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王様の下僕 ・春原 駿(すのはら しゅん)

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αの共喰い。



元々能力が高くて好戦的、精力的なαがマウントを取り合ったり実際能力を示す事で優劣や序列をつけたがるのはよくある事だ。

そして、Ωや女性がいない場所ではそれが通常よりもずっと多く起こりうる。

負けた者がより強い者のメスにされて組み敷かれて蹂躙される事なんて日常茶飯事。


αの集団なんて獣の群れと同じだ。






「春原、来い。」


面白くない事があると香原は必ず俺を呼び出して抱いた。
俺が誰か他の奴を抱いてる時ですら、容赦なく呼び出す。
電源切っとけば解決、なんて簡単な問題じゃない。
連絡が取れなかったり無視なんてしようものなら、その報復はその後のセックスに必ず影響して、俺は手酷く暴力的に抱かれる事になる。
誰だって痛いのも苦しいのも嫌だろ?

その代わり、直ぐに呼び出しに応じさえすれば、香原はこの上無く優しく丁寧に抱いてくれる。
勘違いしそうになるほどに、甘く囁きながらだ。

それは、成績でも腕力でも常に香原に今一歩及ばない俺が、本当にたまたま…少しだけ、香原の元恋人に似ていたから、というだけでその身代わりにされていただけの話なんだが。

香原が元恋人だった学園の姫に未練タラタラなんて事、香原本人と俺の他には誰も知らなかった筈だ。


香原は俺の中でイく時、必ず弓月の名を呼んだ。

別に俺は香原の事を好きでも何でもなくて、仕方なく体を明け渡してただけだったけれど、香原は大事に抱いてくれたし、最後に弓月を呼ぶその声がなんだか切なくて。
最初は、可哀想な奴…って思ってただけだった。
俺より強くて、他の連中より群を抜いて優秀な香原でも、思い通りにならない事があるのか、って。


傲慢で強引だけど、悪い奴ではない、と思いだしたのは、俺の香原に対する感情が徐々に変化していったからかもしれない。


最初は力関係でセックスを強要する嫌な奴 。
なのに、見た目を裏切り思いの外優しいセックスをする奴。
それから、背負ってるものがデカすぎて、恋愛もままならない可哀想な奴。

俺はαと言っても、母方にαがぼちぼちいたからαに生まれたって感じで、ウチ自体は一般家庭だから背負ってるもんなんて自分の将来くらいなもん。

学園にだって、費用が国持ちの上、学園出身者だと箔が付いて、進学就職にダントツ有利になるからってだけで入ってきただけ。

周りの生徒達とはスタートから全く違った。

だけど、中学3年時にαに覚醒した俺は、どうやら自分が思ってたよりだいぶ優秀だったみたいで、学園のカリキュラムでどんどん成績も伸びて、身体能力も格段に上がった。

2年に上がる頃には生徒会の役員に推薦されるくらいになっちゃって。

ウチの学園の執行部って、教師や生徒会役員の上級生達からの指名が主でさ。
人気如何とかそういう感じじゃない。
純粋に成績優秀者で、人望があれば尚良いって感じかな。
正直、面倒だなって思った。
でもそういうのに所属してると、将来的にプラスになるし学園のカースト上位の連中とのコネクションも築けるからって打算も働いて引き受けたんだよ。

そこで、香原に会った。

何時も俺の上にいる成績優秀者だから、名前はよく知ってはいたけど、クラスも離れていたし 実際顔を合わせるのは初めてだった。

間近で見た香原はすごいカリスマ性を感じたな。

生まれながらのαって、こういう奴らなのか、ってビリビリ来た。

でも、今にして思えば、その時香原は意図して俺にプレッシャーを与えたんだろうな。

その時視線の合った香原の目が、こう…蛇みたいだなって思ったんだ。

多分、香原はその時、俺に目をつけたんだろうなぁ。




お姫様に面差しだけはよく似た、俺にさ。




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