなければいけないような気にさせる。
やっぱり村上は危険な男だったと、南井は少し後悔した。
絶対に懐に入れまいと思っていたのに、すっかり情が移ってしまった。
歳下の部下は数いるが、部下はあくまで部下なりの可愛さであり、皆平等に扱うよう心掛けている。職場の人間関係なんてそんなものだ。甥や姪がいる訳でも無いし、親戚関係や友人関係も、ある程度の距離を取るか希薄にして来たから、プライベートでもあまり歳下に関わる事が無かった。
だから、こんなに何の制約も無く歳下の男を甘やかしたのは初めてだったのだ。
「好きです。運命だからだとか、それだけじゃなくて。全部が好きです。離れたくない。」
「…高揚感が残ってるからそう思うだけだよ。」
「そんな言葉で僕を突き放さないで下さい…。
もう離れたくないんです。」
「…歳が離れ過ぎてるよ…。」
「10歳位の歳の差カップルなら今どきザラに居ますよ。」
「…いや、えっと。違うよ、言ったじゃないか。私と君は18歳差。」
「問題無いです。南井さんは若く見えますけど、もっと年齢差があっても僕は構わないので。」
別に、子供を残す事にこだわりがある訳でもないので、と村上は言った。
何て強弁なんだ。全く動じてくれない、と南井はたじろいだ。そんな南井の気持ちを知ってか知らずか、村上は押せ押せで迫って来る。
「こんな風に情けをかけてくれておいて、忘れなきゃいけないなんて僕は嫌です。
只の知り合いや歳の離れた友人なんて我慢出来ない。」
南井の両手をベッドに縫い付けて、頬や耳や唇に口づけを降らせる村上に甘えるように縋られて、南井は本当に弱った。
「せめて、恋人にして下さい。」
「えぇ…」
恋人になるのに、せめて なんて事があるだろうか。
めちゃくちゃ越えて来たぞ、と南井は思ったが、村上の方も必死だったのだ。
南井には 何処か妙な危うさがあって、捕まえた時にしっかり繋ぎ止めておかないと、という気にさせられてしまう。只でさえαは、気持ちを寄せたΩに強烈な独占欲を持つ生き物だ。
うなじを噛めなくても、とにかく囲い込んでおきたくなっただけなのでは、と南井は思ったが、真剣過ぎる村上を無碍に出来ない。
「真剣に付き合って欲しいんです。ちょっとだけでも良いですから。」
「し、真剣に、ちょっとだけ…?」
そんな事を言われても、真剣な付き合いがちょっとだけで済む訳がない、と南井は思ったが、精悍に整った顔立ちの男の潤んだ瞳でのちょっとだけ攻撃はあまりにも威力があり過ぎた。
承諾を得る迄は意地でも南井に甘え倒す気でいそうな村上に、とうとう根負けした南井は、諦めたように頷いた。
「…わかった。」
村上は南井が自分に冷たく出来ない事を、多分わかっている。 良く言えば粘り強いが、悪く言えば諦めが悪そうだ。
歓喜の表情で頬擦りしてくる村上を南井が止められる筈も無く、只 厄介な子に捕まってしまった、と思うばかりだった。
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